100話 小さくなっちゃった・その4
スズさんから子育てのコツを教わり……
数時間後。
「では、私はこれで。どうしようもなくなった時は、この鈴を鳴らしてください。駆けつけるので」
「はい。でも、そうならないようにがんばります」
「期待しています」
スズさんは最後に「がんばってください」と言い、家を後にした。
「よし」
時間的に、そろそろ昼寝を終えてみんなが起きてくる頃だ。
キッチンに立ち、牛乳を鍋に注ぐ。
それとはちみつを入れて、少し湯気が立つくらい煮込む。
「最後にチョコフレークをふりかけて……うん、ホットミルクの完成だ」
甘いものは子供を笑顔にする。
まずはこれを飲んで落ち着いてもらおう、という狙いだ。
「あーうー……レイン?」
「あまいにおいがするわ」
最初にカナデとタニアが起きてきた。
「ホットミルクを作ったんだ。飲むか?」
「「のむ!!」」
「はい、どうぞ」
「「いただきまーす!」」
カナデとタニアは両手でマグカップを持つ。
さすがにすぐに子供用のものは用意できなかったもので、サイズが合わず大きい。
それでも気にした様子がないのは最強種の力を持っているからか。
二人はふーふーと息を吹きかけて、そっと飲む。
「「おいしい!!」」
キラキラと瞳を輝かせた。
よかった、喜んでくれたみたいだ。
「いいにおいがするよ」
「おいしそうなにおいです」
「ルナとソラも、ほら」
「「わーい!!」」
「あと、ニーナも、ティナは……匂いで我慢してくれ」
さらにニーナとティナも現れて、それぞれホットミルクを渡した。
「……」
ただ、ニーナはホットミルクを手にしたものの、とても不満そうに眉をたわめていた。
「むー……!」
「ど、どうしたんだ?」
スズさんの話によると、子供は感情をストレートに表現するという。
ただ、こちらに伝えようと思っていない。
だからわかりにくいので、しっかりと観察することが大事と聞いた。
「むー……!」
「えっと……」
だ、ダメだ。
ニーナがなにを不満に思っているのかわからない。
どうしようか迷っていると、とてとてとニーナがこちらに歩いてきた。
そして、俺を床に座らせて、自分はその膝の上に乗る。
「あう♪」
ニーナは笑顔になってホットミルクを飲む。
どうやら、俺の膝に乗り、そこでホットミルクを味わいたかったみたいだ。
「あー、ニーナずるーい!」
「あたしも!」
「ソラもです」
「私も……」
「ウチもや!」
みんな、一斉に寄りかかってきた。
膝はニーナにあげるけど、他はいいよね? という感じだ。
「えっと……」
「「おいしー!!」」
「……まあ、いいか」
みんなが喜んでいるのならそれでよし。
しばらく動けないけど、それくらいは安いものだ。
「おいしい♪」
特にルナがホットミルクを気に入ったらしく、笑顔でなんども口をつけていた。
それにしても……
幼い頃のルナって、口調は普通だったんだな。
いつもの尊大なものではない。
いったい、いつから尊大な口調を使うようになったんだろう?
アルさんの影響かな?
「あぅ」
ふと、カナデの尻尾がピーンと立った。
「レイン、レイン」
「ん? どうしたんだ?」
「おしっこ」
「え」
「おしっこ、いきたい」
……。
「わ、わかった!?」
しまった、そういう展開もあるのか。
完全に予想外で、少しの間、思考がフリーズしてしまった。
みんなにどいてもらい、カナデを抱えてトイレに急ぐ。
「ほら、ここでするんだぞ。えっと……一人でできるよな?」
「うん、だいじょーぶ」
よかった……
これで、手伝って、とか言われたらどうしようと頭を抱えていたところだ。
みんなは今子供だから、おかしな目で見るのはおかしなことなんだけど……
でも、俺にとっては、ずっと普通に仲間として接してきたわけで……
いきなり気持ちを切り替えることなんて無理だ。
「俺はそこにいるから、終わったら呼んでくれ。手を一緒に洗おう」
「うん」
トイレを出て、少し離れて、考える。
「……風呂はどうしよう?」
風呂のことを忘れていた。
大人用に作られている風呂だから、当然、幼いみんなにとっては深い。
湯を薄くすれば……
いや。
そもそも湯船に入ることができないか。
それに、ニーナは一人で風呂は無理だ。
みんなに手伝いをお願いするわけにもいかない。
「まいったな……これは、誰かに助っ人を頼まないと」
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