229話 遭難その14
『主』と呼ばれている、巨大なイノシシと戦うか。
戦うことで、その素材を活用できる。
ただ、みんなの能力は激減しているため、苦戦は必須だろう。
もしかしたら怪我をする人が出てくるかもしれない。
戦いを避けることは可能だろう。
その場合は、もちろん素材は手に入れられないけど……
ただ、危険はない。
どちらを選ぶべきか、非常に悩ましい。
「……よし」
少し考えて、言葉を紡ぐ。
「さすがに、これは俺の独断で決めていいことじゃないと思う。みんなの意見を聞きたい」
「「「……」」」
「リスクを犯してでも、リターンのために『主』と戦うか。それとも、安全を選んで危険は回避するべきか。みんなはどう思う?」
俺の問いかけに、みんなは……
――――――――――
翌日。
できる限りの準備をして。
しっかりと家の戸締まりをして。
俺達は、みんなで山に向かう。
「まさか、全員一致で倒すを選ぶとは」
あの後、色々と話し合い。
最後に賛成か反対か選んでもらったのだけど、みんな一致で、『主』と戦う道を選んだ。
確かに危険はある。
ただ、それ以上のリターンがある。
ここで主を倒せば、多くの素材が手に入る。
食糧は、当面、心配いらなくなるだろう。
そしてなによりも、その素材を使うことで強固な船を作ることができるはず。
ならば、危険があったとしても挑むべきだ。
みんなの判断は、そのような感じだった。
「みんな、絶対に無理はしないように」
「うん、わかっているよ」
「もうちょっとで島を脱出できるかもしれないんだもの。無茶なんてしないわ」
「我らの力を見せつけてやるのだ! そして、我が糧となるがいい、ふははは!」
「ルナ、その笑い方は下品ですよ」
「ま、気持ちはわかるで。気合やな」
「がん……ばる」
「騎士として、最善と尽くそう」
「私は受付嬢として……しっかり、みなさんのサポートをしますね!」
みんな、気合は十分。
うん。
これならきっと、勝てるだろう。
なにか大きな問題が起きる、なんてこともないはず。
そう信じて、俺達は山を登り……
「……あいつか」
山の頂上。
開けた場所に主の姿があった。
カナデ達が言っていたように、とても大きい。
二階建の家と同じくらいのサイズだ。
昼寝中らしく、目を閉じたまま動かない。
このまま奇襲!
……といきたいところだけど、それでは事前に考えた作戦が使えない。
ちょっともったいないけど、わざと起こすしかないな。
「ティナ、やってくれ」
「了解やで」
ニーナの頭の上に乗る人形バージョンのティナは、魔力の球を作り出した。
ティナに合わせたサイズなので、とても小さいのだけど……
その分、しっかりと魔力が練り上げられているため、威力はとても高いだろう。
「第一球、大きく振りかぶってぇ……」
ティナは自分でそう言いつつ、
「投げたぁーーー!!!」
剛速球。
魔力の球は、空気を切り裂くかのように勢いよく飛んだ。
放たれた球は緩やかな弧を描いて。
しかし、それはティナが思い描いた通りのコースで。
スカーーーン!
妙に心地良い音を立てて、イノシシの頭部、ど真ん中に球が直撃した。
「フォゴッ!?」
イノシシが慌てた様子で起きて。
こちらを見ると、俺達の仕業と気付いたらしく、鼻息を荒くする。
「フォゴオオオオオオッ!!!」
「よし! みんな、逃げるぞ!」
「「「おーーー!」」」
さあ、追いかけっこの始まりだ。




