4月9日 鍼灸の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。鍼灸はどちらも受けたことがない。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。お灸の匂いが好き。
ここはとある郊外のマンションの一室。
TV『全日本選手権を制した高鳥選手の母校はー』
「ぼく、実は高校生のときにこの人と試合したことあるんすよ」
「えっ、この柔道の選手と?なんで?」
「インターハイの地区予選でたまたまっす。助っ人で試合出てたんで」
「へー。あれ?でも階級全然違うんじゃないの?さっき無差別級って言ってたけど」
「団体戦だったんで階級関係なしなんすよね。好きなとこで出ていいって言われたんで、大将だったんすよ、ぼく。倍以上あっちの方が大きかったっすねー」
「おぅ…怪我しなかった?」
「ええ、ぼくは投げられなかったので」
「…えっ?もしかして勝ったの?」
「もちろんっすよ!まあぼくに回ってくる前にチームの負けは決まってましたけど…」
「マジかよ…つーか今テレビの特集でその話してない?高校時代唯一の黒星だって…」
「あー、そうだったんすねー ふっ、あの人が弱かったんじゃなくて、ぼくが強すぎただけの話っすよ!」
「いや、実際その通りだろ…君のアスリートとしての能力って割と世界クラスだよな…」
「そうでもないっすよ。うちの町内会にはぼく以上の人がゴロゴロしてますから」
「ほんとに君のとこの町内会はどうなってるんだよ…」
「別に普通っすけどね。あ、でも凄腕の整体師さんと鍼灸師さんがいますね。ぼくも高校時代はお世話になってました」
「整体師と鍼灸師?ああ、体のメンテナンス的なことか。そんなに違うもんなの?」
「ほんとに全然違いますね!回復の度合いと発揮できるパフォーマンスが段違いっすよ!あの2人の施術だけでも身体機能が1.5倍ぐらいにはなってると思います!」
「そんなにか…ちょっと俺も受けてみたいな」
「人気過ぎて一見さんお断りっすからね。もし予約するなら紹介しますよ」
「京都の料亭みたいだな…でもぜひお願いするわ」
「了解っす!予約取れそうな日付がわかったら連絡しますね」
「ああ、よろしく。そういやもう日付変わってたか。ちょうど鍼灸の日になってたな」
「鍼灸の日…おっ、4月9日の語呂合わせっすね!」
「そうそう。一般社団法人日本鍼灸協会が制定した記念日で鍼灸の啓発活動を行う日だそうだ」
「ふむふむ。高橋さんは今まで鍼とかお灸って受けたことあるんすか?」
「ちゃんとしたところで受けたことはないな。前に店長のおすすめコーナーに売ってあった『初心者でも簡単!鍼セット』とかいうのを買ったことはあるけど」
「また怪しい商品を…ほんとに効果あるんすか?」
「さぁ…?一応肩こり、腰痛、神経痛、疲労回復、悪霊退散の効果があるとは書いてあったが」
「なんか変なの混じってるんすけど…あれ?高橋さん、買って使ったんじゃないんすか?」
「買って持って帰ろうとしたら店長に止められたんだよ。『返金するからやめろ。無駄に刺激するな』ってな」
「なんすかその怖いエピソード…」