10話 そうだ、キャンプに行こう・その2
さらに翌日。
天気は快晴。
絶好のキャンプ日和だ。
「今日から、ここで一泊二日のキャンプをするぞ」
「「「おぉーーー!」」」
ホライズンから歩いて三時間ほど。
森を抜けた先に、穏やかな川が流れていた。
水は底が見えるほど澄んでいて、陽の光をキラキラと反射していて綺麗だ。
川のほとりは十分なスペースが確保されていて、みんなの分のテントを張ることができる。
それに、火を使うこともできる。
森へ引火するということも、ほぼほぼないだろう。
「すごく良いところだね!」
「わくわく、って……なる」
「そうでしょう、そうでしょう。ソラが、がんばって探した場所なのですよ」
「うん。ありがとう、ソラ。こんな素敵なところを見つけてくれるなんて、さすがソラだ」
「そ、そうやって素直に褒められると、恥ずかしくなってしまうのですが……」
ソラは頬を染めて、ちょっと視線を落としてしまう。
「ソラ、ありがとう!」
「あり、がとう」
「うぅ……」
カナデとニーナの追撃に、さらに恥ずかしそうになった。
「姉よ、照れているな? 照れているな? くくく、初心よのう」
「ドラグーン・ハウリング」
「おわぁ!?」
迷いもなく魔法を放つソラが恐ろしい……
「と、とりあえず準備をしようか。俺はテントを担当するから、カナデとタニアは水汲みを。ソラとルナは、獣と魔物除けの設置を頼む」
「ウチとニーナは?」
「薪を集めてくれないか?」
「がん、ばる」
やっていることは、いつもの野営と変わらない。
ただ、キャンプということもあって、みんな笑顔で楽しそうだ。
「よし、がんばるか」
設置するテントは二つ。
みんなの作業が終わるまでに、テントを設置してしまおう。
――――――――――
「水汲みって、ちょっと単純でつまらないわよねー」
「でもでも、大事なことだよ?」
カナデが言うように、水はとても大事だ。
キャンプに限らず、旅をする時は、必ず予備の水を持つようにしている。
数日、ものを食べられなくても生きることは可能だけど……
数日、水を飲まないと死んでしまうこともある。
「わかってはいるんだけどねー。いっそ、魔法でこの川の水、全部移し替えようかしら?」
「それはやめておいた方がいいよ、レインに怒られるよ……」
「な、なによ。真に受けないで、冗談に決まっているじゃない」
絶対本気だった、とジト目を向けるカナデだった。
その視線から逃げるように、タニアは、あらかじめ用意しておいた革袋に水を汲んでいく。
タニアに習い、カナデも水を汲む。
用意した革袋は十。
運ぶ手間を考えると、テンポよくやらないとけっこうな時間がかかってしまう。
せっせと水を汲んで……
「……にゃー、お魚……」
川魚を見つけて、カナデがよだれを垂らしつつ、動きを止めた。
「こらっ、食いしん坊猫!」
「わりとストレートな呼び名!?」
「今は水汲みに集中しなさい。魚は、後で釣りをすればいいんだから」
「そ、そうだよね……うん。私、がんばるよ!」
そう宣言して、一分後。
「にゃー……お魚、じゅるり……」
「カナデ!」
「あいたー!?」
げんこつの音とカナデの悲鳴が響くのだった。
――――――――――
「我が姉よ、このような感じで問題ないか?」
「そうですね……はい、大丈夫でしょう」
獣と魔物を退ける結界を構築するソラとルナ。
一定範囲内を保護するだけではなくて、気温や湿度も快適に調整してくれるという優れものだ。
精霊族である彼女達からしたら、なんてことない作業だ。
ただ、普通の人が見たら目を大きくして驚くだろう。
大魔法使いを名乗る者でも、卒倒してしまうかもしれない。
それほどまでにすごい魔法を使いこなしているソラとルナ。
しかし……
「時に、ルナ」
「む?」
「やはり、キャンプといえばキャンプ料理が欠かせないと思います。そこでソラは……」
「……先立つ不幸をお許しください、母上」
「なんなのですか、その反応は!?」
すごい精霊族でも、欠点はあるのだった。
――――――――――
「ほい、ほい、ほい」
ティナが木の枝を次々と指さしていく。
すると、かまいたちが発生しているかのように、枝が切り落とされていく。
「ニーナ、これ、収納しておいてな。切ったばかりやから薪にはならんけど、後で乾燥させれば、十分に使えるはずや」
「うん」
「で、あとは……」
ティナがさっと手を振る。
その動きに合わせて、地面に転がっていた枯れ木や枯れ草がふわりと浮き上がる。
「これらも頼むでー。これは、すぐに使えるはずや」
「ティナ、すごい……ね」
「なははー、これくらいせんとなー」
幽霊としての力を使い、効率よく薪を集めるティナ。
そして、無尽蔵にそれを回収するニーナ。
とても良いコンビだった。
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