4話 野球しようぜ!・その4
カナデはそのまま三振。
第二打者はルナ。
しかし、ソラの魔球の前に手も足も出なくて、三振。
バッター、タニアへ。
「最初はちょっと驚いたけど、要するにものすごいカーブとかフォークを組み合わせたようなもの、って思えばいいんでしょ? ならいけるわ」
タニアは自信たっぷりだ。
最初の動揺はもうない。
確かに、タニアならソラの魔球に対応できるかもしれない。
それだけの器用さを持ち合わせている。
でも、問題ない。
守備の要がソラの魔球と思ってもらっては困る。
むしろ、ソラは前座にすぎない。
「いきますよ、タニア」
「きなさい! その球、丘の向こうまで飛ばしてあげるわ」
ソラはボールを握る。
タニアはバットを握る。
二人の視線が交差して、バチバチと火花が散った……ような気がした。
「えいっ」
ソラがボールを投げた。
ふわーっとした球だけど、途中からボールに意思が宿ったかのように、上下左右に動き回る。
それは一度見た。
そんな感じで、タニアは慌てず、じっと見つめて軌道を見極める。
そして……
「そこよ!」
「っ!?」
フルスイング。
カーンと、ボールが高く飛んだ。
「魔法でコントロールしているからこそ、その軌道に術者の癖が出るものよ。それを見極めれば、大した球じゃないわね」
「くっ……やりますね」
己の弱点を自覚していたのだろう。
ソラは苦い顔をして……
しかし、すぐに笑みを浮かべる。
「ですが、なにも問題はありません」
「なんですって?」
タニアは怪訝そうな顔をした。
だって、そうだろう。
ボールは今もなお上昇を続けている。
間違いなくホームランコースだ。
どうしようもないはずなのだけど……
「よい……しょ」
ニーナが動いた。
自分自身を転移させて、遥か上空へ。
そして、バッチリのタイミングで飛んできたボールをキャッチした。
「なぁ!?」
さすがにそれは予想していない、という感じでタニアが絶句した。
そう……真の守りの要は、ニーナだ。
転移を使うことで、普通なら取れないような球をキャッチすることができる。
移動も簡単。
やはり転移をすればいい。
一人で全方位。
さらに全空間までカバーするという、反則級のディフェンダーだ。
彼女がいる限り、赤チームの失点はありえない。
「あんなのアリ!?」
「アリやでー」
「反則の中の反則じゃないの!?」
「違うでー」
ニーナの守備がやばすぎることを察したタニアは猛抗議。
しかし、ティナは涼しい顔をして、それらを全て受け流す。
事前に、能力の使用は許可と名言しているし……
あと、ティナはニーナに甘いからな。
タニアの抗議が受け入れられることはないだろう。
ちょっと申しわけない気もするが……
こうでもしないと赤チームが勝つことは不可能だ。
勝利のため、今は心を鬼にしよう。
「ふっふっふ」
ルナが不敵な顔をしてバッターボックスに立つ。
「我が姉の魔球も、ニーナの鉄壁のディフェンスも、我が打ち破ってみせよう!」
「おぉ!」
底知れない自信を見せるルナに、タニアは顔を輝かせた。
この子ならやってくれるのでは?
そんな期待を込めて、姉妹対決を見守る。
その結果は……
「スリーストライク、バッターアウト!」
ルナの完敗だった。
しかも、バットをまともに振っていない。
構えたまま微動だにせず、ただただ、ボールを見送っていた。
「ちょっとルナ、どういうことよ!?」
「ふっ」
ルナはニヒルに笑い、言う。
「非力な我がバットなんて振れるわけがないだろう!」
「堂々と言うな!?」
「我に打順が回ってきたところで、この勝負、終わりなのだ!」
「だから堂々と言うな!!!」
タニアの渾身のツッコミが青い空に響き渡るのだった。
読んでいただき、ありがとうございます!
<読者の皆様へのお願い>
「面白い!」「続きが気になる!」「更新をがんばってほしい!」
などなど思って頂けたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!
評価はページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップすると付けることができます。
ポイントを頂けるとやる気が湧いて、長く続けようとがんばれるのです……!
これからも楽しい物語を書いていきたいと思います、よろしくお願いいたします!