46話 偽物参上!・その3
「おや? どうしましたか、お嬢さん」
男性はメガネをかけていて、温和な表情を浮かべている。
でも……なんだろう?
どことなく嫌な感じがした。
「……レイン、あの人が偽物かな?」
「……捕まえる?」
「……もう少し様子を見よう」
偽物なのか、そうでないのか。
まだ判断がつかない。
俺達もいるし、よほどのことがない限り、ニーナに危険が及ぶとは考えられない。
ひとまず流れに身を任せよう。
「誰……?」
ニーナは警戒した様子で男に問いかけた。
そんな彼女の心をほぐすように、男は優しく笑う。
「なに。通りすがりの商人ですよ」
「……」
「こんなところで、かわいらしいお嬢さんが一人でいるのが気になりまして。どうかされたのですか?」
「家……わからない」
「おや、迷子ですか。そうですか、そうですか。なるほど」
男がニヤリと笑う。
なんか、ものすごく嫌な予感が……
「では、私が案内してさしあげましょう」
「あり……がとう」
「これくらい大したことはありません。おっと……ですが、お嬢さんは疲れていませんか? まずは、私の家で休憩しましょう」
「え?」
男はニーナに手を伸ばす。
なんだか、指がわきわきと動いていた。
「そう、私の家で楽しいことをしましょう……はぁ、はぁ。まさか、こんなにもかわいらしいお嬢さんに出会えるなんて……ふぅ、ふぁ」
「ひぅ!?」
「ふふふ、良いことをしましょうか?」
偽物じゃなくて、変態が釣れてしまった!?
「このっ……!」
慌てて飛び出そうとして、
「まてい!」
瞬間、鋭い声が響いた。
慌てて周囲に視線を走らせると、丘の上に人影が。
フード付きのローブを身に着けていて、それで顔を隠している。
ただ、男ということは、その体格ですぐにわかった。
顔が隠れているから断定はできないが、声の感じからして三十代くらいだろうか?
あふれる筋肉、という言葉がぴったりの、鍛え上げられた体。
丸太のような腕を前で組み、風にローブをたなびかせていた。
「いたいけな幼子に手を出そうとするとは、言語道断! その罪、その身に刻みこんでくれよう」
「な、何者ですか!?」
「貴様に名乗る名前はないっ!!!」
本命も釣れた!?
「とうっ!」
俺達が驚いて動けない間に、偽物は地面を蹴り跳躍した。
高い!?
魔法は使用していないはずなのに、十メートルくらい飛んでいる。
「くらえええええぇいっ!!!」
「ひぃ!?」
偽物の気迫にあっさりと負けた様子で、変態は逃げようとする。
しかし、遅い。
「サンダーローリング……」
男は器用に体を動かすと、空中で回転。
その威力を乗せて……
「スマーーーーーッシュ!!!」
偽物は轟音と共に落下。
鋭利な角度で、空中からの飛び蹴りを放つ。
「ぎゃあああああ!?」
着弾。
攻撃魔法が炸裂したかのような音と衝撃。
ただ、あえて直撃は避けたらしく、変態は無事だ。
もっとも、白目を剥いて失神しているから、治癒院送りは確実だろう。
「成敗!」
男は雄々しい声で言い放ち、ビシッと謎のポーズを決めた。
勝利のポーズ……?
偽物を釣ることができて、ついでに変態も退治できた。
最善の結果なのだけど……
「「「……」」」
突然すぎる展開に、思わず思考が麻痺して動くことができない。
いったい、なにが……?
「幼子よ、危ないところだったな」
「ふぁ……?」
「この通り、悪漢は退治した。もう大丈夫だ、安心するがよい」
「ありが……とう?」
ニーナもあっけにとられているらしく、いまいち反応が鈍い。
そんなニーナを見て、なにか勘違いしたらしく、偽物は心配そうな声を出す。
「むぅ……かわいそうに。悪漢に襲われ、恐怖に震えているか。しかし、安心するがいい。この私が街の平和を守ると約束しよう。怯える必要はないのだ」
あんたにも怯えているんじゃないか……?
「あなた……は?」
「私か? ……ふっ」
偽物はニヒルに笑う。
そして……
「私の名前は、レイン・シュラウド! 人呼んで、ホライズンの英雄だ!!!」
本物の前で堂々と騙ってくれるのだった。
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