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141話 運動会・その5

「くっ……なによこれ!?」


 爆撃の中、タニアは必死に耐えていた。


 最強種なので防御力は高い。

 そこらの人間が使う魔法で、竜族の装甲を貫くことはできない。


 が。


 至近距離で魔法が炸裂したら、衝撃波がビリビリとして痛い。

 爆風が舞い上がり、せっかく綺麗にセットした髪が乱れてしまう。


「これが『障害』だっていうわけ!? 考えたヤツ、頭おかしいでしょ!」


 文句を口にしつつも、タニアは前に進む。


 どのようなものであれ、一度参加した以上、竜族のプライドにかけて負けるわけにはいかない。


「ぎゃあああああっ!?」

「ひぃいいいいい!」

「や、やめてっ……うわあああああ!!!」


 あちらこちらから悲鳴が聞こえてきた。

 ついでに、おもちゃのように人間が空高く舞い上がるのが見えた。


 おかしい。

 人間の運動会に参加していたはずなのだけど……

 これは、魔族が娯楽で行う人間の処刑大会なのだろうか?


 わりと真面目に、本気に、タニアはそんなことを考えた。


「あらあら、大変ですね」


 ライバルのスズは、にっこり笑顔を崩さないまま、前に進んでいた。


 地雷が爆発した。

 しかし、スズは爆風が広がるよりも先に範囲外に駆けてしまう。


 落とし穴が炸裂した。

 しかし、スズは空中を走る。


 空から攻撃魔法が降ってきた。

 しかし、スズは虫を払うような感じて、えいっ、と手で払う。


 それを見て、タニアは戦慄した。


「いやいやいや、おかしいでしょ!?」


 スズのデタラメな身体能力は知っているつもりでいたが……

 地雷も落とし穴も無効化してしまうなんて、さすがに予想外だ。


 あと、魔法。

 猫霊族は魔法に弱いはずなのだけど……

 そんなことはないのでは?

 むしろ、ものすごい耐性を持っているのでは?


 スズを見ていると、ついついそんなことを思ってしまう。


「くっ、負けていられないわ!」


 タニアは急いで後を追いかけようとして、


「た、タニアの姐さん……」

「助けてくだせえ……」

「あんた達!?」


 タニアを姐さんと慕う冒険者がボロボロになっていた。

 彼らも運動会に参加していたようだ。


「お、俺達、もう動けなくて……」

「ここにいたら、死んでしまいます……た、助けてっ」

「あんた達……」


 二人の冒険者がタニアの足にしがみついた。

 海の荒波の中、たった一つ浮かぶ木片にすがる……そんなことを思わせる光景だ。


 そうして、タニアは……


「うっさいわね! あたしは負けられないのよっ、邪魔しないで!」

「「ぎゃあああああ!?」」


 容赦なく蹴り飛ばした。


『おおっと! 裏切りだ、裏切りが出ました! なんて醜いのでしょうかっ、なんて恐ろしいのでしょうかっ。これこそが、人間の本性が出る障害物競走! 恐るべし!』

「恐ろしいのは運営の頭よ!」


 タニアは全力でツッコミを入れつつ、スズを追いかけた。


 スズはありとあらゆる障害物をものともせず突き進んでいる。

 ただ、さすがに全速力は維持できていない。

 先の徒競走の疲労もあり、なんとかタニアは追いつくことができた。


「待ちなさい! そのまま、勝ち逃げなんてさせないんだから!」

「ふふっ、元気がいいですね。いいですよ。その挑戦、しっかりと受け止めて……あら?」


 ふと、スズの視線が明後日の方向に。

 タニアも追いかけると……


 ガシャン、ガシャン、ガション!


 巨大な山を思わせる、巨大ゴーレムが現れた。


『さぁっ、最後の障害物が現れた! 職人達が力を合わせて、三週間、徹夜で作り上げた叡智の結集! ホライズンの象徴となる、キリングマシーン。ジェノサイドゴーレムだぁあああああ! 果たして、この障害を突破できるのでしょうか!?』

「「なにそれ!?」」


 あまりといえばあまりの展開に、さすがのスズもツッコミを入れてしまうのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] いや、だから・・読者達が思ってる障害物競争じゃないんですよ、作者様・・。 というか、こんなもの作れるんなら、先のティナが仲間になる前の異変住民達で解决出来たんじゃなかろうか??
[一言] >「うっさいわね! あたしは負けられないのよっ、邪魔しないで!」 >「「ぎゃあああああ!?」」 ぶははははw 脳筋ドラゴンに助けを乞うからこうなるのだw
[気になる点] 爆撃の中、タニアは必死に耐えていた。 最強種なので防御力は高い。そこらの人間が使う魔法で、竜族の装甲を貫くことはできない。 >> タニアとスズさん自身なら大丈夫かもしれないんですが・・…
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