表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/231

17話 はじめてのおつかい・その1

「なあなあ、レインの旦那」


 夜。

 リビングでくつろいでいると、ふわふわとティナがやってきた。


「ちと相談があるんやけど、今、時間ええ?」

「ああ、大丈夫だ」


 読んでいた本をパタンと閉じて、近くのテーブルの上に置いた。


 ちなみに他のみんなはいない。

 もう寝てしまった。

 俺は、少しだけ夜更かしをしていただけだ。


「相談って?」

「ニーナのことなんやけど……」

「ニーナの?」


 なんだろう?

 特に問題が起きている感じはしないけど……


「ちと過保護すぎたかな……思うてな」

「過保護?」

「悪いヤツに捕まっとった、って話やろ? だから、できる限り一緒にいるようにしたんやけど、それが悪かったみたいでなー。ニーナ、なかなか一人になろうとしないねん」

「それは……悪いこと、なのか?」

「一時的なものならええんやけどな。でも、これがずっと続いたら……」

「あぁ……それは困るな」


 誰かが一緒でないとなにもできない、外へ出ることができない。

 もしかしたら、そんな風になってしまうかもしれない。


「ただ、ニーナはまだ子供やろ? 無理に一人にさせるのもちゃうかなー、思うて……でも、このままっていうのも……なあ、どないしたらええと思う?」

「うーん」


 ティナの言いたいことはよくわかった。


 ニーナに自立心を養ってほしい。

 でも、まだまだ子供なので無理はさせたくない。


 少し考えて、ちょっとしたアイディアを閃いた。


「……なら、こんなのはどうかな?」




――――――――――




「あー、しもた!」


 翌日の昼前。

 キッチンにいるティナが、ちょっとわざとらしい声をあげた。


 リビングにいるみんながキッチンを覗く。


「どうしたんだ?」

「うっかりして昼ごはんの材料買い忘れてしもうたんや。うっかりで」


 二度言わなくていいから。

 怪しまれるから。


「しもたなー、このままだと昼ごはんはスープだけになってまうなー」

「スープだけだと、私、力が出ないよー」

「あたし、ティナのごはんを楽しみにしていたのにー」


 カナデとタニアの演技がひどい。

 大根役者もいいところだ。


「せや。ニーナ、すまんけど材料を買ってきてくれへん?」

「わたし?」

「ウチ、他の仕込みがあるから手を離せないねん」


 ニーナがカナデとタニアを見た。


「ごめんねー。私、えっと、その……あの……そう! 毛づくろいをしないといけないから!」

「えっ」


 そんなことをしているの?

 ニーナがびっくりした顔に。


「あたしは……そう、近所の子供達に正しいケンカの作法を教えないといけないの!」

「えっ」


 正しいケンカの作法なんてあるの?

 ニーナがびっくりした顔に。


「え、えっと……」


 ニーナがソラとルナを見た。


「ソラは、ティナのお手伝いをしないと……」

「それだけはやめてください!!!」

「む?」

「えっと……我と姉は部屋の掃除をしないといけないのだ!」

「そう……なんだ」


 最後の希望とばかりに、ニーナがこちらを見る。


 その期待を裏切るのは心苦しいのだけど……

 でも、これはニーナに独り立ちしてもらうための作戦だ。


 みんな、適当な用事を口にして一緒に行けず……

 ニーナに一人で買い物をしてもらう。

 そうやって、色々と学んでもらおう、という企画だ。


 なので、俺の答えは……


「ごめん。俺も用事が……道具の手入れをしないといけないんだ」

「……」


 ニーナがしょんぼりとした顔に。

 寂しそうで不安そうだ。


 う……心が痛い。

 やっぱり一緒に行くよ、と言ってしまいたくなるけど……


 でもダメだ。

 ニーナのために心を鬼にしないと。


「悪いけど、ニーナ一人で行ってきてくれないかな?」

「でも……わたし」

「大丈夫。買い物のリストと、それにリンクした地図は用意したから。ニーナは、それに従って買い物をするだけでいいんだ」

「ん……」

「ダメ……かな?」


 無理に行かせることはしたくない。

 これ以上嫌がるようなら、またの機会。

 あるいは別の企画を考えるだけだ。


「……うん」


 ややあって、ニーナは小さく頷いた。


「みんなの、ごはんのため……がん、ばる」

「そっか……うん。ありがとう、ニーナ」


 不安なはずなのに。

 怖いはずなのに。

 でも、みんなのためにがんばってくれると言う。

 その優しさこそがニーナの強さのような気がした。

読んでいただき、ありがとうございます!


<読者の皆様へのお願い>

「面白い!」「続きが気になる!」「更新をがんばってほしい!」

などなど思って頂けたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!


評価はページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップすると付けることができます。

ポイントを頂けるとやる気が湧いて、長く続けようとがんばれるのです……!


これからも楽しい物語を書いていきたいと思います、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
純粋なニーナを騙し···ウグッ(大ダメージ) でも···そこがカワイイッ(遺言)
[気になる点] ダメ押し感にも限度というものが、、、だがそれがよき(´∀`=)
[良い点] 某番組から「だ〜れ〜にも〜ないしょで〜♪」というBGMをつけて行きましょうかね?? 題して「ニーナ、はじめてのおつかい」 投稿者さん、さてはあの某番組から参考にしましたね??
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ