2月14日 バレンタインデー
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。バレンタインデーは好き。義理チョコがもらえるから。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。バレンタインデーは好き。愛の伝道師ですから!
田所 バイト仲間。親戚が亡くなったことにしてバイトをサボる常習犯。
ここはとある郊外のコンビニの前。
ウィーン テース
「田所さんのあれ、なんか久々に聞いた気がします」※7月11日参照
「ああ。田所さん、最近忙しくてバイトにあんまり入れてなかったもんな」
「忙しいって…飲み会がっすか?」
「いやまあそんなイメージなのもわかるけどさ…医師国家試験前だったからだよ」
「イシ?イシってストーンの石ですか?」
「いやドクターの医師」
「…えっ?なんで医師国家試験があると田所さんが忙しくなるんすか?」
「だってあの人医学部の6年生だし。受験生だから忙しくなるんだよ」
「…はぁ⁉︎…またまた!ぼくをからかってるんすね!…えっ、ほんとなんすか?」
「うん。知らなかったのか?たしかに田所さん、自分のことあんまり話さないもんな。さっき聞いたら自己採点は問題なかったって。おそらく4月からあの人お医者さんだぞ」
「…事実は小説より奇なりってやつっすね…」
「大概失礼な発言だな…ほら、田所さんが店内から、はよ帰れって目でみてるから退散するかね」
「そうっすね。じゃあありがとうございました!ぼく、こっちなんで!」
「いや夜遅いし家まで送るよ」
「いえいえ、大丈夫っすよ。すぐ近くですし」
「まあそう言わずに。1人で帰したら俺が貴子さんに殺されるから…」
「それは恐ろしいっすね…そういうことならお願いします!家に帰るまでが遠足ですからね!」
「遠足ではないけどな…さあ。行こうか」
「はい!…ところでさっき店長のおすすめコーナーが空っぽだったんすけど、何が売ってあったんすかね?」
「多分店長や店長の奥さんが作ったチョコレートじゃないかな。日付変わって今日はバレンタインデーだし」
「なるほど。それは納得っす。あのお二人が作るお菓子はどれも美味しいっすからね〜」
「毎年すぐ売り切れるからな。バレンタインデー当日にも少し並ぶけど、午前中のうちになくなってるね」
「うーん、食べてみたいっすけど、手に入れるのは難易度高そうっすね…」
「俺は毎年店長からチョコレートもらうから、それでよければ少しあげようか?」
「マジっすか⁉︎じゃあ是非!…あ、でも高橋さんの愛しの店長からのチョコを分けてもらうのは忍びないっすね…」
「変な言い方するのやめて…まったく…田中くんはチョコレートとか準備してるのか?」
「へ⁉︎な、何がっすか?べ、別に渡す人なんていないっすけど!」
「あ、そうなの。てっきり友チョコとか渡したりするのかと思ったよ。そういうの好きそうだし」
「あ、そっちっすか…それは準備してますよ。いつもは手作りしますけど、今年は時間短縮で既製品っすねー」
「あ、旅行があったからか……それは悪いことしたな…すまん…」
「い、いえいえ!ぼくが旅行を楽しんだ結果なんで、高橋さんが謝る理由なんて微塵もないっすよ!それにいろんなところが売ってるチョコを見るのも楽しかったですし!」
「そうか…?まあお菓子業界にとっては一大イベントだからなぁ。日本で1番チョコレートが消費される時期だろうし」
「それは間違いないっすね。そういえば世界的には別に女性から男性にチョコを贈る日じゃないって聞いたことあるんすけど、ほんとなんすか?」
「ああ。女性からチョコを、ってのは1958年にメリーチョコレートって会社が始めたものっていわれてるな。欧米では恋人同士や親しい間柄でプレゼントを贈り合う日で、チョコレートに限らずケーキや花だったりするらしい」
「へぇー」
「…よし。というわけで本場にならって、はいこれ。ハッピーバレンタイン」
「…えっ⁉︎ぼ、ぼくにっすか⁉︎あ、ありがとうございます!これ、京都で買ってたやつっすよね?」
「ああ」
「…えへへ。すごく嬉しいっす!…ん?メッセージカードが乗ってる…えーと、びー まい ばれんたいん?」
「イギリスでのバレンタインデーの定型文みたいなものらしい。『Be My Valentine.』意味は…『私の恋人になって』…だな」
「…へ?」
「好きだ。付き合って欲しい」
「えっ?…ええっ⁉︎」
250回です。いつもお読みいただきありがとうございます。もう少し2人の暇つぶしの会話にお付き合いください。
番外編を2つ投稿しています。よければ併せてどうぞ。