180話 天使少女の現代旅行記・その31『贈り物』
無事、イリスは芹奈の救出に成功した。
長良が言っていたように、芹奈は怪我をしていない。
軟禁されていたものの、それ以外は大事にされていたようだ。
その後、イリスは芹奈を連れて家へ。
吉野にすごく心配されてものの……
ひとまず、これで事件は解決。
芹奈を取り巻く問題は、もう悪化することはないだろう。
「とはいえ……わたくしの問題は解決しませんわね?」
イリスは、未だ『地球』という異世界に囚われたまま。
元の世界に帰る方法はわからない。
もしかしたら、芹奈を助けるために召喚されたのではないか? と考えたものの……
芹奈を助けてもそれは変わらない。
「いったい、どういうことなのでしょうか?」
自室でイリスは小首を傾げた。
と、その時。
「え?」
ふと、世界が白に染まる。
光が弾けたかのように。
近くに雷が落ちた瞬間のように。
白一色に染まる。
時間も止まっていた。
窓を開けて、夜風に揺れていた観葉植物の葉がピタリと止まっている。
「これはいったい……」
「こんにちは」
気がつけば、見知らぬ女の子がいた。
10歳くらいの子供だ。
どこにでもいるような。
でも、どこにでもいないような。
そんな不思議な印象を持つ子だ。
「あなたは……」
「むぅ……ダメなんだよ。挨拶はちゃんとしないと」
女の子は頬を膨らませて、イリスを叱る。
どこからどう見ても普通の女の子なのに……
しかし、なぜか抗えない圧を感じたイリスは、素直に頭を下げた。
「申しわけありませんでしたわ。それと、ごきげんよう」
「うん、ごきげんよう」
女の子の機嫌が直り、にっこり笑顔に。
「ところで……あなたは、誰なんですの? この現象はあなたが?」
「うん。私、この世界の神様だからね。えへん♪」
「……神様?」
イリスは、「はぁ?」と声を上げそうになり。
考え直して、「否定はできないか」と納得した。
自分達の世界も神様も、可愛らしい方なのだ。
別世界の神様が10歳くらいの女の子だとしても、わりと不思議な話ではない。
そう考えたイリスは膝をつこうとして、
「あー、ダメダメ。そういう大仰な態度はいいから」
「しかし……」
「そういうことをしてほしくて姿を見せたわけじゃないの。これからのお話をしたいの」
「……わかりましたわ」
女の子……もとい、神様に止められて、いつも通りに振る舞うことにした。
「これからの話というのは?」
「その前に……この世界、気に入ってくれたかな?」
「……もしかして、あなたがわたくしをこの世界に?」
「正解♪」
「なぜ、そのようなことを?」
「がんばるあなたに贈り物をあげたくて」
「贈り物?」
「……友達と、安らぎの時間」
「……っ……」