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176話 天使少女の現代旅行記・その27『友達』

 わたくしは、最強種。

 その中でも、特に戦闘力に優れていると言われている天族。


 人間を守ることを存在意義とされてきたが……

 とある事件により、それは破綻した。


 人間は狩る対象。

 復讐の目的。

 一人残さず殺す。


 ……なんて、物騒なことを考えていた時期もあった。

 ただ、こちらもとある事件により、考えを変えることになった。


 人間は愚か。

 ただ、その全てが救いがたい存在、というわけではない。


 自分を救ってくれた人間がいる。

 その他に、優しく、温かい人間もいる。

 そのことを理解した今、復讐心は消えた。

 意味なく殺そうなんて考えたことはない。


 ただ、距離感は測りかねていた。


 復讐心は消えたものの、それでも、かつて憎いと思っていた相手だ。

 どのように接すればいいかわからない。

 どのような話をすればいいかわからない。


 だからわたくしは、人間と距離を置いてきた。

 必要に応じて接することはあったものの、親しい仲になることはない。


 あくまでも『他』と『他』の関係を貫いた。


 ただ……


 今のわたくしは、柚木芹那という少女に親しみを抱いていた。


 彼女に向ける笑みは、たぶん、本物だと思う。


 そう。

 まったく自覚がなかったのだけど。

 彼女がさらわれた今、ようやく理解したのだけど。


 どうやらわたくしは、芹那ことを『本物』の友達と思っていたようだ。


 この世界にいる間、助けてもらう存在というわけではなくて。

 一緒にいて、一緒に笑顔を浮かべたいと思う相手で。


 初めて、人間の『友達』ができた。


 元の世界に仲間達はいる。

 彼女達のためならば命を賭けられる。

 また、背中を預けることができる。


 真の仲間だ。


 ただ、友達というのはちょっと違う。

 親しみを抱いているし、かけがえのない存在というのは間違いない。

 それでも、友達ではないなにか……もっと別の存在、という認識になってしまう。


 なので、純粋な友達は初めてだ。


「まさか、このようなことになるとは……ふふ。人生というのは、本当、おかしなものですわね」


 人間に対して復讐心を抱いて。

 それが消えた後も、きっちりと距離を取っていたというのに。


 でも今は、芹那の近くに行きたい。

 彼女の笑顔を見たい。


 友達だから。


「さて」


 イリスはゆっくりと山道を歩いていく。

 その先は、山間部に作られた長良亮斗の屋敷だ。


 要塞と言える堅牢な場所。

 ここを攻め落とすとなると、警察官では力不足だ。

 機動隊でも無理だ。

 自衛隊の出動を願わないといけない。


 そんな場所に、一人、イリスは向かう。


 ……『友達』を助けるために。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めて、人間の『友達』ができた。 あのイリスが、そこまで芹那の事を 2人が互いに笑顔で早く再会できることを願いたいですね。
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