43話 祝・アニメ化
「我なのだ!」
ルナがビシッとポーズを決めて、高らかに言う。
「そう……我こそは、みんなのアイドル。プリティーかわいい精霊族のルナちゃん! あ、サインはダメなのだ。代わりにスマイルなのだ」
パチリ、とウインクをするルナ。
なんだかんだでルナは美少女なので、その仕草はとてもよく似合っていた。
「今日は、我から報告があるのだ。我が登場する作品、『勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う』なのだが……なんと! なんとなんとなんとぉ!!!?」
たっぷりと間を込めて、
「テレビアニメ化が決定したのだ!!!」
ドヤ顔で言い放つルナだった。
しかし、少し離れたところでその話を聞いていたソラとカナデは、さほど驚いていない。
否。
まったく驚いていない。
「む? 姉と猫よ、なぜ驚いていない?」
「なぜ、と言われましても……」
「今更だよねー」
「二人共、知っていたのか!?」
「「もちろん」」
息ぴったりに頷くカナデとソラ。
それを見て、ルナはがくりと膝をつく。
「ばかな……知らなかったのは、我一人だけ……? もしかして、タニアやニーナも……?」
「知っていますね」
「がーん!?」
「ティナも知っているよ」
「がーん!!!?」
ルナは、強烈な魔法を受けたかのように仰け反り……
そのまま、ふらふらと倒れた。
ノックアウトだ。
「……」
まったく動かない。
指先をぴくりとも動かさない。
「る、ルナ……?」
「まさか、ショック死……?」
カナデとソラが震えた。
くしゃりと顔が歪む。
「そんな……決してかわいくない妹でしたが、まさか、秘密を作られたくらいで死んでしまうなんて……」
「それだけショックだったんだよね……私、悪いことをしちゃった」
「ああ、神様。どうかルナの魂が安らかに眠れますように」
「お供物、毎日持ってくるからね……大丈夫だからね」
二人は目を合わせて祈りを捧げて、
「ところで、今日のお昼ごはんはなんでしょうか?」
「にゃー、野菜をたっぷり使ったパスタみたいだよ」
「それは楽しみですね」
「うんうん! デザートもあるみたいだから、今からよだれが出ちゃいそう」
「こらこらこらぁ!!!」
がばっと勢いよくルナが起き上がり、呑気な会話をする二人に声を飛ばす。
手の平を裏に向けて、ビシッ! と叩く。
ティナ直伝の『ツッコミ』だ。
「我が死んでいるのだぞ!? それなのに、なんでそんな呑気な会話をするのだ!?」
「死んでいないではありませんか」
「にゃー、死んだフリ、っていうのは一目見てわかったし」
「ルナに付き合っていると、疲れますから。なので、放置が一番です」
「うぅ……姉がひどいのだ。妹のお茶目に付き合ってくれないのだ……チラッ」
「ウソ泣きも無駄ですよ」
「ちっ」
悪い顔をするルナであった。
しかし、次の瞬間、なにもかもケロッと忘れたように明るい笑顔を浮かべる。
「と、いうわけで……姉よ。カナデよ。アニメ化なのだ!」
「ええ、知っていますよ」
「知っているよ?」
「そうではなくて!」
ダンダンダンと、地団駄を踏む。
「この機会を逃してはならぬ! 盛大に宣伝して、たくさんの人に見てもらうのだ! そうするべきではないか!?」
「それは……」
「まあ……」
もっともな発言を受けて……
しかし、カナデとソラは怪訝そうな顔に。
ルナがまともなことを言うなんておかしい。
こいつ、本当にルナか?
偽物ではないか?
二人はそんな疑念を抱いていた。
「二人共、とんでもなく失礼なことを考えていないか?」
「「気の所為」」
「妹の我よりもシンクロしてる!? ものすごく怪しいのだ!?」
ダンダンダン、と再び地団駄を踏むルナ。
ただ、すぐに気持ちを切り替えた様子で、話を先へ進める。
「とにかく、もっとアニメについて宣伝しないといけないと思うのだ」
「それは……」
「まあ……」
「そこで、我は一計を案じたのだ。これを見るがよい!」
いつの間に用意したのか、ルナは、『アニメ宣伝計画』と書かれた小冊子を取り出して、カナデとソラに配る。
「よいか? まず、我は考えた」
「なにをですか?」
「広報にうってつけの媒体はなにか? ということなのだ。広報に適した媒体を使うことで、宣伝効果は何倍にも跳ね上がるだろう。逆に、適していない媒体を使ったら、大して宣伝にならず、下手をしたら赤字でマイナス効果なのだ」
「ルナにしてはまともなことを言っていますね」
「にゃー、広報に適した媒体って?」
「ふっふっふ」
ルナはドヤ顔で言い放つ。
「アニメなのだ!」
「「……」」
ソラとカナデが無表情になった。
「アニメは広くたくさんの人に愛されているからな。そして、ジャンルとの相性も良い。なればこそ、アニメを放送することで最大級の恩恵を得られるであろう!」
「「……」」
ソラとカナデは無言のままだ。
ついでにいうと、この子はマジか? というような顔をしている。
そんな二人の反応をポジティブに捉えたらしく、ルナはドヤ顔を続ける。
「ふふーん、我の素晴らしいアイディアに感銘を受けて、声も出ないようだな? まあ、それも仕方ない。我は天才だからな! 姉やカナデは凡人であるから、妬む必要はないぞ?」
「「……」」
今度は、ソラとカナデはイラッとした様子で眉をピクリと動かした。
「さあ、我を称えるがよい!」
「「……」」
ソラとカナデは互いを見て、こくりと頷いて……
「アホですね」
「ダメダメだねー」
それぞれ冷たい言葉を浴びせるのだった。
「む? なぜ我を称賛しない? 素晴らしいアイディアだろう?」
「あのですね……アニメの宣伝をするためにアニメを放送するというのは、矛盾していませんか?」
「順番がおかしいよね」
「そのようなことはないぞ? アニメの宣伝をするためにアニメを放送すれば、それはつまり、アニメの放送が宣伝になり、放送を先にすることで宣伝も兼ねて……あれ?」
途中で混乱したらしく、ルナがフリーズした。
「えっと……???」
こてん、と小首を傾げる。
そのまま考えて……
こてん、と反対側に小首を傾げる。
そんな動作を繰り返すルナは、壊れたおもちゃのようだった。
「どうやら、思考回路がショートしたみたいですね」
「自分で言って自分で混乱するなんて……ルナってすごいね」
「言わないでください……」
ソラは恥ずかしそうに顔を赤くした。
「それはともかく」
ソラは気持ちを切り替えた様子で、いつもの冷静な顔に戻った。
「テレビアニメ化、決まりました」
「この話が掲載される頃には放映されているかな? まだかな?」
「どうでしょう? 作者は事前に書き溜めておく習性があるので、計算しないとなんとも……」
「動物みたいだね」
「そのようなわけで……『勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う』、テレビアニメ」
「よろしくにゃ!」




