236話 お祭り・その2
「お祭りといえば……」
「かき氷なのだ!」
ソラとルナが元気よく言う。
ニーナが飴に夢中になっているように。
二人はかき氷に心を奪われたらしい。
「「レイン!!」」
「はいはい、わかっているよ」
苦笑しつつ財布を取り出した。
「二人は何味がいいんだ?」
「んー……我はレモンなのだ!」
「ソラはいちごでお願いします」
「……というわけで、お願いします」
「あいよ、レモンといちごだな!」
屋台の店主は威勢のいい声で答えて、ささっとかき氷を作る。
氷を削りシロップをかける。
そんな単純なかき氷と思いきや、一味違う。
シロップをかけるところまでは同じだけど、最後に、特製のソースをかけていた。
果肉を削ったものらしく、香りが段違い。
少量ではあるものの、それでも十分。
風味が大きくプラスされて、離れている俺のところまで届いてくるほど。
お祭りのかき氷にしては、ちょっと高い金額だったのだけど……
これなら納得だ。
お手軽。
でも、そこそこ本格的な味を楽しむことができる。
人気店らしく、俺達の後ろにすぐ列ができていく。
邪魔にならないように離れて、手頃なベンチに並んで座った。
「おぉ……屋台のわりには、けっこううまそうなのだ」
「そうですね。一手間加えられていて、それが普通の屋台とは違うものになっているかと」
「では、さっそく……」
ソラとルナは期待にキラキラと目を輝かせつつ、かき氷をそれぞれ一口。
「「んんんぅーーー♪」」
満面の笑み。
気に入ったみたいだ。
「これはうまいのだ! 想像以上なのだ!」
「屋台のものとは思えませんね。素晴らしいです!」
二人は興奮した様子で、ガツガツとかき氷を食べていく。
普段、おとなしいソラも、今はとてもアグレッシブだ。
ただ、そんなに勢いよく食べると……
「「ッ……!?!?!?」」
食べる手が止まり、顔を歪めてしまう。
急に一気に食べたから、キーンとなったのだろう。
ついつい苦笑してしまう。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫なのだ……」
「ソラとしたことが、つい夢中に……」
「すぐに溶けることはないから、ゆっくり食べような。なんなら、おかわりしてもいいし」
「そうするのだ……」
「あ、ですが……」
ふと、ソラが思いついたようにこちらを見た。
そして……
「そ、その……どうぞ」
かき氷を木のスプーンですくい、こちらの口元に差し出してきた。
「え?」
「その……レインに買ってもらったものなので、レインも食べる権利があるかと」
「姉よ、ナイスなのだ。では、我も」
ルナもかき氷を差し出してきた。
「えっと……」
「「はい、あーん」」
「いや、俺は……」
「「あーん」」
なんだろう?
二人は笑顔なのだけど、有無を言わせない迫力があるような?
ここで断れば、なんだか大変なことになるような気がした。
「……あむ」
まあいいか。
そんな感じで、素直に二人のかき氷をお裾分けしてもらった。
レモンといちご。
それぞれ果肉のソースがかかっていて、とても美味しい。
本当、屋台のものとは思えないクオリティだ。
「どうなのだ?」
「美味しいですか?」
「ああ、美味しいよ。ありがとう、ソラ、ルナ」
「ふふん、どういたしましてなのだ!」
「レインと美味しいかき氷を共有できて、ソラは嬉しいです」
二人は嬉しそうな笑顔を浮かべた。
喜んでいるみたいだけど、お礼を言うのはこちらなんだけどな。
……まあいいか。
今日はお祭り。
細かいことは気にせず、全力で楽しもう。
「レイン、レイン。我はおかわりが欲しいぞ!」
「その……ソラもいいですか?」
「もちろん。今度は、俺も買おうかな」
「我は、いちごミルクなのだ!」
「では、ソラはメロンで」
「俺は……あんこ、っていうのにしようかな?」
それぞれかき氷を注文して。
美味しさに笑顔になって、キーンと頭が痛くなって、また笑顔になって。
夏だな。
祭りだな。
そんなことを思いつつ、楽しい時間が過ぎていった。




