235話 お祭り・その1
「夏といえば!」
「お祭りなのだ!」
カナデとルナは、とてもテンションが高い。
子供のように目をキラキラと輝かせて、ズラッと並ぶ露店を見ている。
その後ろで、タニア達はやれやれと苦笑していた。
ただ、みんな、楽しそうだ。
わくわくした様子が伝わってくる。
「ねえねえ、レイン。これ、似合っているかな?」
カナデが笑顔で尋ねてきた。
その場でくるっと回り、浴衣姿をアピールしてくる。
「もちろん。すごくいいと思う」
「えへへ、やったー!」
「ちょっと、褒めるのはカナデだけ?」
「ソラ達のことを忘れていませんか?」
「タニアもソラも。もちろん、ルナもニーナも、みんな似合っているよ。本当は、ティナの分も用意したかったんだけど……」
「ウチはどうしようもないからなー。ま、気にせんといて。幽霊でも、お祭りの雰囲気は楽しめるからなー」
ふわふわと浮いているティナは、カラカラと笑う。
ティナの浴衣を用意できなかったのは残念だけど……
お祭りを一緒できただけで、今はよしとするか。
お祭りは、だいたい夜に開かれているからティナも一緒できる。
ホライズンではティナを知っている人も多いから、混乱させることもないしな。
「それじゃあ……」
みんなを見て笑顔で言う。
「今日は、思う存分、お祭りを楽しむぞー!」
「「「おーーーっ!!!」」」
……というわけで、今日は、みんなでお祭りにやってきたのだった。
――――――――――
「……レイン」
お祭りといえば屋台。
みんなで見て回っていると、ニーナが服の端を引っ張ってきた。
そんなニーナも浴衣姿だ。
尻尾が窮屈にならないように改良された特別製。
花柄でとてもよく似合っている。
「あれ……なに?」
「あれ、って……ああ。りんご飴とかか」
お祭りの定番、りんご飴を売っている屋台があった。
りんご飴だけじゃなくて、いちごやオレンジなど、他のフルーツを使ったものもあり、時代を感じさせる。
「りんごの……飴?」
「りんごをコーティングをした飴というか……お菓子って言った方がいいのかな? 甘くて美味しいよ」
「……じゅる」
「よし、ちょっとまっててくれ」
屋台に行って、りんご飴を買う。
いちごと迷ったけど、まずは定番のりんごだろう。
「はい」
「……ありがとう」
ニーナはりんご飴を受け取ると、じーっと見つめた。
どうやって食べるのか迷っているみたいだ。
「……あむ」
ややあって、ぱくっとかじりついた。
それもアリだ。
「……!!!」
カッ! とニーナの目が大きく開かれる。
その顔は、すぐに笑顔でいっぱいになって。
三本の尻尾がパタパタと揺れ動く。
気に入ってくれたみたいだ。
「美味しいか?」
「ん!」
「そっか、よかった……って、早いな!?」
ニーナは、ぺろりとりんご飴を食べていた。
一応、飴だから、もっとのんびり舐めて食べていくものだけど……
よほど気に入ったみたいだ。
「……」
ニーナはなにも言わない。
ただ、屋台の方をじっと見つめていた。
苦笑しつつ、ニーナの頭を撫でる。
「次はどれが欲しい? またりんご? それとも他のやつ?」
「いい……の?」
「もちろん。今日はお祭りだからな」
普段は、たくさんお菓子を食べたらいけない、ということになっているけど……
お祭りの日くらい、そこは気にしなくてもいいだろう。
「えっと、えっと……」
ニーナはあれこれと目移りしてしまっている様子。
それならと、りんごといちごとオレンジと……とりあえず、五種類ほど買ってみた。
「ほら」
「あり……がとう」
ニーナの尻尾がさらにぶんぶんと揺れた。
両手いっぱいの飴。
さすがにすぐに食べることはできず、ゆっくりと舐めて食べていく。
そんなニーナは可愛らしく……
こうして喜ぶところを見れただけでも、お祭りに来たかいがあったな、と思うのだった。




