18話 はじめてのおつかい・その2
「いって……きます」
みんなに見送られつつ、ニーナは家を後にした。
振り返る。
レイン達が手を振っている。
それを確認したところで、少し歩いて……
再び振り返る。
そんなことをしてしまうくらい不安なのだ。
「うぅ……」
街に出る時は、いつも誰かが一緒にいてくれた。
レインだったりティナだったり、隣で手を引いてくれていた。
でも、今は誰もいない。
自分一人だけ。
そのことがひどく寂しく……そして、不安だ。
「……でも」
がんばらないといけない。
みんなにおいしいごはんを食べてもらうために。
笑顔になってもらうために。
「んっ」
ニーナは小さな拳をぎゅっと握り、自分自身を鼓舞してみせた。
――――――――――
「ふぅ……」
丘を下り、ニーナの背中が見えなくなったところで手を振るのを止めた。
「とりあえず、第一段階は成功かな」
「ニーナ、大丈夫やろか……? 泣いたりしないやろか……? あぁ、もしも迷子になったりしたら……」
「ティナ、心配しすぎだろ」
今回の企画に賛成したのに、いざとなるとものすごい慌てていた。
「俺らも影でこっそりと様子を見守るし、大丈夫さ」
「せやけどぉ……それでも心配なんや! うぅ、ニーナ、ニーナ……」
「なんかこう、ティナってニーナのお母さんみたいだよね」
「いつも一緒にいるし、そう思うのも仕方ないけど……」
「ティナも、子離れする企画を考えた方がよかったのではないか?」
「やれやれですね」
おろおろするティナに、みんなは苦笑を見せていた。
とはいえ、ティナの気持ちはわからなくもない。
本人の性格もあるけど……
領主に捕らえられていた経緯があるから、ニーナはちょっと臆病なところがある。
それが悪い方向に作用しないといいけど。
「でも、その時は助ければいいな」
一人のおつかい。
でも、本当にニーナを一人にするつもりはない。
こっそりと後をつけて様子を見守り……
いざという時は表に出るつもりだ。
「よし。じゃあみんな、それぞれ配置についてニーナを見守ろう」
「「「おーっ!」」」
――――――――――
「えっと……」
ニーナは丘を下り、街の商店街にやってきた。
メモを見つつ、てくてくと歩いていく。
「まず、は……お野菜」
リストには、玉ねぎ、人参、じゃがいもと書かれていた。
「……カレー? あっ」
ごはんを想像したら、お腹がきゅるるると鳴ってしまう。
ニーナは赤くなり、小さなお腹を両手で押さえた。
おとなしい性格をしているものの、でも、基本は子供。
食べ物のこととなると、こうして過剰に反応してしまう。
「はず……かしい」
ニーナは赤くなった頬を両手でむにむにとした。
「うん」
それから、気合を入れ直すように、ぎゅっと小さな拳を握る。
お腹が空いてきた。
でも、みんなはもっと空いているはず。
なら、自分ががんばらないと。
早く材料を買って帰らないと。
使命感に燃えるニーナは、一人、商店街を進んでいく。
……その後ろにレイン達がいることには気がつくことはない。
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