219話 遭難・その6
「さて、私達は水の確保をしようか」
「そうですね。水は、とても大事ですからね。昨日は、持ってきたものでなんとかなりましたけど……それも、無限あるわけじゃないですし」
ステラとナタリーが真面目な顔で言って。
それを聞いていたカナデとタニアが、はて? という感じで小首を傾げた。
「ねえねえ、水ならそこにあるじゃない?」
カナデが海を指さした。
「あ、もしかして、運ぶ量とかを心配しているの?」
「それなら大丈夫よ。あたし達がいるんだから、いくらでも運ぶことができるわ! ふふんっ」
「えっと……それは、ボケなんですか?」
「普段が普段だけに、ものすごく判断に迷うな……」
ナタリーとステラが微妙な表情に。
はて?
なぜ、そのような顔をされるのだろう。
カナデとタニアが、再び小首を傾げた。
「えっと……カナデさん、タニアさん。基本、海の水は使えませんよ?」
「にゃん? どういうこと?」
「だって、そこにいっぱいあるじゃない。使っても使い切れないくらいに」
「あれは海水なので、飲水としてだけではなくて、洗濯や体を洗うのにも使えないので……」
「「???」」
やはり理解していないらしく、カナデとタニアは揃って小首を傾げた。
ナタリーは頭を抱えた。
ステラも、頭痛を我慢するような表情をしつつ、ゆっくりと優しく言う。
「二人は、海水浴をしたことがあるか?」
「本格的なものはしたことはないけど、海で泳いだことならあるよ」
「同じく」
「その時、海から上がったらシャワーを浴びていなかったか? シャワーを浴びないと、全身がベトベトしなかったか?」
「そう言われてみと……」
「その通りね」
「海水は塩が混じっているので、普通の水として使うことはできない。もしも、そのまま飲んだとしたら、塩分の過剰摂取で、普通は死ぬな」
「「死っ!?」」
恐ろしい単語を聞かされて、カナデとタニアの尻尾が、ぴーんと逆立つ。
「なので、蒸留する必要があるんですよ」
「「じょーりゅー?」」
ナタリーが補足するものの、二人は理解できれおらず、また小首を傾げた。
学校の教師はこんな感じで苦労しているのだろうか?
ナタリーは、ふと、そんなことを思いつつ、説明を続ける。
「蒸留というのは……まあとにかく、海水を普通に飲めるようにする作業のことです」
細かい説明は投げた。
その理由は察するべし。
「おー、そんなことができるんだね」
「あたし達は、その蒸留の手伝いをすればいいわけ?」
「はい。正確にいうと、蒸留するための装置を作る手伝いですね」
「組み立ては私達がやるから、二人は、その素材を集めてきてほしい。素材になるものは……」
ステラが二人に集めてほしい材料を教えた。
「……以上のものが欲しいが、大丈夫だろうか?」
「うん、任せてよ!」
「バッチリね」
「「……」」
なぜか、ものすごく不安になるナタリーとステラだった。
――――――――――
カナデとタニアに素材を集めてもらい。
それを使って、ナタリーとステラが蒸留装置を作り上げた。
「ふむ。なかなかの出来ではないか?」
「はい、そうですね」
ドラム缶をベースに作り上げた蒸留装置。
ここに海水を汲み、きちんと蒸留されれば成功だ。
「ここに海水を入れるだけで飲めるようになるなんて、すごいね」
「すぐに飲めるわけではないがな」
「あと、きちんと作動するかテストをしないといけません。今日は、そのテストで時間を費やしてしまいそうですね」
「でも、待たないとダメなんでしょ? ただ待っているっていうのも、アレじゃない?」
「ここは私が見ていますから、カナデさんとタニアさんは、また、材料を集めてきてくれませんか? 成功したとしても、これだけでは足りないので、量産しないといけません」
「にゃいにゃいさー」
「なら、私は雨水を貯められるようなものを作ろうか。飲水以外の水も必要だからな」
「はい、お願いします」
水を確保するため、四人は一致団結する。
ナタリーとステラが指揮を取り。
カナデとタニアが物を運ぶなど、実作業に励む。
そうして蒸留装置が完成して……
「「「水だーーーーー!!!」」」
喜びの声をあげる四人。
抱き合い、完成を祝い……
「「「あっ」」」
その弾みで蒸留装置を倒してしまい、水がこぼれてしまう。
教訓。
最後まで油断しないこと。
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ざまぁ×拳×無双系です。よろしければぜひ!




