22話 はじめてのおつかい・その6
「次で……最後」
果物は無事に買うことができた。
残りは、調理に使う器具を少し。
少し危ういところもあったけど、無事、ミッションを達成できそうだ。
なんだ、自分もやるじゃないか。
がんばれるじゃないか。
むふー、とニーナはちょっと自慢そうな顔に。
自慢の尻尾を揺らしつつ、調理器具を扱う店に足を運ぶ。
今度は迷うことはない。
道中、トラブルに巻き込まれることもない。
しかし……
「うーん……これじゃあお金が足りないねえ」
「え?」
いざ精算……というところでトラブルが起きてしまう。
会計に必要な金額は、全部で銀貨8枚。
でも、手持ちは銀貨5枚。
「えっと、えっと……あれ? あれ?」
何度調べても、銀貨は5枚しかない。
「どう、して……?」
無駄遣いなんてしていない。
だとしたら、途中で落としてしまったのだろうか?
あるいは、どこかのタイミングで払いすぎてしまったのだろうか?
あれこれと考えるものの、銀貨が5枚しかないという事実は変わらない。
「……どうして銀貨が足りていないんですか? 用意したのはルナでしょう?」
「……わ、我はちゃんと用意したのだ。たぶん」
「……本当に?」
「……たぶん」
「……それ、ダメっていうことですよね!?」
おかしい。
ここにいないはずのソラとルナの声も聞こえてきた。
ニーナは、自身がものすごく混乱しているのだろう、と結論づけた。
「ふぇ……」
慌てて、混乱して……
どうしていいかわからなくなり、涙がにじんでしまう。
そんなニーナを見た店主は慌てた。
「えっと……お嬢ちゃん、お金が足りないのかい?」
「……うん」
「そっか。なら、そうだな……」
ニーナは、ホライズンを救ってくれた英雄の仲間だ。
困っているのなら力になりたいが……しかし。
店主はニーナが一人でおつかいに来た理由をなんとなく察していた。
その理由を考えると、ここでまけてしまうことは彼女のためにならないだろう。
なにかしら代案を見つけた方がいいはずだ。
「お嬢ちゃん、なにか金になりそうなものは持ってないかい? ちょっとしたものでいいんだ。なにかあれば、それを買い取らせてもらうよ」
「いい……の?」
「お嬢ちゃん達はウチの常連だからな。今回だけの特別サービスさ」
「あり、がとう」
「それで、どうだい? なにかあったりするかい? 無理はしないで、いらないものとかでいいぜ」
「えっと……」
財布は必要だ。
これまでに買ったものも、やはり必要だ。
そうなると……
「えい」
ニーナは亜空間を開いて、その中に片手を突っ込んだ。
そのまま、ゴソゴソと中を探る。
「んー」
幼い少女が歪んだ空間に片手を突き入れて、なにやら探している。
ちょっと異様な光景なのだけど、街の人は慣れたもので、のんびりと待っていた。
「よい……しょ」
ややあって、ニーナは拳大の石を取り出した。
それをカウンターの上に乗せて、店員を見る。
「これは……どう?」
「うん? 石……か?」
「キラキラの……石。綺麗だから……拾って、おいたの」
「ん!? これ……金が混ざっているじゃないか!?」
ニーナが取り出したのは、ところどころに金が混ざった鉱石だった。
「こんなもの、いったいどこで……?」
「川……で。お散歩、している時に……見つけたの」
「川? ……ああ、そっか。そういえば、昔、川で金が取れたことがあったな。今も取れることがあったのか」
「これ……平気?」
「平気と言えば平気だけど……」
店主は困った。
加工の手間を差し引いても、金貨10枚はくだらない。
大儲けだ。
ただ、今度はこちらがもらいすぎになってしまう。
「これだと俺がもらいすぎだな。欠片くらいにすることはできないか?」
「ちょっと、難しい……」
「そっか。なら……よし! もっと色々なものを持っていっていいぜ」
「いい、の?」
「それくらい価値のあるものなんだよ。お嬢ちゃんが欲しいもの、好きなものを選ぶといいさ」
「あり、がとう」
ニーナはにっこりと笑い、尻尾をぴょこぴょこと動かした。
――――――――――
こうして、ニーナはなんとかトラブルを乗り越えることができた。
その一方で……
「ルナがちゃんとしていないから、ニーナが困っているんですよ!?」
「我のせいではないのだ! これは、何者かによる陰謀なのだ!」
様子を見守るはずのソラとルナが自分達の役目をすっかり忘れて、ケンカしていたとか。
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