12話 そうだ、キャンプに行こう・その4
カナデとタニアはどうしているかな?
ふと気になり、川の上流へ向かう。
ほどなくして釣り竿を垂らすカナデとタニアが見えてきた。
「にゃふ~♪」
カナデは上機嫌で、にこにこ笑顔だ。
その理由は、彼女の足元に置かれているバケツ。
かなり大きいバケツなのだけど、それがいっぱいになってあふれるくらい、魚で埋め尽くされていた。
大漁だ。
「……」
一方のタニアはジト目だ。
射殺すような視線を川面に向けていて、不機嫌なオーラを放っている。
彼女の足元にあるバケツは……空だ。
「あー……」
なんて声をかけていいかわからなくなってしまう。
「……」
迷っていると、タニアが無言でスッと釣り竿を脇に置いた。
そして魔力を練り上げて、口先に炎を……
「待て待て待て!?」
「なによ、レイン! 止めないでよ!?」
「止めるに決まっているだろう!」
魚が釣れないからって、ドラゴンブレスで川を吹き飛ばそうとするな!
「だって、ぜんぜん釣れないんだもの……」
唇を尖らせて拗ねるタニア。
こんな態度は珍しいから、よほどイライラしていたのだろう。
「なら、別の遊びをしないか?」
「別の?」
「にゃにそれ?」
カナデも興味を持ったらしく、釣り竿を置いてこちらへ。
バケツいっぱいに釣ったから、もう満足したのだろう。
彼女の場合、食べることが目的だから、釣ることはわりとどうでもいいのだろう。
「単純だけど、水切りなんてどうだ?」
「「水切り?」」
二人共、水切りを知らないらしい。
「こうやって平たい石を探して、それを水面に向かって……こうっ!」
半円を描くようにしつつ、石を水平に投げた。
石は回転しつつ低い軌道で飛んで……
水面に当たると、ポンポンポンと何度もバウンドして、波紋を残していく。
ほどなくして勢いを失い、ぽちゃりと沈む。
「これが水切りだ」
「「おぉー!」」
二人は目をキラキラと輝かせた。
水切りなんて子供の遊びだけど……
二人は最強種だから、こういう遊びはしたことがなかったのかもしれない。
うん、気持ちはよくわかる。
石が水面を跳ねていくところ、見ていて気持ちがいいというか、爽快なんだよな。
だから子供は夢中になるし……
大人でもハマり、その道を追求する人もいる。
「私、やる!」
「あたしも!」
「よし。じゃあ、まずは石を探そう。どれでもいいっていうわけじゃなくて、なるべく平たくて丸い石がいいぞ」
「石、石、石……うーん、なかなかいいのがないね」
「ないなら作ればいいのよ。てい!」
タニアは拳大の石を叩き割り……
さらに手刀で形を綺麗に整えた。
いや、あの……
石はそこらにあるものを選ぶのが普通で、そうやって、自力で作るものじゃないんだけど……
「私も!」
ガン! とカナデも真似をして、良い感じの石を作ってしまう。
……もはやなにも言うまい。
「じゃ、じゃあ、投げてみようか。石は横から放るようにして、なるべく水平に投げるんだ。回転を加えるのも忘れないように。そうすると、良い感じで跳ねていくぞ」
「水平に……回転を……」
教わったことを口に出して繰り返しつつ、カナデが石を構えた。
うん。
石の持ち方、構え。
どちらも良い感じだ。
そして……
「にゃんっ!!!」
ギュルルルルルゥッ!!!
シュゴォッ!!!
ドガァッ!!!
「……」
うん。
今の音でなにがあったのか、だいたい察してほしい。
「うーん、ちょっと失敗かなあ……?」
「思い切りな」
「けっこう難しいね」
「そうだな。まさか、川底を撃ち抜いて、大爆発させるなんて思っていなかったよ」
猫霊族が全力で投げれば、こうなって当然か。
ほどほどに加減するように、って言っておくべきだった。
「ふふん、カナデはダメねー。このあたしがお手本を見せてあげる」
「おー、ぱちぱちぱち」
「あ、いや。タニア、それよりも前に、まずは力加減を……」
「刮目なさい! これが竜族の力よ!」
「だから……」
止める間もない。
タニアは大きく振りかぶり、そして、石を全力投球。
俺が教えた方法はまるで関係ない。
とにかく威力と速度があればいいのよ、と言わんばかりの投球だ。
投げ放たれた石は水面に刺さることはなく、急激なカーブを描いて川の向こうへ飛ぶ。
ガンッ! ゴンッ! ドガァッ! と、途中に並ぶ岩を打ち砕きつつ飛翔して……
立ち並ぶ木々を薙ぎ倒して……
地面をゴリゴリと抉り……
その結果……
「……いや、やめておこう」
あえて語る必要はない。
とりあえず、二人に決して水切りをさせてはいけないと理解する俺だった。
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