6月14日 世界献血者デー
ここはとある郊外のコンビニ。
「暇っすね〜」
「ああ」
「毎回思うんすけどこの時間って店閉めててもよくないっすか?」
「ああ」
「何か楽しいことないっすかね〜」
「ああ」
「? 高橋さん?」
「ああ」
「高橋さーん!」
「うおっ、びっくりした!…あー、すまん、ぼーっとしてたわ」
「大丈夫っすか?というか今日シフト入ってなかったっすよね?」
「ああ、田所さんから急に代わってくれって頼まれてな。身内に不幸があったらしい」
「またっすか?あの人の親戚死にすぎでしょ」
「俺の知る限りあの人には26人のおじ、おばがいて全員がこの2年で急死してる」
「絶対嘘でしょ…」
「まあ、嘘だろうな。電話で頼まれたけど飲み会してるみたいな声が聞こえてたし」
「断ればいいじゃないっすか…」
「別に暇だし断る理由もないしな。それに他に代わってくれる人もいないだろ」
「お人好しっすね〜まあ、そこが高橋さんのいいとこっすけど」
「そんなに褒めるなよ、照れるわ」
「そんなわけで今度ぼくのシフトも代わってください!なんか祖母のいとこの義理の妹の隣の家の人が亡くなるかもしれないんすよねー」
「ふざけんな。つーかその人はほぼほぼ他人じゃねーか」
「冗談はさておき、なるほど、急な夜勤でくたびれてるってわけっすね」
「それもあるんだけど、昼間に献血行ったのもあって、ちょっとだるくてな」
「献血…ですか?」
「ああ、今日はちょうど世界献血者デーだったしな」
「冷血な残虐超人の高橋さんが献血なんてするわけないっす!さてはあんたニセモノっすね!」
「お前の中での俺のイメージはどうなってんだよ…」
「冗談っすよ、冗談。よく行くんすか?」
「ああ、年5回ぐらいは行くな」
「めっちゃ常連じゃないっすか!あれって何かもらえるんでしたっけ?」
「粗品ぐらいだな、歯磨き粉とかレトルトカレーとか」
「うーん、お金もらえたりするなら行く気になるんすけどね」
「売血はいろいろ問題があったからな…でも何回も行くと記念品もらえるぞ」
「たとえば?」
「ガラスの器とかタオルとかだな。そういえば店長のおすすめコーナーに非売品として置いてある盃は100回以上献血した人がもらえるやつだぞ」
「え、あれ店長の私物を飾ってるんすか…」
「自慢したいんだろ。売り場を私物化するのはどうかと思うが…」
「うーん、でも、献血っすか〜行ったことないんすよね。1回ぐらい行っておいた方がいいっすかね〜」
「おっ、いいんじゃないか。ちょっと血を取られるだけでジュースやお菓子ももらえるぞ」
「その血を取られるってのが怖いんすよね…そうだ、高橋さん、一緒に着いてきてもらっていいっすか?」
「なんでだよ、一人で行けよ」
「もしかすると包帯でぐるぐる巻きにされてミイラになるまで血を取られるかもしれないじゃないっすか」
「そんな悪魔超人みたいな奴は献血センターにはおらん」
「お願いしますよ、救世主〜」
「俺はモンゴルマンじゃねぇ」