194話 名探偵ティナちゃん・前編
「こ、これは……!?」
朝。
今日の朝食当番であるため、早めに起きてキッチンへ移動したのだけど……
そこに、カナデが倒れていた。
白目を剥いて、泡を吹いている。
確認するまでもない。
彼女は、もう……
「なんてことや……ん? これは……」
ふと、ティナはカナデの指先が近くに落ちている包丁を指していることに気がついた。
もしかして、これはダイイングメッセージ?
「つまり、犯人は包丁でカナデを……?」
なんて恐ろしい。
しかし、同時に疑問に思う。
カナデは、身体能力に優れた猫霊族だ。
包丁を持った賊が押し入ってきたとしても、そうそう簡単に負けるとは思えない。
それなのに、カナデは完膚なきまでにノックアウトされていた。
「いったい、何者や……? っと、こうしてる場合やない! みんなに知らせんと!」
――――――――――
「みんな、集まってもろてすまんな」
30分後。
リビングに家の全員が集められていた。
ちなみに、カナデは部屋に運ばれている。
そのままにしておくのはあまりに忍びないからだ。
ただ、現場の状況はそのまま。
それと、カナデが倒れていた部分は、チョークで線を描いている。
「カナデがやられたっていうのは本当なのか!?」
「せや。うちが、この目がハッキリと見たで」
「そんな……」
「レインの旦那、落ち込むのは早いで」
「え?」
「なにせ……この中に犯人がいるんやからな!」
「「「っ!?」」」
全員が、!? とびっくり顔を作る。
「な、なんだってー!?」と今にも叫びだしそうだ。
「それは、どういう意味なんですか? ソラは、その言葉の意味を知りたいです」
「そのままや。カナデの件は事故やない……事件や!」
「こわい……」
「なんか、根拠はあるっすか?」
「根拠は、これや!」
ティナは、窓の外を指さした。
空は暗雲で覆われていて、時折、雷が閃いている。
強風が吹いていて、雨が窓を叩きつけていた。
「外は嵐。みんなのような最強種でも、吹き飛ばされてしまいそうな、最強の嵐や!」
「……そんな嵐が来たら、この家も吹き飛ばされるんじゃないかしら?」
「……そういうツッコミは無粋でございますよ」
「と、ともかく」
ティナはちょっと顔を赤くしつつ、でも、聞こえなかったフリをして話を続ける。
「外との行き来は不可能や。つまり、犯人はこの中にいる、ってことやな!」
「ほう……私の仲間が私の仲間を害した、ということか」
「わふー……あまり考えたくないな、そういうの」
「気持ちはわかるで。でも、このままやと、第二、第三の犠牲者が出ないとも限らないんや。ここで、しっかりと調査を進めないといかん」
「それはそうね」
「ボクは賛成かな」
「わ、ワタシ、知っています。こういう時、こんなところにいられるか! って一人になった人が次のターゲットになるんです」
フィーニアは震えながら言う。
うんうん、よくわかってるなー。
そんな感じで、ティナは満足そうに頷いた。
「ティナは、犯人がわかるのか?」
「いや、まだや。でも、これからの調査でハッキリをさせてみせるで。そう……」
ティナは、びしっ、と決めポーズを披露した。
「この事件、名探偵ティナちゃんが解決してみせるでー!」