35話 とある少女の思い出・その4
「リリーナお姉さま!」
花畑の前に行くと、すでにリリーナの姿があった。
自分から呼び出しておいて待たせてしまうなんて。
イリスは焦り、慌てて駆けていく。
「ぴゃあ!?」
焦っているせいで、転んでしまいそうになるけど……
「おっと」
リリーナがすぐに対応してくれて、イリスを抱きとめた。
「イリスちゃん、大丈夫?」
「あ、ありがとうございます……」
大好きな姉に抱きしめられてしまった。
その事実に、イリスが顔を赤くする。
「なにか用事がある、って聞いているけど……どうしたのかしら?」
「あ、はい。忙しい中、お呼び出ししてしまい申しわけありません」
魔族との戦争は刻一刻と近づいていて……
明日、開戦となる予定だ。
作戦を練るなど、リリーナはとても忙しいだろう。
そんな中、イリスは無理を言って時間を作ってもらった。
ごめんなさい。
そして、ありがとう。
謝罪と感謝を心の中でつぶやきつつ、ポケットからとあるものを取り出した。
「こ、これをどうぞ!」
「これは……お守り?」
イリスが取り出したのは、宝石があしらわれた指輪だった。
リリーナがお守りと思ったのは、その宝石から魔力を感じたからだ。
「は、はい。天族の加護を込めた指輪で……物理耐性に魔力耐性。それと、状態異常耐性もあって……そ、その……きっと、リリーナお姉さまのお役に立つはずですわ!」
「……イリスちゃん……」
リリーナにとって、指輪の効果はどうでもいい。
それよりも、自分を姉と慕う子が、がんばって指輪を作ってくれたことの方が嬉しい。
「受け取っていただけますか……?」
「ええ、もちろんよ」
リリーナはにっこりと笑い、指輪を受け取る。
そして、さっそく人差し指につけてみた。
「どうかしら? 似合う?」
「はい! とても似合いますわ!」
「ふふ。ありがとう、イリスちゃん」
リリーナは嬉しそうに言って……
それから、イリスを抱きしめた。
「リリーナお姉さま……?」
「本当にうれしいわ。ここまでしてくれるなんて……改めて、ありがとう」
「いいえ。リリーナお姉さまに喜んでいただけて、わたくしも、とても嬉しいですわ」
イリスとリリーナは、にっこりと笑みを交わす。
二人は、本当の姉妹……
いや、それ以上に強い絆で結ばれているように見えた。
「リリーナさま!」
ふと、彼女を呼ぶ声が響いた。
リリーナの従者が呼んでいる。
「……ごめんね、もう行かないと」
「はい……今日は、時間を作っていただき、ありがとうございました」
「ううん、これくらいなんでもないわ。それと……」
「それと?」
「明日、出発前に時間をもらってもいいかしら? 今度は、イリスちゃんの時間をもらいたいわ」
「は、はい、喜んで!」
「ふふ、約束ね?」
――――――――――
翌日。
イリスは、戦地へ赴くリリーナを見送る。
本当は、行かないでほしいと言いたかった。
側にいてほしいと言いたかった。
でも、約束をしたから。
それに、リリーナを困らせたくない。
イリスはリリーナを見送る。
涙を我慢することはできなかったけど、でも、わがままで困らせることはなくて……
なんとか見送ることができた。
――――――――――
「リリーナお姉さま……どうか、ご無事で」
イリスは自分の部屋で祈りを捧げる。
大好きな姉の無事を祈る。
再び会えることを願う。
そうして、毎日、熱心に祈り……
しかし、それは裏切られることになった。
たくさんの仲間の死と共に、勇者が自爆をしたという知らせが届くのだった。
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