101話 小さくなっちゃった・その5
「なるほど……それで、私の出番というわけですね」
ナタリーさんを家に招いた。
事情を話したらすんなりと納得してもらうことができた。
「ごめん。ナタリーさんも忙しいはずなのに……」
「いえいえ、気にしないでください。元はギルドの不始末なので、私がシュラウドさん達のお手伝いをするのは当然と言えますから」
「ありがたいです」
ナタリーさんが手伝ってくれてよかった。
本当に助かる。
「はーい。それじゃあみんな、一緒にお風呂に入りましょうね」
「えー、おばさんと?」
「レインといっしょがいいわ」
「……」
カナデの余計な一言に、ナタリーさんの笑顔がピシリと固まる。
「……カナデちゃん?」
「にゃ、にゃあ……?」
「お・ね・え・さ・ん……よ」
「う、うん……ナタリーお姉さん……」
とんでもないものを見た、という感じで、カナデはコクコクと慌てて頷いた。
他のみんなも、ナタリーさんに逆らってはいけないと直感で理解したらしく、おとなしくしている。
「それじゃあ、みなさんをお風呂に入れてきますね」
「は、はい……よろしくお願いします」
ついつい丁寧語になってしまう。
みんな、大丈夫かな?
大丈夫だよな……?
――――――――――
「にゃふー♪」
カナデを先頭に、風呂上がりのみんなが戻ってきた。
ほかほかな様子で、それと、ごきげんだ。
みんな笑顔で、どこかほんわかとした雰囲気。
よかった。
風呂に入って落ち着いてくれたみたいだ。
「よし。みんな、ご飯できているぞ」
「「「わーい!」」」
「ナタリーさんもどうぞ」
「え、いいんですか?」
「もちろん。ここまで助けてもらっておいて、ここではいさようなら、なんてできるわけないって」
「ありがとうございます。じゃあ、いただきますね」
みんなでテーブルを囲む。
「いただきます」
「「「いただきまーす!!!」」」
みんな、一斉にご飯を食べ始めた。
幼くても食欲は変わらないらしく、おかわりを何度もされた。
最強種の胃って、ホント、どうなっているんだろう……?
そうやって食事も無事に終わる。
ナタリーさんはみんなと遊んでもらい、その間に食器を洗うなどの後片付けを。
「……あふぅ」
「んゅ……」
落ち着いたところで、カナデ達がこくりこくりと。
とても眠そうにしていて、目が半分くらい閉じている。
「みんなはそろそろ寝ようか」
「やー……まだ、あそびたいのー……」
「あたしをかまい、なさいよぉ……」
「明日もちゃんと遊べるから。ほら、寝ようか」
「うぃ」
「あぃ」
ソラとルナはぐらぐらと揺れていて、倒れてしまわないか心配だ。
それでも、なんとか自分の部屋まで歩いて行く。
カナデとタニアも自分の部屋に戻った。
「あー……」
ニーナは俺が抱っこした。
ベッドに寝かせて、部屋を出る。
いつの間にかティナも自分の部屋に戻ったらしい。
幽霊だけど、子供に戻ったせいか眠気を覚えたみたいだ。
「ふぅ」
みんなを無事、寝かしつけることができた。
これで一日が終わり。
疲労感が半端ない。
元に戻るまでの数日、こんな日々が続くのか。
「世の親は偉大だなあ……」
「ふふ。シュラウドさん、なんだかおじいさんっぽいですよ。はい、どうぞ」
「ありがとう」
ナタリーさんに淹れてもらったお茶を飲む。
「ふふ」
「どうかした?」
「いえ、その……みなさんが子供になって、こうしていると、なんだかその……私達、夫婦みたいだなあ、と」
「えっ」
「……」
「……」
なんだか妙な空気になってしまう。
嫌な感じはしない。
それどころか、どこか甘いような……
「……レイン……」
寝ぼけ眼のカナデが起きてきて、ビクッと震えた。
「な、なんだ? どうしたんだ?」
「……おトイレ……」
「そ、そっか。こっちだ」
俺は慌ててカナデをトイレに連れて行って……
「……あと少しだったのに」
なんて、そんなつぶやきが聞こえてきたとかなんとか。