3月16日 ミドルの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。年齢は田中の2.3歳ぐらい上。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。年齢は秘密。
武 高橋家に住み着く男性の幽霊。享年29歳。
ここはとある郊外のコンビニ。
「うーん…」
「どうした?何か悩み事?」
「実はそうなんすよ…聞いてもらえますか?」
「ああ、俺でよければ」
「実はですね、最近体力の衰えを感じてて…もう歳っすかね?」
「いや、君の年齢でそんなこと言ったら各方面から刺されるぞ…まだ20代前半だろ?」
「まあそうなんすけど。やっぱり高校生のときと比べるとですね…高校生のときって体力が無限にあるじゃないっすか?」
「俺は無限ではなかったが…でも疲れの取れ方は高校生の時の方がよかった気がする」
「そうでしょう!フルマラソン走ったぐらいで翌日に持ち越したりしなかったんすけどねー」
「回復力やばすぎだろ…ていうかもしかして昨日フルマラソン走ったのか?」
「ええ。ちょっと気が向いたんで」
「ふらっと走る距離じゃないと思うんだけど…」
「しかし、やっぱり昔のようにはいかなくなりますね。店長のおすすめコーナーにあるニンニク卵黄を食べて体力をつけますかね!」
「今も十分すぎるぐらいの体力だと思うけどな。でもニンニク卵黄って実際どのくらい効果があるのかな?」
「なんかすごい体力つきそうじゃないっすか?ほら、CMでも言ってるじゃないっすか。『うがい、手洗い、感謝の正拳突き、ニンニク卵黄』って」
「なんか変なの混じってない?」
「高橋さんは体力の衰えとか感じないっすか?ほら、30歳超えるとそういうのが急にくるっていうじゃないですか」
「だから俺は20代だって言ってんだろ。でも、夜勤明けの疲れは昔より強くなった気がする」
「それは夜勤に入りすぎってのもあるんじゃないっすかね。ところで…高橋さんってほんとに20代なんすよね?」
「ほんとだけど…そんなに老けて見えるか…?まあたしかによく言われるけどさ…」
「い、いえいえ!落ち着いてみえるってことっすよ!最初にバイトで一緒になったときも仕事もできるしすごい大人な人だなーって思いましたもん」
「ふふふ…老け顔の人にはみんなそういうよな…」
「思った以上に凹んでる…げ、元気出してくださいよ…」
「それもそうだな。老け顔だと歳をとったときに若く見られるっていうし」
「いつもながら切り替え早いっすね…」
「まあナイスミドルを目指していくかね。今日はちょうどミドルの日だし」
「ミドルの日?」
「男性用化粧品のトップメーカーとして知られる株式会社マンダムが制定した日で、ミドル世代の男性の生き生きとした若々しい生き方を応援するって目的に作られたらしい。日付は『316』を『ミドル』と読む語呂合わせからだな」
「へー。ミドル世代ってのは具体的に何歳ぐらいの人をいうんすかね?」
「だいたい35歳から54歳ぐらいまでをいうことが多いらしい。それより上はシニア世代だね」
「ふむふむ。ぼくらの周りだと誰がミドル世代になりますかね?」
「えーと…あれ?意外といないかもな。30歳前後とか、そうじゃなければシニアの人が多いかも」
「たしかに…あっ!武さんはどうっすか?」
「幽霊の年齢をどこ基準にするかにもよるかな…享年だと30歳手前だったはず」
「そうなんすね。いつ頃から幽霊のなんすかね、武さんって」
「さあ…?黒船は見たことあるって言ってたけど」
「えっ」
なんとかその日のうちには登校できるように頑張ります。