120話 私立ビーストテイマー学園・その15
残念な空模様。
しとしとと雨が降っていて、まとわりつくような湿気に襲われていた。
「おはにゃー」
「おはよう」
カナデが登校してきた。
ただ、元気がない様子で、席につくとぐったりとしてしまう。
「大丈夫か? もしかして、体調が悪いとか?」
「ううん、そんなことはないよ。ただ、梅雨で雨が続いているから、気分が……」
「ああ、なるほど」
「それに、湿気のせいで、私の自慢の尻尾もこんなになっちゃって」
カナデが尻尾をくるっと回してきた。
「ね?」
「ね、と言われても……いつも通り、すごく綺麗な尻尾に見えるけど」
「にゃっ!?」
カナデがびくっと震えて、慌てて尻尾をひっこめた。
「……レインって、そういうところあるよね」
「どういうところ?」
「なんでもない」
「?」
「それよりも、今日、遊びに行かない? 梅雨のじめじめ感を吹き飛ばすように、ぱーっと!」
「おっ、いいなそれ!」
話を聞いていたらしく、アクスが乗ってきた。
「でしょ? アクスもそう思うよね」
「ああ。こういう時は遊ぶに限るぜ!」
「気持ちはわからないでもないが……二人は、勉強をしなくていいのか?」
「「勉強? なんで?」」
勉強ナニソレ?
という感じで、二人は揃って首を傾げた。
こういうところはそっくりだ。
「もうすぐ中間テストだけど」
「「……」」
沈黙。
そして、
「「あぁっ!?」」
悲鳴。
どうやら、二人は中間テストのことを完全に忘れていたらしい。
――――――――――
放課後。
「さすがに、ちょっと狭いかな?」
俺、カナデ、タニア、ソラ、ルナ。
ニーナ、リファ、イリス。
フィーニア、サクラ、ライハ。
そして、アクスとユウキとセル。
飼育部の部室を使って勉強会を開くことになった。
人数が多いけど、どうにかこうにか収まることができた。
「ニーナ、ソラ、ルナ、フィーニア、サクラ、ライハはセットで。初等部はニーナだけだから、誰か、ちゃんと教えてあげてほしい」
「うむ、我に任せるのだ!」
「任せてください」
こういう時、ルナとソラは頼もしい。
「残りは高等部メンバーだから、こっちにまとまろう。あ、中等部メンバーは、なにかわからないところがあったら遠慮なく聞いてくれ。そのために、一緒に勉強をするわけだからな」
「なら、アニキ。ここから、ここまでの問題なんですけど……」
「ちょっとライハ、それ、全部じゃない」
「てへ」
「てへ、じゃないわよ! 最初は自分で考える! それで、どうしてもダメなら聞く! いい!?」
「はいっす!?」
タニアに一喝されて、ライハは慌てて自分の席に戻った。
それから勉強会が始まる。
教科書とノートと睨み合い、知識を頭に叩き込んでいく。
「んー……」
こうして、放課後に勉強をするのは久しぶりだ。
授業はちゃんと聞いているつもりだけど、忘れているところも多く、時折、ペンが止まってしまう。
それでも集中して、2時間ほど勉強を続けて……
「あー……もうダメだ」
アクスが最初に根を上げた。
「アクス、しっかりしなさい。まだ2時間よ」
「もう2時間だろ。委員長は、ほんと、勉強が得意だよな……」
「得意不得意の問題じゃなくて、集中力の問題よ」
「ゲームなら集中力抜群なんだけどな……」
「ふふ。でしたら、みなさんでゲームをいたしませんか?」
ふと、イリスがそんなことを言い出した。
「にゃー。イリス、ダメだよ。私達は今、勉強中なんだから」
「ですが、適度な休憩は必要ですわ。集中力が持続する時間には限りがありますからね」「それは、まあ……」
「少し遊んで、気晴らしをした方が効率がいいですわよ」
「えっと……委員長」
「はぁ、仕方ないわね」
セルの許可が降りたので、みんな、ペンから手を離した。
「それで、ゲームってなにをするんですか?」
「ふふ。とてもとても素敵で楽しいゲームですわ♪」
イリスは、にっこりと笑いつつ、そう言うものの……
なんだろう。
とても嫌な予感がした。




