129話 人狼ゲーム・その2
「「「……」」」
人狼ゲームが開始されるけれど、みんな、一言も発しない。
誰が仲間で誰が敵なのか?
疑心暗鬼に囚われて、うまく動くことができないのだろう。
ただ、この状態だとゲームが進まない。
経験者の俺が動かすべきか。
「あー……もちろん、俺は村人なんだけど、魔法使いは誰なんだ?」
しれっと嘘を吐きつつ、場を動かしていく。
「はいはい、私だよ!」
「カナデが魔法使い……不安ね」
「うん、不安」
「タニアとリファのその反応はどういう意味かな!?」
「あ、安心してくだしゃい、カナデしゃん! 魔法使いが似合わなくても、わ、ワタシは応援していましゅ!」
「それ、フォローになっていないよ!?」
むしろ、追い打ちかもしれない。
「まったくもう……とにかく、私は魔法使いで、イリスを占ったよ。イリスはシロ!」
「なぜ、真っ先にわたくしが占われるのか、そこを小一時間ほど問い詰めたいですわ」
日頃の行いかな?
「恋人は?」
「うちと」
「わたし」
ティナとニーナが挙手した。
「ふふ、うちがニーナの恋人かぁ……それはそれで悪くないな」
「ティナは……好き」
「ほぅ!? そ、そんな破壊力あること言われたら、うち……!!!」
「ふぇ?」
良いコンビかもしれないけど、でも、ティナの反応がちょっと不穏だ。
「ふむ」
現時点の情報をまとめよう。
カナデが魔法使いで、イリスを占ったけれど、シロ。
ティナとニーナが恋人。
この情報が正しいとしたら、人狼候補は、タニア、ソラ、ルナ、リファ、フィーニア、サクラ、ライハ。
ちなみに、俺は人狼なので相方を知っている。
相方の正体がバレないように、誘導してみるか。
「人狼を突き止めるには、ちょっと情報が足りないな」
「そうですね……このような時は、どうするんですか?」
「ロールがもっとあれば色々とやりようはあるんだけど……正直、最初はどうしようもないかな。怪しいと思う人を吊るしかない」
「怪しい人……」
俺の言葉に反応して、カナデがイリスを見た。
みんなもイリスを見た。
「なぜそこでわたくしを見るのですか!? しかも、みなさん一斉に!?」
「だって、イリスは怪しいから」
「そうね、怪しいわ」
「うさんくさいのだ!」
「うぅ……わたくしの以前の行いが、こうさせているのでしょうか。悲しいですわ……」
「よし、よし」
凹むイリス。
そんな彼女の頭を撫でて、慰めるニーナ。
推理どころじゃない。
「ま、まあまあ。根拠のない推理はやめよう。誰か一人、吊らないといけないけど、なにかしらの推測は立てておかないと」
「それもそうだね。んー……」
カナデがみんなをぐるりと見回した。
「……っ……」
ライハがびくりと震えた。
カナデの視線が止まる。
「……」
「……」
じーっと見つめるカナデ。
ダラダラと汗を流すライハ。
ああ、もう……
なんて素直な反応。
さすがに、これじゃあかばいきれない。
「ライハが怪しいよ!」
「そ、そそそ、そんなことはないっす! じ、自分が人狼? ハハハ、笑っちゃうっす」
「怪しい」
「うん、あやしい!」
リファとサクラにも追従されてしまう。
ライハは、顔を青くして、手をぱたぱたと横に振る。
「ち、違うっすよ!? 自分は、本当に人狼なんかじゃないっす! 魔法使いのカナデを、真っ先に狙おうとか、そんなこと考えていないっす!」
「ふっ、語るに落ちたとはこのことなのだ」
「どうやら、これ以上、議論する必要はなさそうやな」
「そ、そんなぁ……」
ライハががくりとうなだれた。
そこでタイムアップ。
「では、時間になりました。今日、吊る者を指定してくださいませ」
「「「ライハ!」」」
ライハを除いて、みんながライハを指名した。
……俺も。
いや、仕方ないだろう?
ここでライハをかばったりすると、俺も疑いの目を向けられてしまう。
「あ、アニキ、どうして……」
でも、ライハはその考えに至らなかったらしく、非常にショックを受けた様子だった。
って、そういう反応がダメだから!
そんなことをしたら……
「む? 今のライハの発言、気になりますね」
「まるで、レインに見捨てられたような……」
「ほほう。そんな反応を示すということは、つまり……」
……終わった。
ライハの素直すぎるところがマイナスになってしまった。
まず、初回でライハが吊られ……
続けて、俺が吊られ、村人側の勝利。
一回戦は、わりとあっけなく決着がついてしまうのだった。