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14話 そうだ、キャンプに行こう・その6

 日が暮れ始め、空が赤に染まり始めた。

 彼方を見ると、太陽がゆっくりと山の向こうに隠れていく。


「街で見る夕日も綺麗だけど、こうして自然の中にいると、また違った印象を抱くわね」

「うむ、とても趣があるのだ!」

「きれ、い」


 色々とあったものの……

 みんな、やっと自然に目を向けてくれるようになった。


 うん。

 これこそがキャンプだよな。


「レインの旦那、すまんけど、もう少し炭を足してくれん?」

「了解」


 俺とティナはバーベキューの準備をする。


 まずはコンロだ。

 テーブルのように大きなコンロに炭を敷き詰めていく。


 均等というわけではなくて、右から左へ行くほど炭の量が多い。

 これで火力を調整する、というわけだ。


 一気に焼きたいときは左側で。

 ある程度焼けてきたり、じっくり火を通したい時は右側で。

 バーベキューをやる時はよくこうしている。


 それから食材の下ごしらえ。


 あらかじめ用意しておいた串に、肉と野菜を交互に挿していく。

 肉だけだと、野菜を食べなさそうなメンバーがいるからなあ……


 カナデが釣ってきた魚も捌いて、内蔵を取り出して、ヒレなどを落とす。

 こちらも串に刺して、軽く塩を振っておいた。


 それからフランクフルトにステーキ。

 まるごとの玉ねぎやにんにく。

 肉と野菜に魚……それと、エール。


「うん、準備完了」

「完璧やな」


 にこりと笑い、ティナと拳をこんと軽くぶつける。


「みんなー、バーベキューの準備ができたぞー」

「やっほー♪」

「ふふん、全部食べ尽くしてあげるわ!」

「そんなことはさせないのだ!」

「バーベキューは初めてなので、とても楽しみです」

「おいしそう、な……匂い」


 みんな、子供のように目をキラキラと輝かせていた。


 ……って、ニーナは子供か。


「みんな、準備はいいか?」


 バーベキューのコンロを囲み、それぞれエールを持つ。


 一応、ニーナもエールだ。

 厳密に言うと、人間じゃなくて最強種だから、アルコールの年齢制限はない。

 それに最強種なので、子供から酒を飲んでも問題はない。


「じゃあ……バーベキューを食べてエールを飲んで、おいしいごはんを楽しもう。乾杯!」

「「「かんぱーい!!!」」」


 ニーナを除いて、みんなエールを一気に飲み干した。

 すかさずにティナがみんなのところを回る。


「ほいほい、おかわりはたくさんあるでー」

「ありがとー!」


 ティナのかたわらに、エールが入った樽が浮いている。

 ちょいと指先を傾けると樽も傾いて、おかわりが注がれていく。


「おぉー! この野菜、めっちゃうまいのだ!」

「本当ですね。これ、味付けはどうしているんですか?」

「シンプルに塩だけやで」

「それだけでこんなにおいしくなるんですか?」

「素材がええからなー。実はこれ、一部は家庭栽培したヤツなんや」

「おぉ、家庭栽培!」

「ウチが丹精込めて育てたからなー。おいしく食べてーな」


 ソラとルナは野菜に目を輝かせて、


「お肉! お肉!」

「んーっ、口の中でとろけるわ!」


 カナデとタニアは肉に目を輝かせていた。

 串焼き、フランクフルト、ステーキ……次々と口に運んでいく。


 すかさずティナが追加の肉をコンロに乗せて……

 それも、ほどなくしたところでカナデとタニアの胃の中に消えて……


「はむはむはむっ!」

「ぱくぱくぱくっ!」

「ほいほいほいっ!」


 食べるのが先か焼くのが先か。

 よくわからないレースが展開されていた。


「んー……」


 そんな中、ニーナはちょっと困った顔に。

 エールはちびちびと飲んでいるものの、まだなにも食べていないみたいだ。


「どうしたんだ、ニーナ? 食べないのか?」

「お腹、空いた……けど」


 ニーナはコンロの上で焼かれている肉に手を伸ばそうとした。

 しかし、その瞬間、肉の脂で勢いよく炎が湧き上がる。


 ビクッ、とニーナが震えた。


 そうだよな。

 ニーナは背が低いしまだ子供だから、ちょっと怖いよな。


「ごめんな、ニーナ。気づけなくて」

「ううん……だい、じょうぶ」

「ニーナはなにが食べたい?」

「えっと、えっと……お肉」

「了解、肉だな」


 ほどよく焼けたステーキを取り、一口サイズに切り分けた。

 それを箸で持ち、ニーナの口元へ。


「はい、あーん」

「あーん」


 ぱくり、とニーナが肉を食べる。

 なんだか雛にエサをやる親鳥になった気分だ。


「ふわぁ」

「おいしいか?」

「うん、おいしい」


 ニーナがにっこりと笑う。

 そして、再び口をあーんと開ける。


「おかわり、ほしい」

「オッケー。また肉でいいか?」

「うん」

「それじゃあ……うわっ!?」

「「「じーっ」」」


 おかわりの肉を取ろうとしたところで、みんなの視線に気がついた。

 物欲しそうというか羨ましそうというか……

 そんな感じで、じっと俺とニーナを見ている。


「えっと……」

「「「じーっ」」」

「……みんなも、食べたいものはあるか?」


 結局、みんなの圧に押されるかのように、俺もお世話係に回るのだった。

読んでいただき、ありがとうございます!


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◇◆◇ お知らせ ◇◆◇
既存の作品を大幅にリファインして、新作を書いてみました。

娘に『パパうざい!』と追放された父親ですが、辺境でも全力で親ばかをします!

こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

― 新着の感想 ―
(;´Д`)ハァハァニーナチャンカワイイy(その後、彼の行方を知るものはいなかった···)
[一言] ぶっちゃけエールに含有されたアルコールごときが最強種の肉体をなんとかできるとは思わん(ただしマタタビを除く) 、、、アイルーをみたら嬉々として閃光玉を投げつける身体になってしまった小生からは…
[一言] >「えっと……」 >「「「じーっ」」」 >「……みんなも、食べたいものはあるか?」 ソラの料理でも食わせておくのだw ってなんで皆して石を投げつけぎゃあああああああああああ!!!><
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