1月6日 まくらの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。まくらといえば枕草子。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。まくらといえば枕投げ。
ここはとある郊外のマンションの一室。
「…」(パチッ パチッ)
「zzz…」
「…ん?これは…!…なるほど…」(パチッ)
「う、うーん…」
「お、起きたかな?」
「空飛ぶ…冷蔵庫軍団…だと…」(むにゃむにゃ)
「ほんとになんの夢見てんだ…?」
「はっ!…おはようございます…」
「おはよう。よく寝てたね」
「このコタツ、魔性すぎる…棋譜並べはどこまで行きました?」
「なんで家庭での囲碁の勝負で棋譜をつけてるのか未だによくわからないんだが…だいぶ終盤だぞ。もしかして君が言ってた神の一手ってこの手のことか?」
「えーと、あっ!そうっす!それっすよ!」
「やっぱりか。さっき君から教えてもらった知識ぐらいしかないけど、それでもこの手がすごいのはわかるわ」
「でしょ!わかっていただけましたか!我ながらすごいと思うんすよね〜 これはこの凄さを伝えるために記念碑とか建てるべきっすかね?」
「さすがにそれはやりすぎだと思うけど…ふわぁ〜、あーさすがにちょっと眠くなってきたな…」
「ぼくの囲碁講座聞いて、そのまま棋譜並べやってますもんね。少し横になったらどうっすか?この抱き枕貸しますよ」
「いや、大丈夫。つーか君はうちに私物を持ち込みすぎだろ。その抱き枕もいつの間に持ってきたんだ?」
「いいでしょ、これ!店長のおすすめコーナーにあったニョロニョロの抱き枕っすよ!一目惚れして、買ったその日にここに持ってきて隠してました」
「自分の家で使えよ…まあ枕は大事だけどさ」
「高橋さんも今日新しい枕買ってませんでした?」
「ああ。だいぶへたってたから買い直したんだ。ちょうど今日はまくらの日だし」
「まくらの日っすか?」
「うん。寝具のネット販売をしているまくら株式会社ってとこが枕の大切さを見直す目的で制定した日だ。日付は『1』を『ピン』と読んで、『1 6 →ピン ロー→ ピロー(pillow)』の語呂合わせからだそうだ」
「なるほどー たしかに枕は大事っすよね。ちょっと前に低反発枕に変えてから寝付きが爆速になりましたもん」
「低反発もいいよな。でも今回は高反発を買ってみた」
「高反発っすか…なんか硬くて眠りにくそうなイメージっす…」
「低反発の方がフィット感はいいっていうね。でも高反発だとしっかり頭を支えてくれるから肩こりとかの改善にはいいらしい」
「へぇー」
「あとは通気性かな。低反発は柔らかい分、湿気が溜まりやすいそうだ。定期的にケアすれば問題ないけど、長持ちしやすいのは高反発かも」
「なるほど。でも高橋さん、詳しいっすね!これも記念日絡みで調べたんすか?」
「それもあるけど、前に寝具売り場でバイトしてたんだよ。そのときに覚えたんだ」
「へー、高橋さんっていろんなバイトをやってたんすね。枕営業もしてたとは」
「そのワードチョイスはやめてくれ…たしかに枕を売ってたって意味では正しいけどさ…」
「でもやっぱり高反発って寝にくそうに思っちゃうっすね…」
「試してみるか?今日買ったばっかりだから新品だぞ」
「いいんすか⁉︎ぜひ使ってみたいっす!」
「了解、ちょっと待っててくれ。…はい、どうぞ」
「ありがとうございます!では早速…うーん…やっぱり硬くて違和感がありますね…」
「最初はそうかもな。慣れるとすぐ眠れるらしいけど」
「ほんとっすかー?これじゃいつまで経っても眠れない気がするんすけど…」
「まあ合う合わないがあるしね。自分に合うものを使えば…」
「zzz…」
「…寝付き良すぎだろ…」
連日遅くなり申し訳ありません。