230話 遭難その15
転がり落ちるような勢いで山を駆け下りていく。
この速度、勢いは、さすがにソラとルナ。
それと、ニーナとナタリーさんには厳しい。
なので、そのうちの三人は俺とカナデとタニアが背負い……
「あわわわ!? こ、これは、なんかこう、すさまじい体験をしてますね、私!?」
「喋ると舌噛むで」
ナタリーさんは、ティナの念動力で運んでもらっていた。
「おおおおお!? がくがくと揺れるのだ……!?」
「こ、これは、なかなか胃に来ますね……」
「ごめんね、我慢して!」
「もうちょっとだから!」
カナデとタニアの言う通り、もう少し。
とある場所にイノシシを誘い出すことができれば……
「ひゃ!?」
カナデの悲鳴。
地面を這うようにして伸びていた蔦に足を取られ、転びそうになっていた。
背負われているソラも一緒に飛ばされそうになる。
「あかんでー!」
ティナが咄嗟に念動力を使い、二人の体勢を整えた。
「ティナ、ありがとう!」
「な、なんのこれしきぃ……」
まずい。
余計な力を使わせてしまったせいで、今度はティナが限界っぽい。
今のところ、どうにかこうにか移動を続けられているものの……
このままだと、そう遠くないうちにバテてしまうだろう。
そうなると逃げることは難しい。
そんなことにならないように、俺がするべきことは……
「ティナ! ナタリーさん!」
「へぁ!?」
「ひゃ!?」
ティナを頭の上に乗せて。
それから、ニーナを背負いつつ、ナタリーさんを前で抱えた。
「れ、レインの旦那!?」
「あわわわ、こ、こんなにレインさんと密着することに……!?」
「二人共、しっかり掴まっててくれ!」
「わ、わかったで!」
「さ、さらに!? こ、これは仕方ないこと、仕方ないから仕方ないんですよね!」
なにやらナタリーさんの様子がおかしいが……
今、細かいことを考えている余裕はない。
「ブモォオオオオッ!!!」
イノシシが島全体に響きそうな咆哮をあげつつ、猛烈な勢いで追いかけてきた。
こちらは能力が低下していて。
おまけに、慣れない島の森林地帯。
思うように逃げることができず、どんどん距離が詰められていく。
まずいか……?
このままだと……
いや。
諦めるわけにはいかない。
この作戦でいくと決めた以上、今更、引き返すことはできない。
やり遂げて、成功させるだけだ。
「みんな、がんばれ! あと少しだ!」
「「「おーーーっ!!!」」」
気合を入れて、もうひとがんばり。
全力で駆けて、とある地点を目指していく。
追いつかれるか。
追いつかれないか。
ギリギリのレースが繰り広げられて……
「ついた!」
崖の上にある開けた場所……目的地に到着した。
俺達は、慌てて急ブレーキ。
左右にある窪みに避難する。
一方、イノシシは……
「ブモォッ!?」
こちらを全力で追いかけてきたイノシシは、道がないことに気づいてブレーキをかけた。
しかし、止まれない。
巨体で勢いがつきすぎているため、どれだけふんばっても止まることができない。
土煙を巻き上げて、悲鳴をあげて……
そのまま、勢いよく崖から飛び出してしまう。
「ブォ……グォウ!?!!!!!?」
崖の下から断末魔の悲鳴が聞こえてきた。
ニーナとナタリーさん。
それとティナをゆっくりと下ろしてから、落ちないように気をつけつつ、崖の下を覗き見る。
高所から落ちたイノシシは、地面に叩きつけられていて。
ついでに、俺達が設置した罠の槍に体を貫かれて、絶命していた。
今の俺達にイノシシを倒すことができるかどうか、けっこう怪しい。
なら、普通の方法は諦めて迂回路を探せばいい。
イノシシを誘い出して、崖から落とす。
落ちただけでは死なない可能性もあるから、罠も設置しておく。
みんなで考えた策は見事に成功した。
俺は振り返り、みんなに向けて親指を立てると、
「「「やったーーーーー!!!」」」
島全体に歓声が響き渡るのだった。




