218話 遭難・その5
遭難二日目。
救助はまだ来ない。
というか、救助が来るのかどうか、それすらわからない。
ナタリーさんとステラはともかく……
俺達は冒険者だ。
長期不在にしても、依頼を請けたのかな? と思われて、特になんとも思われない可能性がある。
ただ、ナタリーさんとステラはそうならないだろう。
二人をきっかけに、俺達が遭難していることを街の人が知るかもしれないけど……
救助がいつになるか、それはわからない。
安全に過ごせるように環境を整えたら、自力で脱出する方法を考えた方がいいかもしれないな。
――――――――――
二日目。
俺は、今日も家を作っていた。
床と壁と天井は完成した。
続いては、動物や……いるかどうかわからないが、魔物の侵入を防ぐための柵と扉。
その他、テーブルやイスなどの家具も作っていきたい。
「というわけで……頼んだぞ、お前たち」
「「「ウキィ!」」」
島にいた猿達と仮契約をした。
指示を出して、木を望む形にカットしてもらう。
「ほへー……」
「おー」
今日は、ティナとニーナと一緒に作業をしているのだけど……
二人は、ぽけーっとした様子でこちらを見る。
「どうしたんだ?」
「猿って器用なんやな。まさか、こんなことができるとは思ってなかったで」
「すごい……ね」
「人と似てるところがあるからな。それに、とても賢い。手本を見せてあげれば、大体のことはできるよ」
そう言いつつ、木をカットするところを猿に見せた。
猿は、ふんふんと頷いて、仲間達とキィキィとなにかを話す。
そして、さきほど石で作ったナイフを手に、木のカットを始めた。
すぐに完成する。
やや仕上がりは荒いものの、それでも、十分に使えるレベルだ。
「ありがとな」
「ウキー……」
「うん? 納得していないのか?」
「キキッ!」
「そっか……わかった。もう一回やりたいっていうのなら止めないさ。というか、お願いするよ。よろしく頼む」
「キイ!」
任せろ、という感じで猿が鳴いた。
そして、再び木のカットに取り組む。
「なんちゅーか……もはや職人さんやなぁ」
「わたしも……がん、ばる」
「せやな! 負けてられへんでー!」
ニーナとティナが、ふんす! という感じでやる気を見せた。
まずは、ティナが念動力で木をカット。
かなり正確で、鋭い角で怪我をしないように丸くなっているなど、細かいところまで丁寧に細工されていた。
それを、ニーナが転移で運ぶ。
一つ一つのサイズはそうでもないが、まとめてとなると、かなりの量だ。
大した労力と人手なく運べるというのは、かなり大きい。
「キキッ!」
「おっしゃ、みんなもがんばろか」
「キィ!」
「いっしょに……やろう?」
猿達とも友好を築いている様子。
完璧すぎる仕事だ。
「俺も負けていられないな」
まずは柵の設置だ。
獣や魔物の侵入を阻止するため、頑丈な構造にしなければいけない。
ただ、材料は木材しかないから、なかなか難しいところだ。
「ただ、パズルを組み立てるみたいに……」
まずは格子状に組み立てる。
そこに縦横斜めと、立体的に木材を組み込んでいく。
単純に木材を横に並べただけの柵では、衝撃に耐えることは難しい。
ただ、縦横奥に広がっているものだとしたら?
激しい攻撃を受けたとしても、立体的に衝撃を逃がして、分散させることができる。
絶対安全というわけではないが、それでも、それなりに頑丈なものになるだろう。
「レインの旦那、めっちゃ本格的やな……これで入り口を囲うん?」
「ああ。こう……入り口から半円を描くような感じで柵を設置して、多少のスペースも作りたいな。できるなら、焚き火は洞窟の外でやりたいし」
一酸化炭素中毒とかが心配だ。
今のどころ洞窟の入り口はフルオープンなので、その心配はないのだけど……
虫などの対策に扉も設置したいから、火事場は分けた方がいいと思うんだよな。
「で、念の為に、さらに外側に柵を作る」
「二重なん!?」
「外側の柵の中で、野菜とか育てる畑を作ってもいいかもしれないな。あと、できれば井戸を掘っておきたい」
「ここの住むん? ってくらい、本格的すぎるやで……」
「さすがに住むなんてことは考えてないけど……けっこう、長期戦になるかもしれないからな。備えるだけ備えておこうと」
明日、救助が来るかもしれない。
しかし、一ヶ月後になっても救助が来ないかもしれない。
先の状況がまったく読めないから、できる限りのことはしておきたいと思う。
それで作業が無駄になったとしても、その時は笑い話にすればいい。
あの時は大変だったねー、とかいう感じで。
「レイン……わたしも、手伝う……よ?」
「そっか。じゃあ、俺が柵の基盤となる杭を打ち込んでいくから、そこに……」
「ううん。それ……わたしが、やる」
ニーナは、カットされた木材に手を伸ばした。
ふっと、木材が消えた。
次の瞬間、思い描いていた位置に木材が縦に突き刺さっていく。
いや。
突き刺さるのではなくて、転移していた。
一瞬で出現したから、突き刺しているのではなくて、木材の半分ほどが埋もれるような感じで、地面の中に転移させているのだろう。
「すごいな」
「えへん」
「ありがとな、ニーナ。おかげで、かなり作業が捗りそうだよ」
「もっと……がんばるね♪」
ニーナは笑顔になって、三本の尻尾をぱたぱたと揺らすのだった。
◇ お知らせ ◇
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ざまぁ×拳×無双系です。よろしければぜひ!




