13話 そうだ、キャンプに行こう・その5
ソラとルナはどうしているかな? と、テントを張っておいた場所へ戻る。
「……これが秘密の品なのだ」
「……ふふ、あなたも悪ですね」
なにやら不穏な会話が。
今の声は、ソラとルナだけど……
というか、ルナは昼寝をしていたと思ったんだけど、起きていたのか?
「おー……」
「おぉ、これは素晴らしいのだ!」
「ですね。みんなやレインには、とても見せられませんね」
再び不穏な会話が聞こえてきて、ついつい、声をかけるタイミングを失ってしまう。
二人はなにをしているんだろう?
もしかして、なにか危ない真似を……?
ソラとルナに限ってそんなことはないと思うのだけど……
でも、ルナはトラブルメーカーの側面もあるから、もしかして? と疑ってしまう。
足音と気配を殺して、そっと近づいていく。
「なるほど……ルナのオススメというだけあって、普通におもしろいですね」
「姉よ。普通に、というのは褒め言葉なのか?」
「そうですよ。てっきり、とんでもないキワモノが出てくるのではないかと……」
「それはそれで面白そうなのだ」
「……ルナ……」
「そ、そんなことはしていないのだ。やめたのだ。だから、魔法を放とうとするのはやめてください」
「まったく……」
「とにかく、この作品を堪能しようではないか」
「そうですね。じっくり読むことにしましょう」
どうやら、二人で読書をしているみたいだ。
雄大な自然に囲まれて、緑の匂いを感じて。
ささやかな風で揺れる半目。
その中でのんびりとする読書は最高だろう。
きっと二人は最高にリラックスして……
「おぉおおお、こ、これは……」
「こ、興奮してしまいますね……」
なんで?
読書をしているはずなのに、その反応はおかしいだろう。
どういうことだろうと、もう少し、聞き耳を立てる。
「まさか、人間がこのような作品を書くなんて……」
「なかなか侮れないですね」
「見ろ、姉よ。ここの描写はねっとりしてて、我の心にストレートに突き刺さるのだ」
「ただ艶があるだけではありませんよ。品もあって、続きが気になります」
「ふっふっふ……今日のために、全巻揃えておいたのだ」
「やりますね、ルナ」
「レインもみんなもいないし、こういう時でないと思い切り堪能できないからな」
「そうですね」
「おぉ!? この展開は」
「これは!? この展開は」
「「……ごくり……」」
なにやら不穏というか……
不安?
そんな感じの話を続けている。
いったい、二人はどんな本を読んでいるのだろう?
「あっ」
強い風が吹いて、なにやら薄いものがこちらへ飛んできた。
「これは……本なのか?」
とても薄く大きいけれど、本みたいだ。
表紙は、美形の男性が二人、描かれている。
「れ、れれれ、レイン!?」
「ど、どうしてここにいるのだ!?」
本を追いかけてきたらしいソラとルナが、ものすごく驚いていた。
「えっと……みんなでキャンプに来ているんだから、俺がここにいるのは当然だろう?」
「そ、それはそうですが、今はカナデとタニアのところに行っているのかと……」
「そ、それよりもレイン。その本を返してほしいのだ」
二人の視線が、俺が持つ薄い本に集中した。
よくわからないけど、とても必死だ。
「えっと……はい」
よくわからないままだけど、二人のものなら返すのが当然。
俺は薄い本を差し出した。
ソラとルナは、ほっとした様子で薄い本を受け取ろうとして……
そこに風のいたずらが。
「「「あっ」」」
薄い本が地面に落ちてしまう。
その拍子に本が開いて……
「……え?」
半裸の男性が二人……なんていうか、えっと……
まあ、そんな感じの内容が描かれていた。
どんな感じ?
そんな感じだ。
「あわわわわわ!?」
ソラがぐるぐると目を回して、ものすごく慌てる。
「これはあのっ、なんていうかそのっ、ともすればあのっ……!?」
「わ、我らは知的探究心に基づいて、人間の神秘を学び……!?」
「……ソラ、ルナ」
とりあえず薄い本を没収。
「こういうのを読むなとは言わないが、ニーナもいるんだから、時と場所を考えないと」
「「……はい……」」
「あと……せっかくのキャンプなんだから、別の本がいいかもな」
「「……もっともです……」」
「そんなわけで、これはキャンプが終わるまで没収だ」
「「あぁ、そんな!?」」
「それと……」
「それと?」
それ以上はなにも言わず、俺は二人の後ろを指差した。
ソラとルナはなにかを察したらしく、顔を引きつらせる。
そんな二人の肩を、ぽんぽん、と叩く者。
それは……
「ちと話があるでー」
「「ひぃ!?」」
ティナに連れていかれ、説教をされてしまうソラとルナだった。
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