4月5日 オープンカーの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。オープンカーは乗ったことがない。ちょっと憧れる。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。オープンカーは乗ったことがない。屋根の開閉ができるタイプが好き。トランスフォーマーみたいで。
ここはとある郊外のコンビニ。
「今日はオープンカーの日って記念日なんだ」
「へー、オープンカーっすか。たしかにこの季節はオープンカーに乗るのに良さそうっすね。暖かくなってきましたし、暑くもないですし」
「そうそう。あとオープンカーが五感に訴えかける乗り物だっていうのもあって4月5日になったらしい。日本オープンカー協会が制定したそうだ」
「おっ、新たな協会が出てきましたね!でもオープンカーっすか…乗ってみたいっすねー 高橋さんはオープンカー買う予定とかないんすか?」
「予定も予算もねぇよ…大学院生の身分だとなかなか手が出ないな…」
「まあ高そうなイメージがありますねー そうだ!今の車をオープンカーにしたらいいじゃないっすか!店長のおすすめコーナーにあるグラインダーで屋根を外して!」
「なんか恐ろしいもの売ってるな…つーかそれ二度と戻らなくなるやつだろ…雨の日とかどうすんだ…」
「そっかー……じゃなくてですね‼︎」(バンッ!)
「うおっ⁉︎びっくりした…どうした急に?」
「なんで普通に駄弁りながらバイトしてるんすか、ぼくらは⁉︎」
「えっ、だって今日はシフト入ってるし、今は客もいないし…」
「そういう話じゃなくてですね!昨日のことっすよ!…えっ、もしかして話が作れなくなったから、無かったことにしたとか…」
「メタ発言ハンパねえな…昨日の強盗な。怖かったなぁ、あれ」
「そんなレベルの話じゃないでしょ⁉︎だって…高橋さん…お、お腹を…さ、刺されて…」(ガタガタ)
「落ち着いて。顔が真っ青だ。無理に思い出さなくていいから。…怖かったね」(なでなで)
「た、高橋さんが…し、死んじゃうって…思って…」(じわぁ)
「…大丈夫だから。ほら、この通りピンピンしてるぞ」
「グスッ…ケガは⁉︎ケガはないんすか⁉︎」
「ああ大丈夫だ。昨日たまたま店長のおすすめコーナーで買ったシャツを着てたおかげでな。腹に刺さりはしなかったんだよ」
「あ、あのチェーンソーでも穴が開かないやつ…」※3月29日参照
「そうそう。他の服だったら死んでたかもな!はっはっはっ!」
「笑いごとじゃないっすよ!まったく…そうだ!あの強盗はどうなったんすか⁉︎」
「そこも覚えてない感じか。君がレジのカウンター飛び越えて、飛び蹴りを喰らわせてノックアウトしたんだけど…」
「…へっ⁉︎」
「ちょうどその頃店長が到着して、『殺してやる‼︎』って言いながら追撃しようとする君を必死に止めたんだけど、覚えてない?」
「全然覚えてないっす…えっ、嘘でしょ?」
「ほんとほんと。店長が『どうしてうちのバイトは血の気が多いやつばっかりなんだ…』って嘆いてたよ」
「うっ…で、でも店長だって大概でしょ!前に強盗をボコボコにしたって言ってたじゃないっすか!」※8月15日参照
「まああの人は勝てるから…でも俺も気をつけるよ。あのとき抵抗せずにお金を渡しておけばこんなことにはならなかったしな。まあ震えてる田中くんを見て頭真っ白になって飛び出しちゃったんだけど」
「嬉しいっすけど…もう二度とやらないでくださいね。ぼくも気をつけますから…その後はどうなったんでしたっけ?」
「俺は念のため病院に行ったよ。腹はどうもなかったけど、40℃熱があったからな。いろいろ検査受けて家に帰った。生姜湯ジエンドを飲んだらすっかり良くなったけど」
「あの生姜湯にはほんとに何が入ってるんすかね…?犯人は警察に捕まったんすか?」
「…あー…犯人は、その…行方不明だ」
「えっ⁉︎逃げちゃったってことっすか⁉︎」
「いや、逃げてはないんだけど…正直これ以上は聞かない方がいい」
「えっ…なんすか?ほんとに怖いんすけど…」
「店長が関係してて、俺らにはもう危険はないのはたしかだよ。…人生には知らない方がいいこともあるけど、知ってはいけないこともあるんだよ…」
「いや…怖いとかいうレベルじゃないんですが…」
300回です。いつもお読みいただき誠にありがとうございます。あと65回お付き合いいただけますと幸いです。