131話 人狼ゲーム・その4
三回戦、四回戦と数を重ねて、みんな、ルールを覚えるだけではなくて、立ち回りも理解したようだった。
三回戦は人狼サイドの勝ち。
巧みに正体を隠しつつ、疑惑の目を村人に向けて逃げて……
見事な勝利を掴み取っていた。
ただ、四回戦は村人サイドの勝ち。
三回戦の反省を活かして、最初から果敢に攻めていた。
推理に推理を重ねて。
矛盾があれば、決してそれを見逃すことはない。
徹底的な追求を行い、人狼をあぶり出して、見事に勝利を掴み取ったのだ。
そして、迎えた五回戦。
時間を考えると、これがラストだろう。
「では、カードをお配りいたします」
コハネによって、配役が書かれたカードが配られた。
俺は……恋人だ。
そこそこ重要な役だ。
みんなの配役は……
「「「……」」」
ちらりとみんなの表情を伺うけど、妙なところはない。
一回戦だと、わりと表情に出ていたのだけど、数を重ねたことで、さすがにそんなミスは犯さなくなっているようだ。
「みなさま、準備はよろしいでしょうか?」
「「「……」」」
「では、人狼ゲーム、五回戦を始めたいと思います。推理時間は10分……スタートでございます」
みんなの視線が交差して、バチバチっと火花が散ったような気がした。
本気だ。
たかがゲームと侮ることはない。
この一戦に勝負を賭けるという、強い意気込みが伝わってきた。
「まず最初に……わたくしとレインさまは恋人ですわ♪」
「「「っ!?!?!?」」」
イリスは、にっこりと言い放つ。
みんなは、そんなバカな!? という感じで、とても驚いていた。
「なので、わたくしとレインさまは村人ですわ。そう、恋人なのですからね。愛を誓い、将来、結ばれることが約束された恋人なのですから。ふふふ、うふふふ♪」
イリスはとても嬉しそうにして、
「「「ぐぎぎぎっ!!!」」」
カナデ達は、とても悔しそうにした。
ギロリと睨んでいる。
いや、待て。
カナデ達がどちらサイドなのかわからないけど、村人だとしたら、イリスは味方だ。
味方を睨みつけてどうする?
「イリス、許さないにゃ……」
「後で、あたしのブレスで燃やす……」
「えっと……ま、魔法使いは誰なんだ?」
話が妙な方向に流れていきそうだったので、慌てて修正を試みた。
「「はい」」
ソラとルナが手を上げた。
すぐにその事実に気がついて、双子は互いを睨む。
「なっ……ルナ、あなたも手を挙げるということは、あなたがバーサーカーなのですか?」
「それは我の台詞なのだ。我は、魔法使い。故に、姉がバーサーカーなのだ」
「むっ」
「むむむっ」
正体を現せ、というかのように睨み合う二人。
他に挙手する人がいない以上、ソラとルナ、どちらかが魔法使いでどちらかがバーサーカーであることは確定だろう。
ここで、さらに正体を伏せる意味はない。
「ひとまず、二人が占った相手と結果を教えてくれへん?」
「ソラは、フィーニアを占いました。結果、フィーニアは村人でした」
「我は、カナデを占ったのだ。なんと、カナデは村人であった」
「意味深に言わないで……!」
ルナが妙な脚色をしていたせいで、カナデがぷるぷると震えていた。
「ふむ」
ソラとルナ、どちらかが魔法使いで、どちらかがバーサーカー。
そして、カナデとフィーニアを村人と言う。
「わふー。ソラとルナも怪しいけど……」
「カナデとフィーニアも怪しい」
リファのジト目が二人に向けられた。
カナデが慌てる。
「えっ、なんで!?」
「ソラさまとルナさま、どちらかがバーサーカーであることは確定です。バーサーカーは人狼サイド。故に、人狼なのに村人である、という嘘を吐く可能性は高いと思われます」
コハネが丁寧に解説をしてくれた。
「どう、するの……?」
「普通に考えて、可能性が高いのはカナデかフィーニアやな」
「わふ? ソラとルナは?」
「どちらかがバーサーカーであることは確定ですが、しかし、一方が魔法使いであることも確定ですわ。それがわからずに吊ると、下手をしたら魔法使いを吊ってしまうことになりかねませんわ」
「にゃるほど。情報が足りないから、まだ二人は放置するしかない、ってことだね」
イリスの言う通りだ。
まだ、ソラとルナに手を出せない。
吊る対象は、カナデとフィーニア。
ソラとルナ。
それと、俺とイリス以外になる。
「人狼候補は……タニア、ティナ、ニーナ、サクラ、ライハ。この五人だな」
「いや、それはあかんで。バーサーカーの狂言もあるやろうから、カナデとフィーニアも犯人候補や」
「そうだけど……その二人が、両方共人狼っていう可能性はないだろ?」
バーサーカーなら、あえて人狼に触れるようなことはしない。
「あったとしても、どちらか一人。もしかしたら、どちらも村人かもしれない。なら、今は候補から外しておいた方がいいと思うんだ。当たる確率は低いからな」
「あー……それもそやな」
「なら、五人から選ぶ?」
リファが小首を傾げた。
みんな、異論はないらしく、その言葉を受け入れる。
「誰が人狼っすかね? 確率としては、五分のニっすけど……」
「あたしは違うわよ?」
「ウチも違うでー」
「違う、よ?」
「わふー!」
こうなると、みんな怪しく見えてしまう。
ただ、最初のターンなので、まだ情報が足りない。
「仕方ない。とりあえず、この五人からランダムで選ぼう。情報が足りないから、それしかない」
「なら、私が選んでもいい?」
「カナデが? えっと……」
みんなを見ると、問題ないという様子で頷いた。
「じゃあ、選ぶね。最初に吊るのは……タニアだよ!」
「なんでよ!?」