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170話 天使少女の現代旅行記・その21『愚かな男は消えず』

「なに? 藤堂のヤツが消えた?」


 長良亮斗。

 芹那の遠縁の親戚であり、藤堂と同じ、裏社会で大きな地位を築いた者。


 その目的は、芹那が持つ財産を奪うこと。

 そのためならば、どんな汚い手も使うことを考えている、卑劣な男だ。


 例えば……


 まだ学校に通う姪を脅して、あるいは暴力を振る。

 その上で、彼女の持つ莫大な財を奪い取る。


 そのようなことを真面目に考えるほどにクズだ。


 俺は、芹那の叔父だ。

 そして、本来ならば、芹那の父が死んだ時点で遺産を相続する権利があった。


 遺言?

 そんなものは知らない。

 1万2万ならばくれてやるが、億を超える莫大な遺産だ。

 放っておけるわけがない。

 手に入れるためならば、姪であろうとなんであろうと、やりたい放題やらせてもらうだけだ。


 そんな長良の最近の悩みは、親戚の藤堂だった。


 遠縁ではあるものの、同じ血が流れている。

 本来ならば、遺産相続の権利を持っていた。


 ただ、彼も遺言により遺産を受け取ることができなかった。


 長良と同じく、藤堂は遺産を諦めようとしない。

 芹那の後見人になることで遺産を好きにしようとしていた。


 藤堂は頭のキレる男だ。

 同時に、いざという時は暴力に訴えることを迷わない。

 ただ、それは最後の手段で、普段はスマートに物事を運ぶ。


 下手をしたら、遺産強奪レースで先を越されてしまうかと危惧していたのだけど……

 部下の報告によると、なぜか最近、芹那から手を引いたという。


 藤堂は理知的な男を装っているが、根は、長良と同じ獣だ。

 金のために暴力を振る。

 欲望を満たすために容赦はしない。


 そんな男が芹那から手を引いた?

 ありえない。

 なにかのフェイク情報だと思うものの、何度調べても同じ回答しか返ってこない。


「本当に手を引いた、というのですか……? 裏でコソコソ動き回り、けっこうな仕込みをしていたはずなのだけど。単純に手を引けば、かなりの損害になる。藤堂が、そういう損得を無視できるわけないのだけど……キミ」

「はっ」


 長良は部屋に控えている側近に声をかけた。


「藤堂が芹那から手を引いたって話は本当なのかい?」

「100パーセント絶対、とは言えませんが……調査結果と現状を考える限り、ほぼほぼ間違いないかと」

「ふむ……なにを考えていると思う?」

「私も突然のことに驚いているのですが……一つ、気になる噂があります」

「ほう?」

「ただ、あまりに荒唐無稽な噂なのですが……」

「いい、話してみなさい」


 側近は少し迷い、結局、口を開く。


「銀の悪魔が現れた、と」

「……ん?」


 藤堂は説明を求める視線を送るが、側近も困惑している様子だ。


「いえ……そういう話を聞くのですよ。藤堂の調査を進めていると」

「なんですか、それは? どんな比喩だ?」

「わかりません。凄腕の殺し屋……などでしょうか?」

「聞いたことないな。というか、芹那がそんなものを雇うわけないでしょう。金は問題ないだろうが、性格的に無理だ。そもそも伝手がないだろう」

「はい、その通りなのですが……藤堂だけではなくて、その部下も、口を揃えて言うのですよ。銀の悪魔が現れた……と」


 ばからしい、と長良は側近の報告を聞き流した。


 銀の悪魔?

 そんなものが存在するわけがない。

 なにかの比喩だろうが、そんなものが芹那に味方するわけがない。


 大方、薬で集団幻覚でも見たのだろう。

 その一方で、ヘマをやらかして警察に睨まれ、撤退せざるを得ない状況に陥った。


 真相はこんなところだろう。


「まあいい。藤堂が消えてくれるのなら、私はやりやすくなる。歓迎すべき事態だな」

「はい、その通りかと」

「準備は?」

「あと1週間ほどで」

「わかった。なら、そうだな……10日後に芹那をさらえ」


 銀の悪魔を妄言と決めつけた藤堂は、己の欲を満たすための策を始める。


 決行は10日後。

 芹那を拉致して、その体に誰が主か刻み込む。

 そして、彼女の持つ遺産を手に入れる。


 たかが女子高生。

 本物の暴力に屈しないわけがない。


 警察に根回しをしている途中だ。

 邪魔をされることもないだろう。


 もうすぐ全てが叶う。

 全てを手に入れられる。


 長良はその時を妄想して笑みを浮かべるものの……

 彼はなにも気づいていない。

 なにも理解していない。


 銀の悪魔は実在する。

 そして、長良が想像する以上の力を持ち……

 なんなら、気まぐれの一撃で長良の屋敷、全てを吹き飛ばすことができる。


 そんなものを相手にしなければいけないのだけど、長良は、まるで理解していないのだった。

◆◇◆ お知らせ ◆◇◆

再び新連載です。

『氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について』


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こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] その銀の悪魔を一撃で沈める奴がありますw ソラの料理という奴ですw
[気になる点] イリスをこの世界に転移させた”黒幕”が現在どうなっているのか。そろそろ出てきたりするのか?
[一言] この人終わったな
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