130話 人狼ゲーム・その3
「では、二回戦を始めます。カードはランダムでお配りしているため、配役が先程と同じ、ということもありますので、ご了承くださいませ」
そんな説明を受けつつ、カードを確認。
今度は『村人』だ。
特殊能力はない。
ただ、俺の持つ一票が誰かを吊ることに繋がってくる。
特殊能力がなかったとしても、わりと大事なのだ。
「では、今から5分、推理を重ねてくださいませ。スタートです」
コハネの合図で二回戦が始まる。
「えっと……今度こそ、俺は村人なんだけど」
「本当に?」
「嘘を吐いたら、姉の料理を食べさせるのだ」
「誓って」
心の底からの言葉が出た。
「まず、魔法使いを確認しておこうか。魔法使いは?」
「「「……」」」
なぜか沈黙。
ややあって、
「はい」
リファが手を挙げた。
なんだろう?
反応まで、間があったのが気になるんだけど……
「ボク、魔法使い。サクラを占ったら、人狼だったよ」
「わふっ!?」
サクラの尻尾がピーンと立つ。
慌てた様子で手を横に振る。
「ぼく、違うよ!? 狼……あう、狼だけど、狼じゃないよ!?」
「にゃん?」
「サクラさんは呀狼族ですが、人狼ではないと言いたいのでしょう」
「にゃるほど」
ちょっと紛らわしいかもな。
「でも、リファが占ったのよね? 否定しても無駄じゃない」
「わふ、本当に違う……」
「異議あり!」
割り込んできたのは、ルナだ。
ビシッと、リファを指刺す。
「我こそが本当の魔法使いなのだ!」
「「「え?」」」
「リファは偽物! 我こそが本物! そして、我の占いでは、タニアが人狼と判明したのだ!」
「魔法使い……二人?」
「ど、どどど、どういうことでしょうか……?」
基本的に、嘘を吐くことは可能だけど、他者のロールを名乗ることは禁止されている。
たった一つのロールを除いて。
「リファかルナ。どちらかが魔法使いで……そして、もう一方がバーサーカーだろうな」
「にゃるほど」
「カナデさん、さっきから、なるほど、しか言ってないではありませんか。もう少し考えてくださいませ」
「か、考えているよ!?」
その証拠に、カナデの頭からちょっと煙が出ていた。
知恵熱かな?
「むぅ、どちらが偽物でしょうか? ソラにはわかりません」
「二人に質問を集中させて方がええかもな」
「リファ、は……どうして、サクラを……占った、の?」
ニーナが静かに問いかけた。
その純粋な瞳を見れば、世の中の罪人は良心の呵責に苛まれて自白してしまいそうだけど、メンタルの強いリファには通用しない。
「サクラがソワソワしてたから」
「し、してないよ? ボク、そんなことしてないよ?」
「ウソ。してた」
断言するリファ。
慌てるサクラ。
慌てているのは、無実の罪を着せられそうになっているからなのか。
それとも、犯人だからなのか。
「ルナは、どうしてあたしを占ったのよ?」
「特に理由はないぞ。勘なのだ」
「ふーん……なら、最初に魔法使いだ、って名乗りでなかったのは? リファの後に、慌てて名乗り出たのは?」
「え?」
ルナが、ぎくりというような顔に。
「ルールを考えると、普通、最初に名乗り出るでしょ? それなのに、なんで名乗り出なかったのかしら?」
「そ、それは……」
「リファの占いが当たっているから、慌ててごまかそうとして、名乗りでたように見えたんだけど」
「ち、違うのだ!? 我はただ、さっきの回で、真っ先に魔法使いが狙われていたから、名乗り出ては危ないと思い……」
「チーム戦なんだから、ルナが死んでも問題はないわ。少しでもヒントを残すのが役目じゃない」
「そ、それはそうかもしれぬが……」
「そもそも、誰か知らないけど冒険者がいるわ。普通に考えて、魔法使いは冒険者に守ってもらえる。なら、名乗り出ない理由はない」
「あ、うううぅ……」
「後から名乗り出たのは、ルナがバーサーカーで場を混乱させようとしたから……ふふんっ、これで決まりね」
「……」
タニアの推理に、ルナは反論できない様子で、がくりとうなだれた。
犯人は決定だ。
これで、人狼を一人減らすことができるのだけど……
なんか腑に落ちないような?
ルナだったら、もっとまともな言い訳ができるはずなんだけど……
でも、違和感を確かな言葉にすることはできず、そのままターン終了。
ルナが吊るされることが決定して……
――――――――――
「……人狼の襲撃により、村は滅んでしまいました。人狼側の勝利です」
「やったわ!」
「うぇーい」
タニアとニーナ、それとリファがハイタッチ。
タニアとニーナが人狼。
そして、リファがバーサーカーという結末に。
「にゃにそれ!?」
「ルナは、本当に魔法使いだったんですか!?」
「だから言ったではないか! 我は魔法使いだ、と!」
「だったら、なんであんな紛らわしい真似をしたんや? あれでウチ、ルナを思い切り怪しんだで?」
「狙われたくなかったのだー! 吊るされたくなかったのだー!」
妙に考えすぎてしまった結果、味方からの不信を招いて、敵の思う通りに動かされてしまい……
教訓。
考え過ぎもほどほどにしましょう。