表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/237

39話 とある少女の思い出・その8

「オフィーリア姉さま!?」


 背に矢を受けたオフィーリアは、足を止めて、その場に膝をついてしまう。


 オフィーリアは、いくらか実戦経験はあったものの……

 大きな怪我をしたことはない。

 そんなことになる前に敵を倒してしまっていた。


 故に、痛みに慣れていない。

 我慢することができない。


「くっ、うぅううう……!」


 いつも無表情なオフィーリアは、苦痛に顔を歪めていた。


 痛い。

 痛い。

 痛い。


 涙がこぼれそうだ。

 助けて、と叫んでしまいたくなる。


 それでも……


「しっかりしてください、オフィーリア姉さま!」


 すでにぽろぽろと涙をこぼしている妹を見て、冷静になることができた。


 しっかりしろ。

 自分は姉だ。

 なにがあろうと、大事な妹を守らなければならない。


 そう自分を叱咤して、オフィーリアは背中に手を回す。

 突き刺さる矢を掴み……


「っ……!!!」


 返しを気にすることなく、無理矢理引き抜いた。


 肉が裂けて血が流れる。

 激痛が走り、悲鳴をあげそうになってしまうが、なんとか我慢した。


「毒は……ない、ようですね。これなら……」

「オフィーリア姉さま!」


 イリスはふらつくオフィーリアを慌てて支えた。


「あぁ、血がこんなに……ど、どういたしましょう? わたくし、治癒魔法は……」

「イリス」

「家に帰ればポーションが……で、ですが、このような状況では……」

「イリス」

「もう、なりふり構わず、他所の家でも……」

「イリス」

「……あ……」


 何度が呼びかけられて、イリスは少しだけ落ち着いた。

 涙目なのは変わらないけど、オフィーリアの声に耳を傾けることができる。


「いいですか、よく聞いてください」

「は、はい……」

「私は、ここで人間達を食い止めます。その間に、イリスは逃げてください」

「そんな……!?」

「この傷では、足を引っ張ってしまいます。このままだと、なにもできず、人間達に捕まってしまうでしょう。そうなるよりは、あなたをどうにかして逃した方がいいです」

「オフィーリア姉さまを置いて逃げるなんて、そのようなこと、できるわけがありません!!!」


 イリスは泣きながらオフィーリアを睨みつけた。


 こんな時でも、冷静であろうとして……

 姉であろうとするオフィーリアのことが、ひどく腹立たしい。


 そんなことを考えるイリスは、強く強く声を発する。


「オフィーリア姉さまがわたくしのことを考えてくださっているのは、よくわかります」

「なら……」

「ですが、わたくしもまた、オフィーリア姉さまのことを考えているのを忘れないでください!」

「……」


 思わぬ言葉だったらしく、オフィーリアは驚きに目を大きくした。


 妹を想う姉。

 妹が助かるためなら、なんでもするつもりではあったが……

 それでは妹の気持ちを無視することになる。

 そんなことはやめてほしいと、イリスは訴えていた。


 オフィーリアは、小さく笑みを浮かべる。


「あなたは、本当に優しい子ですね」

「オフィーリア姉さま……?」

「イリスの気持ちは、よくわかりました」

「では……!」

「……しかし」


 オフィーリアは、こっそりと練り上げておいた魔力を解き放つ。


「姉は、恨まれたとしても嫌われたとしても、妹のためになにかしてあげたいと思うものなのですよ」

「えっ」


 オフィーリアは魔力を解放して、召喚に使うゲートを開いた。

 そこにイリスを強引に押しやる。


「そのまま逃げてください」

「そんな……!?」

「大好きですよ、イリス」


 オフィーリアは優しく微笑み……

 そして、イリスは転移ゲートの中に消えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
[気になる点] この後にラインハルトがオフィーリアを助けてくれたのかな?
[一言] ”妹を思うオフィーリア”と”姉を思うイリス”お互いを思うシーンに泣きそうになりました。 襲撃してきた人間たちに一言。 「お前らの目は節穴か!!この二人の姿を見て何とも思わないのか。それでも…
[一言] なあ人間ども……また過ちを繰り返したらひとり残らず蹂躙してやる それはそれとして、天族を蹂躙したクズ共を一人残さず挽肉にしてやろう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ