197話 喫茶ビーストテイマー・前編
「「「いらっしゃいませー! 喫茶、ビーストテイマーへようこそ!」」」
フリルがついた可愛らしい制服に身を包むみんな。
いっぱいの笑顔を浮かべて、接客にあたる。
一方、俺は厨房に立っていた。
次々と入るオーダー。
それを同時に捌いて、途中、スイーツやドリンクの用意もする。
かなり忙しいけど、まあ、やれないことはない。
アリオスのパーティーにいた頃は、似たようなことをやらされていたからな。
とはいえ……
「どうして、こんなことになったのやら」
――――――――――
始まりは、街で開催されるお祭りだ。
今年で、ホライズンが作られてちょうど100年が経つらしい。
それを祝い、街全体でお祭りを開くとのこと。
このお祭りの面白いところは、誰もが出店側として参加可能ということだ。
もちろん、申請が必要で審査があるのだけど……
よほど無茶な出し物でない限り通る。
面白そうだから俺も参加してみよう。
こういう機会はなかなかないから、私も参加してみよう。
そんな人がたくさん現れて、街は大賑わいだった。
その賑やかさをスルーするみんなではなくて……
なら私達も参加するべき!
という話になって、急遽、俺達も出店が決まったのだった。
――――――――――
『喫茶ビーストテイマー』。
なんの捻りもない店名だけど、俺達は、軽食とドリンク。そしてスイーツを提供する店を出した。
店は家を使い、みんなで準備をした。
途中、徹夜になることもあったけれど、それはそれで楽しい思い出だ。
そして、無事に祭りの日を迎えて、喫茶店を限定で開いたのだけど……
「まさか、ここまで繁盛するなんて……!」
「ひぃ、堪忍やでー!」
一緒にキッチンに立つティナが悲鳴を上げるほどに忙しい。
フライパンが複数、宙に浮いていて……
食材や調味料も浮いていて、慌ただしく飛び回っている。
「稼働率……250パーセント。全タスクを料理に……体内温度上昇。あと一時間で危険域に達する可能性、45パーセント。緊急性を感知。マルチタスクモードにて対応を……」
もう一人、コハネも手伝ってくれているのだけど……
なんかもう、色々とギリギリだ。
時折、煙が出ているのだけど、大丈夫なのか、あれ?
とはいえ、店を止めるわけにはいかない。
予想外すぎるのだけど、ここまでお客さんが来てくれているんだ。
できる限りのことはしたい。
それにしても、なんで、こんなにも流行っているのだろう?
その原因を探るべく、ちらりとホールの方を見た。