41話 とある少女は復讐を誓う
「……ぅ……」
ゆっくりと意識が浮上して、イリスは目を覚ました。
ひどく暗い。
なにも見えないくらい、視界が確保されていない。
ここはどこだろう?
イリスは体を起こそうとして……
「うあっ……!?」
ピシリと骨に響くような痛みが走り、たまらずに悲鳴をあげた。
体をよじり、うずくまろうとして……
ガシャンッ。
すぐに体の自由が奪われていることに気がついた。
「これは……」
両手足が鎖で拘束されていた。
体をほとんど動かすことができなくて、自由はゼロだ。
さらに見覚えのない首輪がついていた。
「くっ……まさか、能力を封じるための……!?」
召喚魔法を使おうとしても、うまく集中することができない。
単純に、身体能力で鎖を引きちぎろうとしても、うまく体を動かすことができない。
水の中にいるみたいで、思うように体を動かすことができず、能力を発揮することもできなかった。
それでも顔くらいは動かすことができたため、周囲を見る。
暗い部屋だ。
上の方からわずかに明かり差し込んでいるものの、部屋全体を照らすには乏しい。
冬のように冷たく、体が震えてしまう。
ぽたりぽたりと水の垂れる音がして、それがますます寒気を増幅させている。
そして、鉄格子。
「牢屋……?」
なぜ、自分はこんなところにいるのか?
囚人のように鎖に繋がれているのか?
イリスは曖昧になっていた記憶を掘り返して……
「……」
全てを思い出して、心がすぅっと冷え込んでいくのを感じた。
「そう、わたくし達は……」
人間に裏切られた。
守護者であろうとしたのに。
笑顔を共有できる隣人であろうとしたのに。
それなのに、人類は牙を剥いた。
己の保身だけを考えて、わかり合おうとせず、理解しようとせず……
結果、この有様だ。
「わたくし達は、いったい、なんのために……」
たくさんの仲間が死んだ。
リリーナも死んだ。
全ては人間を生かすためなのに……
「……許せない……」
イリスは奥歯を噛む。
自然と手に力が入る。
ガシャンと鎖が鳴り、お前は動くことなんてできないぞ、と告げてくる。
それでも、イリスは動かずにはいられない。
怨嗟をこぼさずにはいられない。
仲間が殺された。
オフィーリアも……たぶん、死んだ。
生きていたとしても、あの怪我だ。
先は……絶望的だろう。
「許せない……!」
悲しみが怒りに変わる。
嘆きが力に変わる。
絶望が憎悪に変わる。
「今は囚われの身……そして、わたくし自身も大した力はありません……しかし」
いつか、必ず。
その決意を胸に宿して、イリスは小さくつぶやく。
「……殺す……」
――――――――――
これは、とある少女の物語。
全てを奪われて、全てを奪い返すことを決意した物語。
その少女の名前は……イリス。
彼女の長い長い戦いは、ここから始まる。
諸事情で一回、更新を休みます。
次の更新は12日(月)になります。




