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28話 ステラの悩み・その5

  昼。

 レインとステラはホライズンで人気のレストランに足を運んだ。


 人気店で、普段は行列必至なのだけど……

 今日は運良く並ぶことなく、スムーズに入店することができた。


 窓際の席に座り、メニューを見て、二人であれこれと話をする。


「ぐぬぬぬ……」


 店の外からこっそりと後をつけていたタニアは、その様子を見て苦い顔をした。


 レインがステラとデートをしている。

 しかも、とても楽しそうだ。


 許せない。

 よくわからないけど……

 なんかもう許せない。


 ふつふつとマグマのような感情がこみ上げてきた。


「恋人のフリ……それを達成するためのデート……ステラのお願い、っていうことはわかるんだけど、もしかしたら、このまま二人がくっついちゃう可能性もあるのよね」


 最初は偽物の関係。

 でも、偽物を続けるうちにやがて本物へ……


 なんていうのは、物語でよく見かける展開だ。

 それがレインとステラにも適用されるかもしれない。


「ダメ! それは絶対にダメ!」


 二人が恋人になったところを思い浮かべたタニアは、その妄想を振り払うように、ぶんぶんと勢いよく頭を振る。


「なんでそう思うのかよくわからないけど……ダメ、絶対にダメ。そんなこと、認められないわ」


 くくく……と、タニアは暗い表情に。


 このままだとレインがステラに取られてしまうかもしれない。

 絶対にそうなるとは言えないが、しかし、可能性はゼロではない。


 そんな展開、断じて認められない。

 見過ごすことはできない。


 そうならないように、カナデやソラやルナが妨害をしかけたものの、全て失敗した。

 今度はタニアの番だ。


 どうするべきか?


「……」


 タニアは考える。


 考えて。

 考えて。

 考えて。


「ふ、ふふふ……そうよ、小細工なんてしないで、真正面から挑むべきなのよ。つまり……」


 タニアの口から炎がちろりと漏れる。


「あたしのブレスを叩き込む!」


 タニアは混乱していた。


 なぜそんな答えに至ったのか?

 ここに他のメンバーがいたら、さすがに止めただろうけど、今は彼女一人だ。


 止めることはできない。

 止められない。


 混乱したタニアは、街中でブレスを使うという暴挙に……


「ていっ」

「いた!?」


 ごんっ! という鈍い音が響いた。

 突然、頭にげんこつを落とされたタニアは涙目に。


「な、なによ……って、ティナ!?」


 慌てて振り返ると、そこには人形バージョンのティナが。

 隕石のように空から落ちてきて、タニアに一撃を与えたようだ。


「あのなー……なにしてんの?」

「そ、それは……」


 ティナの一撃で目が覚めたらしく、タニアはバツが悪そうな顔に。


「ステラに嫉妬するのはしゃーないとしても、ブレスはあかんで。トースト作る感覚でぽんぽん撃たれたらたまらんわ」

「し、嫉妬なんてしてないし!」

「そうなん?」

「そうよ!」

「……ふっ」


 意地を張るタニアを見て、ティナは鼻で笑う。


「素直に認められないなんて、タニアもまだまだ子供やなー」

「本当のことを言っているだけよ」

「なら、嫉妬はしてないん?」

「してないわ」

「本当に?」

「本当よ!」

「本当の本当に?」

「本当の本当よ!」

「本当の本当の本当に?」

「本当の……って、しつこいわね! あたしは、レインのことなんてまったく、これっぽっちも、欠片も気にしてないんだから!!!」

「……って、いうことらしいで、レインの旦那」

「え?」


 ティナの視線がタニアの後ろへ向いた。

 そちらを慌てて追いかけると……


「えっと……」

「タニア? 奇遇だな」


 レインとステラがいた。


 タニアの顔がさーっと青くなって……

 赤くなって、白くなって、ついでに百面相を作る。


「あ……あ……」

「よくわからないけど、俺……」

「な、な……なんでもないんだからーーーーーっ!!!」


 タニアは涙目になって逃げ出した。


 レインとステラは困惑する。


「ティナ、これは……?」

「あー……細かい説明は後でするから、レインの旦那はデートを楽しみ」

「そう……か? なら、まあ」

「いっといでー」


 戸惑いつつ、デートを再開するレインとステラ。

 そんな二人を見送り、ティナはため息をこぼす。


「おしおきとはいえ、ちとやりすぎたかな? 後でレインの旦那にフォローしてもらわんとなー」


 「それにしても」と間を挟み、ティナは苦笑する。


「みんな、ほんまに素直やないなー……ウチを含めて」

読んでいただき、ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
上手に妬けました!!(目を逸らしながら)
[良い点] 表彰状、ティナ殿、貴方は神聖な店を暴走しそうになった竜から守りました。よってここに称します。 危うく、大惨事になるところだったな・・。
[良い点] レイン派騎士達「止めろ! あの脳筋放火魔ドラゴンを止めろぉおお!!!」 嫉妬騎士達「止めろ! 焼く事だけで脳が埋め尽くされてるあのドラゴンを止めろぉおお!!」 騎士一同「「ティナ様あり…
2022/07/23 10:25 退会済み
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