102話 小さくなっちゃった・その6
「あーうー!!!」
「えっと……あ、そっか。ナタリーさん、ニーナのおむつを頼む」
「了解です」
「俺はカナデとタニアの遊び相手を……あ、ソラ、ルナ。外に行くのはダメだ。ティナと一緒に、家の中で遊んでくれ」
あれから3日。
みんなはまだ小さいままだ。
でも、それなりに経験を積んだおかげで、多少ではあるものの慣れてきた。
小さくなったみんながなにを望んでいるのか?
してはいけないことは?
そういうことを少しずつ理解してきたおかげで、どうにかこうにか日々を乗り越えることができていた。
とはいえ、毎日が嵐のようだ。
育児はとても大変で、冒険よりも疲れる。
今日も、どうにかこうにかみんなを昼寝させることができた。
「ふぅ……」
「おつかれさまです、シュラウドさん」
「ナタリーさんも、おつかれ」
リビングでお茶を飲んで休憩する。
ここ数日、ナタリーさんには助けてもらってばかりだ。
男とか女とか、あまり関係なくて。
単純に一人いるだけで大きく違う。
「今日も疲れたなあ……」
「まだ一日は終わっていませんよ?」
「夜はみんな早く寝るから、まあ、なんとか。昼は元気いっぱいだから、昼寝させるまでが一番大変な気もする」
「そうかもですね」
「それにしても……」
あれから3日経つんだけど、みんなはいつ元に戻るんだろう?
「……私はもう少しこのままでも」
「え?」
「い、いえ。なんでもありません、おほほ」
「そういえば、壺はどうなったんですか? ギルドで調べるみたいでしたけど……」
「あ、そうですね。結論としては、ちょっと変わった壺、というだけでした」
魔道具の原理を壺に応用されていた。
それ以外は変わったところはなくて、普通の壺だという。
中に入っていた魔法が大事。
外側はどうでもいい、という感じなのだろう。
「最強種の気まぐれで作られた、なんて仮説が立てられていますね」
「なんて厄介なものを……」
「永遠に若返るわけでもないので、一時的な遊びのつもりなんでしょう。作った本人については。まあ、誰なのか、そこはさっぱりですけど」
「まあ、この際誰でもいいけど、みんなが無事に元に戻ることを祈るよ」
なんて、ため息をこぼしていると、
「……レイン……」
カナデの声だ。
とても元気だったから、早く起きちゃったかな?
振り返ると、
「いっ!?」
「ふわー……なんか、頭がぼーっとするよ。なんだろう、これ?」
カナデが元の姿に戻っていた。
魔法の効果がちょうど切れたのだろう。
記憶も曖昧みたいで、どこかぼんやりとしている。
それはいいのだけど。
ただ……
昼寝をする前まで子供服を着ていたものだから、色々と大変なことになっていた。
ぱつぱつというか。
弾けそうというか。
収まりきれていないというか。
「ふぁ……なに、どうしたの?」
「ソラはお昼寝をしていたのですね……」
「むぅ、しかし記憶がないのだ?」
「ぼーっと、する」
「ウチが寝るなんて、なんやろ……?」
他のみんなも起きてきた。
カナデと同じく姿が元に戻っている。
だから当然、服はカナデと同じようになっていて……
「あ、えっと……その、皆さん?」
「あれ? なんでナタリーがここに?」
「それを説明するよりも先に、皆さんは自分の部屋に戻るべきかな……と」
「「「???」」」
みんな、小首を傾げて……
ただ、ほどなくして寝ぼけていた頭がすっきりとして、違和感に気づいたのだろう。
おや? という感じで自分の姿を見て……
「「「っ!!!?」」」
……その日。
みんなの悲鳴が響いて、なんかもう、色々と大変なことになってしまうのだった。
誰か知らないが、あの壺を作ったやつを恨むぞ……