2話 野球しようぜ!・その2
先行は赤チーム。
打順は、俺、ソラ、ニーナだ。
誰がどんな球を投げてくるかわからない。
なので、まずは俺が様子を見る、っていうのが正しいやり方だと思う。
「ふっふっふ……レインが相手でも手加減しないよ」
「カナデ、ばしっとやっちゃいなさい!」
「ばっちこい、なのだ!」
ピッチャー、カナデ。
キャッチャー、タニア。
外野、ルナ。
青チームは、だいたい予想していた通りの布陣になった。
ピッチャーは剛腕のカナデかタニアになるだろう。
そして、そんな球を受け止められるのは、もう一人だけ。
残ったルナが外野を担当する。
ルナは体力的に不安要素があるけれど……
一球も飛ばさなければいい。
そうやって力で押し切る。
そんな戦法を選んできたようだ。
「みんな、準備はええかー!?」
審判のティナの声に、みんなが頷いた。
ちなみに、ティナは魔力を使っているのか、空中にふわふわと浮いている。
女の子の人形が宙に浮いて、声を発している……
野球をしているはずなのに、一部、ちょっとしたホラーになっていた。
「じゃあ……プレイボール!」
問題ないとみんなが頷いて、ティナが試合開始を告げた。
「よーし、いくよー! 私の必殺ボールで、レインを倒しちゃうんだから!」
「倒してどうする。アウトを取るんだからな?」
「ちょ、ちょっとした言い間違えだよ」
大丈夫だろうか?
嫌な予感がして……
そして、その不安は的中する。
「うー……にゃんっ!」
ヒュンッ!!!
ゴガァッ!!!!!
カナデがボールを投げて……
とんでもない速度でボールが飛んで、後ろにある木を薙ぎ倒した。
「「「……」」」
全員、沈黙。
みんな揃って、うわぁ……というような顔をしていた。
「ちょっと!? なにやってんのよ!?」
最初に我に返ったのはタニアだった。
メットを上げて、慌てた様子で立ち上がる。
「大暴投じゃない!」
「……え、えへへ」
「笑ってごまかそうとしない!」
「ってか、もうちょっとでレインに当たるところだったわよ! そうしたら、デッドボールで出塁じゃない」
「いやいやいや。俺の心配をしてくれないか!?」
「レインなら大丈夫よ」
「うんうん、大丈夫っぽいよね」
「とんでもテイマーだから、問題ないのだ」
こ、この三人は……
いくらなんでも、今のが直撃したらやばい。
文字通り、デッドボールになってしまう。
みんな、妙なところで俺に対する信頼が高くないか?
「とにかく、カナデには気をつけないといけないな……」
バッターボックスの外側……さらに、後ろの方に立つ。
焼け石に水かもしれないが、それでも前に立つよりはマシだろう。
「カナデ、デッドボールはあかんでー。そんなことになったら、おしおきやからな」
「おしおき!?」
「せや……ズバリ、デッドボールを叩き出したら、今日の夕飯抜きや!」
「いやあああああ!?」
カナデは悲鳴をあげて全身を震わせた。
夕飯抜きの恐怖におののいているみたいだけど……
大げさだなあ、と苦笑してしまう。
でも、それがカナデらしいか。
「よーし! 変なコースは狙わないで、直球ど真ん中いくよ!」
「バカ! 予告してどうするのよ?」
「だってだって、他のコースを狙うの、ちょっと大変なんだもん」
「まったく……あたしがピッチャーをやった方がよかったかしら? でも、カナデやルナにキャッチャーができるとは思えないし……はぁ」
司令官の立場になったタニアは、とても大変そうだ。
ただ、嘆いてばかりじゃない。
すぐに不敵な笑みを浮かべて、こちらを見る。
「悪いけど、今回はあたしらが勝たせてもらうわ」
「ずいぶんと自信たっぷりだな」
「あたし、負けず嫌いなの」
「奇遇だな、俺もだ」
こちらも不敵に笑う。
赤チームは負けたりなんかしないぞ、って表情で語る。
それに応えるように、タニアも挑発的な目をして……
うん。
たまには、こうしてみんなで競い合うのも悪くないな。
良い訓練になるっていうのもあるけど、それ以上に、ただただ単純に楽しい。
「よし、こい!」
「いくよー!」
カナデは大きくボールを振りかぶり、尻尾をピーンと立たせて……
そして勢いよく投げた。
ヒュゴォッ!!!
「っ!?」
ものすごい剛速球だ。
風のように……いや、それ以上かもしれない。
でも、見える!
「ここだ!」
俺はバットを思い切り振る。
コースは捉えた。
タイミングは完璧。
しかし
バキィ!?
「バットが折れた!?」
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