1月2日 初夢の日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。富士が好き。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。鷹が好き。
ここはとある郊外のコンビニの前。
ウィーン ピンポーン
「はぁ…疲れた…」
「お疲れ様っす」
「ああ、ありがとう…ん⁉︎な、なんで田中くんがここにいるんだ?」
「朝の日課のランニングをしてて、その帰りっす。そろそろ高橋さんが出てくる時間だろうと思って待機してました!」
「びっくりした…しかし新年でもちゃんと走るなんて偉いなぁ。俺なら休みにしてしまいそうだ」
「まあ好きでやってることっすからね。それに正月三が日はむしろ走りたくなりますね!ほら、ニューイヤー駅伝とか箱根駅伝とかやってるじゃないっすか?観てると自分も体動かしたくなるんすよ!」
「なるほどな。ちなみに今日はどのくらい走ってきたの?」
「今日は距離より峠を攻めることを目標にしたんで短めっすよ。20kmぐらいっす」
「全然短めじゃないんだが…」
「高橋さんはだいぶお疲れみたいっすね」
「まあ夕勤、夜勤ぶっ続けだったからな…地味にお客さんも多いし」
「そういえば言ってましたね…帰ってゆっくり休んだ方がいいっすよ」
「ああ…でも、午前中は初詣に行こうかな。今日は夜勤だけだからその後でもゆっくり休めるし」
「いや普通夜勤だけですし、連勤なんてないっすからね…初詣は誰かと約束してるんすか?」
「いや、1人で行く予定」
「ふーん、そうっすか」
「それなら」
「あのさ」
「あ、す、すみません、被っちゃいましたね。どうぞどうぞ」
「あ、ああ、すまん。えっと…田中くん、今日の午前中は暇?もしよかったら一緒に初詣行かないか?」
「えっ⁉︎そ、そんな…昨年のインキャオブザイヤーの高橋さんからそんな提案が出るなんて…いったいどういうことなんすか?」
「誰だ、そんな賞を選定してるのは…実はこの前武さんたちからかなり説教されたんだよ。独りで行動するのが悪いわけじゃないが、ぼっちなことに開き直りすぎだって…今年はぼっち脱却を目標にしようと思ってな」
「あ、あの高橋さんがそんな目標を立てる日が来るなんて…ぼくは嬉しいっす!ぜひ初詣に行きましょう!」
「君はどういう立ち位置の人なんだ…まあ、君を誘った理由はそれだけじゃないが(ボソッ)」
「えっ?今何か言いましたか?」
「い、いや、なんでもない。それじゃちょっと荷物を置いて身支度してくるから、1時間後にここに集合でいいかな?」
「了解っす!ところでその袋はなんすか?何か買ったんですか?」
「これか。朝ごはんと飲み物と、あと店長のおすすめコーナーにあった宝船の絵を買ったんだよ」
「宝船の絵?」
「ああ。今日は初夢の日だからな」
「初夢ってあの一富士二鷹サムギョプサルのやつっすよね?宝船と何か関係があるんすか?」
「なんで急に韓国料理が出てくるんだよ…初夢でいい夢を見るために七福神の乗った宝船の絵に『なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな』って回文の歌が書かれたものを枕の下に置くといいって風習があるんだよ」
「へぇー。でも初夢って一年で最初の夢っすよね?1日に見る夢のことじゃないんすか?」
「実はいろいろ説があってな。大晦日から元旦にかけて見る夢、1日夜から2日にかけて見る夢、2日夜から3日にかけて見る夢のいずれも初夢って言われてる」
「なるほどー 昨日の夢はあんまり良くなかったんで、ぼくは今日の夜の夢を初夢にします!せっかくならいい夢を見たいっすねぇ」
「じゃあこの宝船の絵、1枚持っていく?3枚セットだったんだ」
「あ、いいんすか!ありがとうございます!」
「ちなみに昨日の夢はどんなのだったんだ?」
「えーと、富士山の頂上で巨大な鷹の化け物と60分1本勝負のデスマッチをする夢でしたね」
「…登場するものは縁起がいいが、内容を考えるといい夢とは言いにくいな…」
「ボコボコにして勝ったんで、祝勝会にサムギョプサルを食べに行ったとこで目が覚めました」
「だからなんでサムギョプサルなんだよ…」
遅くなり申し訳ありません。