3月12日 だがしの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。好きな駄菓子はキャベツ太郎。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。好きな駄菓子はヤングドーナツ。
ここはとある郊外のマンションの一室。
「う、うーん…」
「おっ、起きたか?」
「…おはようございます…あたまいたい…」
「だろうな。調子に乗って飲み過ぎだ」
「うぅ…高橋さんが冷たい…」
「当たり前だ。自制を覚えろって何度も言ってるだろ」
「ぐうの音もでないっす…」
「まったく…ほら、オレンジジュース。あと、しじみのお吸い物作ったから。飲んでおくと後が楽かも」
「…すみません、ありがとうございます…」
「あと二日酔いにはラムネがいいらしいぞ。はいどうぞ」
「何から何まですみません…」
「まあこれは前に君がうちに持ち込んだやつだけどね」
「あー、店長のおすすめコーナーで大人買いしたやつっすね。だいぶ少なくなっちゃったし、また駄菓子特集やらないっすかね?」※9月25日参照
「あれも不定期だもんな。つい先日は駄菓子じゃなくて高級菓子特集やってたけど」
「高級菓子?有名ブランドのやつとかっすか?」
「うん。あとは明治のリッチチョコサンドとかガリガリ君リッチとか」
「それは高級菓子なんすかね…いやたしかにリッチってついてますけど…」
「まあ駄菓子だったらおすすめコーナーじゃなくてもまとめ買いできるだろ。それこそネットとかでも売ってるし」
「うーん…でも駄菓子ってなんとなく実物見ながら買いたくないっすか?」
「あー、わかる。ワクワク感があるよな」
「それっすよ。駄菓子がいっぱい並んだ空間って桃源郷を思わせますよね」
「それは言い過ぎだと思うが…近場にも駄菓子を豊富に売ってる店が何個かあったと思うぞ。この後買いに行く?今日はちょうどだがしの日だし」
「おお、タイムリーっすね。でもなんで今日なんすか?」
「お菓子の神様として知られる田道間守って人の命日らしい」
「お菓子の神様って…ナボナじゃなかったでしたっけ?」
「それはお菓子のホームラン王だろ」※12月18日参照
「そうでした。それでその…タジマモリ?さんは何をした人なんすか?」
「西暦60年頃、垂仁天皇の命を受けて常世の国ってとこに非時香菓ってのを探しにいったんだ。10年以上をかけてなんとか発見して持ち帰ったんだけど、そのときには垂仁天皇は崩御されててな。それを嘆き悲しんで亡くなってしまったって人らしい」
「はー、忠誠心の篤い人だったんすねぇ。…ん?お菓子の神様の理由がわからないんすけど」
「その非時香菓ってのは今の橘、みかんの原種って言われてるんだが、昔果物は『果子』と呼ばれていたことから転じてお菓子の神様として祀られるようになったらしい」
「ふむふむ。そのおかげでだがしの日ができて、今日は駄菓子食べ放題ってわけっすね」
「いや、別に食べ放題ではないが…で、どうする?買いに行くならつきあうよ」
「ちょっと待ってください…この頭の痛みがなくなれば動けますので…ぼく、この二日酔いが治ったら駄菓子を買いに行くんだ…」
「死亡フラグにしか聞こえないんだが…」
連日遅くなり申し訳ございません。