4月2日 歯列矯正の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。歯列矯正未経験者。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。歯列矯正経験者。
ここはとある郊外のコンビニ。
「…」(ジー)
「…どうかしました?そんなにじっとぼくを見つめて。まあぼくの可愛さに見惚れるのはわかりますけどね!」
「自分で言うか、それ…まあそれはその通りだけどさ。田中くん、ちょっとイーってしてみてくれない?」
「…?こうっすか?」(イー)
「あー…やっぱ田中くんって歯並びいいよな。子供の頃に矯正とかしてた?」
「あ、わかります?うちの父は何かを無理矢理やらせたりする人じゃなかったんすけど、姉、兄も含めて歯科矯正だけはやらされたんすよねー」
「なるほどな。矯正を強制されたのか」
「…前歯全部へし折りますよ」
「怖えよ…俺が悪かったから許してくれ…」
「まったく…それでなんで急にそんな話を?」
「今日が歯列矯正の日って記念日でさ。ふと田中くんの歯並びを思い出してな」
「なんでも記念日があるものなんすねぇ。なんで今日になったんすか?」
「日付は『402』で『しれつ』って読む語呂合わせからだね。歯列矯正の業務を手掛けるOCA Japan株式会社ってとこが、歯列矯正をアピールするために制定したそうだ」
「なるほどなるほど。でも矯正って大切っすよ。やってるときはきつかったっすけど、今は父に感謝してますね」
「そうなんだ。どういうところがよかった?」
「まず見た目っすね!歯並びがいいとすごい整ってみえますもん。もちろん見た目が全てではないっすけど、少なくともマイナスイメージはつかないっすね」
「それはそうかもな。矯正の有無で親の躾を計ってくるような人もいたりするし」
「あとはスポーツで活躍できたのも矯正のおかげだと思います!ほら、末堂先輩も言ってたじゃないっすか?」
「ああ、グラップラー刃牙の。噛み合わせで力を上げるってやつか」
「まあぼくはパーフェクトナチュラルパワーっすけどね!ぼくが100m裸足で11秒台なのも矯正のおかげっすよ」
「それだけじゃないと思うけど…つーかそれほぼ日本記録じゃないのか?」
「でも高橋さんもかなり歯並びいいっすよね?子供の頃矯正した口ですか?」
「いや、俺はしてないな。あ、でも大学入学したくらいのときに店長が作った矯正マウスピースってのは使ったことあるな」
「矯正マウスピース?マウスピースだけで矯正するんすか?」
「ああ。しかも『一晩つけるだけで矯正できる』ってふれこみで、おすすめコーナーで売ろうとしてたらしい」
「そんなわけないじゃないっすか…歯並びを変えるんすよ?子供の頃にやるのだってあんなに時間かかったのに…」
「それがほんとに変わるんだよ。元々そんなに歯並び悪い方じゃなかったけど、一晩つけたら明らかに良くなってたからな」
「それがほんとだとしたら…革命じゃないっすか!それって今も売ってるんすか?」
「それがな、歯並びが悪い人が使うと顎が粉砕することがわかったらしくてな。販売はされなくて結局使ったことのある人間は俺だけだったらしい。まあ俺も朝起きたときに口の中で血の味がしてたから顎が砕ける寸前だったのかもな。ははは」
「…ツッコミどころが多すぎて訳がわかんないっす…」