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24話 ステラの悩み・その1

「ふぅ」


 ホライズン騎士団支部隊長ステラ・エンプレイス。

 新生騎士団の隊長に抜擢されて、日々、街の治安維持に努めている。


 ただ……


 今は机に向かい、書類仕事をこなしていた。


 剣を振るだけが騎士の仕事じゃない。

 民の声を聴くため、様々な書類に目を通して、あるいは作成することも必要なのだ。


 とはいえ、ステラは体を動かす方が気が楽と考えるタイプだ。

 長時間、書類仕事をしていたこともあり、疲労が溜まって一度ペンから手を離す。


「おつかれさまです」

「あぁ……ありがとう」


 ちょうど良いタイミングで部下がお茶を淹れてくれた。

 ステラはお礼を言い、一口飲む。


「うまいな」

「実はそのお茶、滋養強壮の効果があるんです」

「そうなのか?」

「最近の隊長、おつかれのようなので……」

「ありがとう。それと、すまないな。心配をかけてしまったみたいだ」

「いえ、そんな! ですが……やっぱり心配です。少し休まれては?」

「ああ、いや。仕事は問題ない。書類仕事は慣れないが、慣れないだけで辛いわけじゃない。仕事は大した問題ではないんだ」

「仕事は……?」


 含みのある言い方に、部下は小首を傾げた。


 ステラは迷う。

 今、抱えている悩みを話してしまうか?


 しかし、自分は今は隊長だ。

 隊長としての威厳を示さなければいけない。

 悩みを打ち明けることで、失墜したりしないだろうか?


「……いや」


 苦楽を共にしてこそ本当の仲間といえるだろう。

 とある人物達を思い浮かべたステラは、そっと口を開く。


「実は……」




――――――――――




「……というわけで、協力してくれないだろうか?」


 とある日。

 ステラが我が家にやってきて、悩みを抱えていることを相談された。


 その解決に協力してほしいと言われたのだけど……


「えっと……肝心の悩み事を話してくれないことには、なんとも言えないんだが」

「ああ、そうだな。いやしかし……」

「話しづらいことなのか?」

「……うむ」


 深刻な顔をしてステラが頷いた。

 彼女をこれほどまでに悩ませるなんて、いったいなにが……?

 自然とこちらの気も引き締まる。


「実は……だな」

「ああ」

「私の両親が……」

「両親が……?」

「……私に見合いを勧めてくるんだ」

「そうか、見合いを……は?」


 突然、話が斜め上に飛んだ。


「ほら、隊長になっただろう? そのことで両親は喜び、立場にふさわしい相手を見つけなければいけない、と妙に張り切ってしまってな……」

「はぁ……」

「毎日のように見合いを勧めてくるんだ。この人はどうだ? この人は良さそうだぞ……」

「はぁ……」

「む。レイン、真面目に聞いているのか?」

「聞いているよ」


 でも、「はぁ」しか返せないのは仕方ないと思う。

 やたらと真剣な様子だったのに、見合いを勧められて困っているなんて……そんな反応をしても仕方ないだろう?


「両親が私のことを想ってくれているのはわかるが、しかし、私はまだ結婚するつもりはない。それに、見合いをするつもりもない」

「まあ、気持ちはわかるよ」

「ただ、両親がしつこくてな……何度も手紙をもらい、他に想い人がいるのか? などと聞かれ、ついついその通りだ、と答えてしまい……」

「……まさか」


 なんとなくこの後の展開が読めた。


「すまない! レイン、私の恋人のフリをしてくれないか!?」

「「「なんだってーっ!!!?」」」


 なぜか、俺よりもカナデ達みんなの方が驚いていた。


 というか、いつの間に……?

 リビングにはいなかったはずだけど、どこかでこっそり話を聞いていたのかな?


「無茶なお願いだとわかっている。しかし、そうでもしないと両親は納得してくれそうになくて……それと、他に頼れる男性も知らず……」


 ステラは本当に申しわけなさそうな顔をしていた。


 頼み事の内容はアレだけど……

 ステラはとても悩んでいるのだろう。

 真面目な人だから、妙な方向に思い詰めて、こんな結論に至ったのだろう。


「レインがステラの恋人に……」

「むぅ、なんか釈然としないわね……」

「事件なのだ! 事件なのだ!」

「そうなると、ステラもソラのご主人様に……?」

「こい……びと?」


 だから、みんなの方が驚いているのはどうしてなんだ?


「恋人のフリっていうけど、それはずっと?」

「いや、そんなことはない。今度、私の両親がやってくるから、その一日にフリをしてくれるだけでいいんだ」

「一日か……」


 それならできないことはないかな?


 ただ……


「正直なところを言うと、俺に恋人のフリが務まるかどうか、ちょっとわからないんだけど」


 恋人がいたことはない。

 それどころか、恋愛経験もなしだ。

 そんな男が恋人のフリなんてできるだろうか?


「その点は心配ないだろう。レインは普段通りにしてくれれば、それで十分だ」

「うん? 普段通りでいいのか?」

「ああ。それだけで、立派な恋人に見えるだろう」

「にゃー……たらしだからね」

「たらしよね」


 なにやら不名誉な称号が後ろから。


「どうだろうか……? 頼まれてはくれないか?」

「……わかった」


 他ならぬステラの頼みだ。

 断ることはできない。


「ちゃんとできるかどうか、そこはちょっと不安だけど……引き受けるよ」

「ありがとう、レイン!」


 こうして、俺は妙な依頼を引き受けることになったのだけど……


「「「レインと恋人……ユルセン」」」


 一波乱起きそうな予感がした。

読んでいただき、ありがとうございます!


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[良い点] このまま、ただ過ごすだけ・・というわけにはいかないんだろうなあ・・。 どうなるんでしょうか・・。幾ばくか不安なり。
[一言] なんてこった、恋愛勝負、まさかステラが一番リードしていたなんて(ぇ
2022/07/09 18:37 退会済み
管理
[気になる点] 騎士であるステラ・エンプレイスの人となりは大体は分かりますが、一人の女性としてのステラ・エンプレイスがどのような女性なのか気になるお話です。 もしかしたら、以外な一面が見られるかもしれ…
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