113話 私立ビーストテイマー学園・その9
「飼育部の廃部……!?」
その驚くべき知らせは、ライハという部員が加わった、数日後にやってきた。
とても不機嫌そうなティナ先生がやってきて、部員が集められて……
その驚きの知らせが告げられたのだ。
「いったい、どういうことなんですか!?」
「うにゃー……私、入部したばかりなのに」
「それよりも、廃部なんてことになったら、この子達はどうなるのよ?」
「も、ももも、もしかしてまたダンボールに……!?」
「鯉もダンボール?」
「そこは水槽じゃないっすか」
「捨て鯉……新しいジャンルですね」
「雨が降ったらあふれてしまうかもなのだ」
みんな、意外と普通だった。
いや。
あえてそう振る舞っているのかな?
こういう時は慌てても仕方ない。
落ち着いて、しっかりと対策を考えないと。
「詳しいことを教えてくれませんか?」
「ウチも詳しいことはまだわからんのや。ただ、生徒会の決定でなー」
「生徒会が?」
「飼育部は学園の風紀を乱して、品位も落とすことになる……って、わけわからんこと言ってるんや」
ティナ先生も納得していないらしく、言葉の端から怒りが伺えた。
当たり前だ。
動物を飼うことのどこか風紀を乱すことに繋がるのか。
品位を落とす理由もさっぱりわからない。
意味不明だ。
「ふむ……これは、陰謀の匂いを感じるのだ」
「いんぼー? それ、おいしい?」
「さ、サクラちゃん。食べ物の話じゃないよ……」
「わふ?」
「簡単に言うと、我ら飼育部を陥れようとする輩がいると思うのだ」
「悪い……人」
おとなしい子だと思っていたけど、ニーナも怒っていた。
最近は、熱心にうさぎの面倒を見てて……
とてもがんばっているだけに、いわれなき中傷を許せないのだろう。
「にゃー、どうすればいいのかな?」
「ふふ、簡単ですわ」
イリスが不敵な笑みと共に言う。
「その生徒会を叩き潰してしまえばいいのですわ。物理的に♪」
「ナイスアイディアね!」
「ボク、がんばる」
「待て待て待て」
不穏なオーラを発するイリスとタニアとリファを慌てて止めた。
「そんなことをしたら大変なことになる。下手をしたら退学だ」
「しかし、これが一番確実で手っ取り早い方法だと思うのですが」
「一番ダメで手遅れな方法だよ」
生徒会は学園の自治の半分以上を任されている。
そんなところを潰したら、運が良くて停学。
普通に考えて退学だ。
「署名を集めるというのはどうでしょう?」
ソラがそんな提案をした。
「今回の措置はとても不当なものであり、そして、飼育部は何一つやましいことはない。そう訴えて、撤回を求める署名を集めるんです」
「おー、さすがソラのアネキっす。良いアイディアっす」
「せやな。生徒会は大きな権力を持ってるが、基本、生徒のため、っていう方針があるからなー。その生徒が飼育部の存続を望めば、今回の措置を撤回できるやろな」
うん、いい案だ。
それにしても……
みんなが一緒だと、どんどん話が前に進んでいく。
ぽんぽんと新しいアイディアが出てくる。
俺一人だったら、こうはいかなかっただろう。
改めて、頼もしい部員が入部してくれたことを嬉しく思う。
「ただ、うーん……」
「レイン、どうしたの?」
「署名は良い案だと思うんだけど、そうそう簡単に署名してもらえるかな?」
飼育部は弱小部だ。
大会があるわけでもないから、知名度も低い。
知っている人は知っているけど、知らない人の方が圧倒的に多い。
そんな部のために、わざわざ署名してくれる人がどれだけいるか。
「素敵なアイディアがありますわ♪」
「どんなん?」
「わたくし達がコスプレして署名を求めるのですわ。そこらの男子なんてちょろいので、そうすれば一撃です」
「あかん! そんなことしたら、それこそ風紀を乱してまうやろ!」
「「……コスプレ……」」
ティナ先生が反対して。
そして、なぜかソラとルナが残念そうにしていた。
でも、コスプレか……
方向性としては悪くない気がする。
ようは、注目を集めればいい。
それと同時に、飼育部のことを知ってもらえればいいわけだから……
「……みんな、ちょっと聞いてくれないか?」