1月3日 瞳の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。瞳といえば「瞳を閉じて」
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。瞳といえば「瞳の中の暗殺者」
ここはとある郊外のコンビニ。
「はぁー…お正月休みも終わっちゃいましたねぇ…」
「そうだな。ん?でももう少し冬休みがあるんじゃないの?」
「それはそうなんすけど…やっぱりお正月ってなんか特別じゃないっすか?」
「あー、なんとなくわかる気がする」
「でしょ!おせち食べたり、お雑煮食べたり、カレー食べたりできるじゃないっすか!」
「食べ物ばっかりだな…つーかカレーはお正月とは関係ないだろ」
「ほら、『おせちもいいけどカレーもね!』っていうじゃないっすか。お正月にはカレーが欠かせないっすよ」
「そのCM、君の世代じゃない気がするんだが…田中くん、やっぱり年誤魔化してないか?」
「失礼な!ククレカレーのCMは必修科目に決まってますよ!」
「君の必修科目だと大半の人が留年すると思うぞ…」
「まあでもいつまでも正月気分じゃいられないっすからね」
「そうだね。店長のおすすめコーナーも年末年始仕様から普段通りに戻ってるし」
「でも冬のマイナスドライバーフェアってなんなんすかね…冬と全く関係ないでしょ…」
「そもそもマイナスドライバーにそんなに需要があるか?ってとこも疑問だしな。今年も謎の多いコーナーになりそうだ」
「…うん、とりあえず気にしないことにしましょう。よし!気を取り直してバリバリ働きますよ!」
「まあお客はいないけどな」
「…暇っすね…」
「暇だな」
「…高橋さんは今日はなにして過ごしてたんすか?」
「今日か?今日はコンタクトを買いに行ったな」
「1人でっすか?」
「うん」
「またぼっちへの道を歩み出してるじゃないっすか…ぼくを誘ってくれたらよかったのに!」
「いや私用の買い物ぐらい1人で行くだろ…コンタクト買ったらすぐに帰ったし」
「そこにぼくがいればですね、一緒にご飯食べたり、ゲーセンに行ったり、映画を観たりできたわけっすよ!高橋さんの奢りで!」
「しれっと奢らせようとするんじゃねぇ。というより夜勤明けだったし、手早く帰る予定だったんだよ。遊びに行くのは夜勤明けじゃないときに誘うから、そのときは頼むよ」
「え、あ、はい…しょ、しょうがないっすね!付き合ってあげましょう!」
「ああ、よろしく」
「え、えーと…そ、そういえばなんでわざわざ今日コンタクトを買いに行ったんすか?正月三が日の最終日に?」
「実は今日は瞳の日っていう記念日なんだよ。瞳をいつまでも美しく、って趣旨の日でな。眼鏡・コンタクトレンズ業界が作った日らしい」
「なるほど、それでコンタクトを買いに行ったってわけっすか。1月3日…日付は語呂合わせっすか?」
「そうそう。『13』っていう語呂合わせ」
「ふーん。でも『ひとみ』なら1月13日の方がよくないっすか?『1 10 3』で」
「…なるほど。それは考えたことなかった…たしかにそっちもしっくりくるな」
「そうでしょ!高橋さん、こういうのは常に冷静な目で見ないとダメっすよ!曇りなきまなこで見定めないと!」
「もののけ姫かよ…」
「あ、でもヒトリ神様の高橋さんにはちょっと難しいかもしれないっすね」
「タタリ神みたいにいうんじゃねぇ」