11話 そうだ、キャンプに行こう・その3
準備が終わり、いよいよキャンプが始まる。
「よし! 私、釣り行ってくるね!!!」
「ああ、いって……」
「うにゃー! お魚お魚ー!!!」
いってらっしゃい、を言い終えるよりも先に、カナデは釣り道具を一式肩に下げて、川の上流に駆けていった。
早い。
よほど楽しみにしていたんだろう。
「カナデを一人にするのも心配だから、あたしも釣りに行ってくるわ」
「すまない、頼むよ」
「気にしないで。元々、釣りはしたいと思っていたから」
パチリとウインクをして、タニアも川の上流へ向かう。
ここは下流よりも上流の方がたくさんの魚がいるらしい。
魚なんて、ホライズンの近くでとれないと思っていたが……
ここは特殊な場所らしく、それなりの数がいるらしい。
改めて、ここを見つけてくれたソラに感謝だ。
「我は、昼寝をするのだ!」
「え、寝るのか?」
「雄大な自然の中で、鳥のさえずりを聞きながら昼寝をする……これ以上、贅沢なことはないのだ!」
言われてみると、そんな気がしてきた。
ふかふかのベッドもいいけど、こういう自然いっぱいのところで寝るのも気持ちよさそうだ。
ルナはハンモックを用意すると、そこに横になって……
「すかー……すぴすー……」
「一瞬で寝てしまいましたね……」
「ルナならでは、というか……ある意味、すごいな」
ソラと一緒に苦笑した。
「ソラは、のんびりと本を読んでいます」
同じくハンモックに寝て、本を読むソラ。
あれはあれで、とても楽しそうだ。
「ニーナとティナはどうする?」
「ウチはニーナに付き合うでー」
「えっと、えっと……どう、しよう?」
特に思いつかない様子で、ニーナは困った顔に。
なにをしても自由なのだけど……
特に目的がないからこそ、なにをしていいかわからず、困っているようだ。
ここは俺の出番かな?
「なら、火をおこしてみるのはどうだ?」
「火を……?」
魔法を使えばすぐなのに、というような感じで、ニーナが小首を傾げた。
対するティナは、なぜか苦い表情だ。
なぜだろう?
ティナは、俺の意図をわかっていると思うんだけど……
「野営ならともかく、キャンプでは魔法は使わないんだ。火をおこすのにも工夫することで、より深く楽しむことができるんだよ」
「おー」
ニーナは興味深そうな顔をして、尻尾をぴょこぴょこさせた。
「ニーナは、魔法を使わない火のおこし方は知らないだろう?」
「知らない」
「やってみたくないか?」
「やって、みたい」
ふんふんふん、とニーナが何度も頷いた。
うん。
こういう初心な反応を見ていると、こっちも楽しくなってくる。
ふっふっふ。
今日は、ニーナにキャンプの心得を叩き込んでやるぞ。
「どうやって、火を……おこすの?」
「木を使うんだ」
さっき取ってきてもらった薪をナイフで加工する。
二つ用意して、片方は板状に。
もう片方は槍のように先端をある程度鋭く。
「この板に棒の先端を当てて……」
「うん」
「こう、ぐるぐるって回転させるんだ」
「わぁ」
五分ほどで煙が出てきた。
火種を枯れ草で包み、息を吹きかける。
何度か試したところで火がついた。
「本来なら、このまま薪にくべるんだけど……こうやって火をつけるんだ」
「すごい、ね」
「ニーナもやってみるか?」
「うん」
とてもわくわくした様子でニーナは頷いた。
興味を持ってくれたみたいでなによりだ。
「無理はしなくていいからな? 最初は、なかなかうまくいかないから」
そう言いつつ、木の棒と板を渡す。
ニーナはややおぼつかない手付きながらも、俺がしたように、木の板に棒を当てた。
「ぐる、ぐる」
木の棒を回転させて……って、あれ?
ものすごく速い!?
「ぐる、ぐる」
ギュイイイィン、という音が聞こえてきそうなほどの高速回転だ。
これをニーナが?
驚いて彼女の手元を見ると、残像ができそうなくらい速く動いていた。
って……そうか。
幼い見た目に勘違いすることが多いけれど、彼女は最強種。
身体能力はそれなりに高く、一般人よりも上。
そうなると、当然、こんなこともできるわけで……
「あ……煙、出てきたよ?」
ほどなくして煙が出た。
すぐに火種を枯れ草で包んで、ふーふーと息を吹きかける。
「火……ついた。えへへ」
一応、楽しんでくれたみたいで、ニーナは笑顔だ。
ただ、俺よりも圧倒的に早く火をおこしていて……
なんていうか、ものすごく複雑な気分だ。
「あー……やっぱ、こうなったかー」
「ティナは、もしかしてこの展開を……?」
「せや。レインの旦那は忘れがちやけど、ニーナも最強種やからな。これくらい簡単にできてまうでー」
「なんてこった……」
火おこしを楽しんでくれたみたいだけど、でも、あっさりとクリアーされてしまうと俺の立場がないというか……
複雑な気分になってしまう俺。
「?」
そんな俺を見て、ニーナはこてんと小首をかしげるのだった。
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