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172話 天使少女の現代旅行記・その23『お守り』

「ふむ」


 家に帰り、自室に戻ったイリスは帰り道のことを考えていた。


 スカウトを名乗り、声をかけてきた怪しげな男。

 おそらくは、芹那を狙う男の部下だろう。


 長良亮斗。


 芹那の遠い親戚。

 粗暴という言葉を体現したかのような性格で、裏社会の仕事に手を染めている。

 今までは距離を置いていたが、芹那が遺産を手に入れたことで、彼女の周囲に姿を見せるようになった。


 ……という情報を、先に芹那を狙っていた藤堂なる男から聞き出していた。


「さて、どういたしましょうか?」


 最近のイリスは、時間があれば『すまほ』なる魔導具の操作をしていた。


 遊んでいるわけではない。

 『がちゃ』の沼にハマったわけでもない。


 この世界についての情報収集をしていたのだ。


 まだわからないことは多いが……

 この世界には、『けーさつ』なる存在があるらしい。

 悪人を取り締まり、民の安全を守る組織。


「とはいえ、けーさつはアテになりませんわね」


 所詮、人間が運営する組織だ。

 長く存在すればするほど、腐敗が進んでいく。


 全てが、というつもりはない。

 ただ、ある程度は腐り、まともに話が通らないことが多いだろう。


 芹那の件にしてもそうだ。


 先日……イリスは、藤堂を含む、その手下達、百人以上を叩きのめした。

 藤堂達は撤退したようだけど、現場の痕跡を完全に消すことは不可能。

 誰かが通報して事件が発覚……するはずなのだけど。

 しかし、テレビを見る限り、そんなニュースは流れてこない。

 『すまほ』で情報を検索しても見つからない。


 もみ消されたのだろう。


「やれやれ。けーさつも騎士団も、ダメなところは本当にダメですわね」


 けーさつはアテにならない。

 なら……


「わたくしがやるしかありませんわね」


 芹那には色々と助けてもらった。


 それに……

 彼女は友達だ。


 なればこそ、必ず助けてみせる。

 厄介事を追い払ってみせる。


「もう一人の敵は、長良というようですが……こちらは、まだよくわからないところが多いですわ」


 芹那の親戚。

 温厚な人柄で、児童養護施設も経営しているのだとか。


 ただ、裏の顔を持つ。

 金と女と名声を求めて、他者を蹴落とし、時に命を奪うことにためらいもない。


 控えめに言ってクズである。


 この世界、似たような存在が裏社会に存在するものの……

 基本、彼らは派手に暴れることはない。

 また、一部ではあるが、仁義を非常に重んじる組織がある。


 長良は、そんな者達に劣る、最低のクズであり、ゴミなのだ。

 それがイリスの見解だった。


「ごみ掃除をしておきたいところですが……ふむ」


 まずは情報収集をしなければいけない。

 ただ、この世界には詳しくないため、手段を持ち合わせていない。


 イリスの力を持ってすればなんとかなるだろうが、それでも時間はかかる。


「その間に芹那さんが……という可能性はありますわね。攻撃は最大の防御と言いますが、しかし、守らなくてはいけないものが傷つけられたら意味がないわけで……まずは守りを考えましょうか」


 イリスは不敵な笑みを浮かべて……

 裁縫キットを取り出した。


 そして、なにやらせっせと縫い始める。


「ふふん♪」


 こう見えて、イリスは家事全般が得意だ。

 昔は姉のような存在に甘えていたものの、いつまでもそれではいけないと、教わり、上達した。


 簡単な裁縫ならすぐに終わる。


「よし、完成ですわ」


 作り上げたのは、神社などで売られているようなお守りだ。


 イリスは自分の髪を一本抜いて、お守りの中に入れる。

 これで、多少の害からは守ってくれる。

 それと、ある程度の距離が離れたとしても、簡単に位置を割り出すことができる。


「それと……ふむ」


 イリスは少し考えて、


「いざという時は、加減をするのを止めましょうか」


 とても物騒なことを口にするのだった。


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[一言] 長良かァ……とりあえず脳筋ドラゴンに丸焼きにさせとくわ^^
[気になる点] 「よし、完成ですわ」 作り上げたのは、神社などで売られているようなお守りだ。 >> イリスが元の世界に帰ったら、自分の主人であるレインのために、こういう魔道具を作りそうですね。 [一言…
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