12月31日 大晦日 ベルボトム・ジーンズの日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。ベルボトム・ジーンズは貰い物を1本持ってる。着こなし方はわからない。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。大晦日といえば紅白歌合戦。
ここはとある郊外のコンビニ。
「日付変わって31日っすね」
「大晦日か。あっという間に一年が終わるな」
「高橋さんは年越しはここでバイトでしたっけ?」
「ああ。田中くんは?」
「家でのんびりゆく年くる年を観るつもりっす」
「そうなんだ。てっきり2年参りとかカウントダウンイベントに参加したりとかアクティブに過ごすのかと思ったよ」
「元旦に初日の出を観に行こうと思ってまして。そのためにちょっと体力温存っす。そうじゃなかったら除夜の鐘を鳴らしに行きたいんすけどね」
「なるほどな。そういえば店長のおすすめコーナーに店長お手製の除夜の鐘のミニチュアがあったな」
「えっ、これ店長が作ったんすか⁉︎すっごい精細な作りですけど…あ、音も鳴るようになってるんすね」(カーン)
「会心の出来って言ってたぞ。ただ、『力込め過ぎたな…煩悩が消滅するかもしれん…』って言ってたのがちょっと怖いけど」
「それもっと早く言ってくださいよ⁉︎もう鳴らしちゃったじゃないっすか…」
「まあ一回だし大丈夫だろ、多分」
「不安でしょうがないっす…よし!こんなときは高橋さんの記念日うんちくを聞いて気を紛れさせるしかないっすね!あ、でも12月31日に記念日ってあるんすか?」
「ああ、今日はベルボトム・ジーンズの日だ」
「ベルボトムって…あの裾が広がったパンツのことっすか?」
「そうそう。前はパンタロンとかいわれてたやつだな。熱狂的なベルボトムジーンズ愛好家として知られるラジオDJの野村雅夫さんが提唱した日で、1年の最後の日だからボトム、そして除夜の鐘、つまりベルが鳴る日だから、ベルボトム・ジーンズの日にふさわしいって理由らしい」
「なるほど、それは覚えやすいっすね!しかし、ほんとにいろんな記念日があるんすねぇ」
「そうだな。言ってしまえば毎日が何か特別な日ってことだから、1日1日を大切に過ごさないとって思うわ。そんなとこもあるから記念日って好きなんだよ」
「…それすごい素敵な考えっすね。すみません、ただただ記念日に取り憑かれた人って思ってました。高橋さん、見直しましたよ!」
「…まあいいけどさ。そんなわけで来年も頑張っていこうかね」
「その前に一つ忘れてないっすか?」
「えっ?何が?」
「今年の下半期の目標を決めましたよね?」※6月30日参照
「あっ…あー、なんかあったようななかったような…」
「その反応は確実に覚えてますね?さあ、目標は何で結果はどうだったか教えて頂きましょうか!さあ!さあ!」
「くっ…えっと…目標は彼女を作るで…結果は…だめでした…」
「まったく!高橋さんはしょうがないっすねぇ!これはもう約束通り、ご飯を奢っていただくしかないっすね!」
「まあそれはいいんだけどさ…はあ、また今年も彼女いない歴を伸ばしてしまったのか…」
「でもなんで彼女できないんすかね?」
「傷口を抉るのは勘弁してくれ…」
「いえ、ほんと純粋な疑問っす。高橋さんってちょっと変人ですけどそんなにまったくモテない感じはしないんすよね、ちょっと変人ですけど」
「その変人なとこがだめなのかもな…」
「ち、ちなみに…す、好きな人とかいないんすか?」
「うーん…大前提なんだけどさ、人を好きになるってどういうことをいうんだ?」
「えっ、なにを急に厨二病みたいなことを言い出してるんすか…?」
「いや、大真面目にさ。ほんとにそれすらわかってないのかもしれん…」
「重症じゃないっすか…でもそういえば3次元の初恋もまだでしたね…よし!ここは『愛の伝道師』であるぼくがやさしく教えてあげましょう!」※10月20日参照
「その二つ名、好きだねぇ…他の人から呼ばれてるの聞いたことないけど…」
「高橋さんにもわかりやすい説明となると…そうだ!たとえばですね、美味しいものを食べたり、綺麗な景色を見たりすることを想像してみてください」
「うん」
「そのときに一緒に食べたり、見たりしたいと思う人、それこそが自分の愛してる人っす!」
「…!…そうなのか…」
「そうっす!まあ家族愛とかの場合も含まれるとは思いますけど。『ラブマスター』の異名を持つぼくが言うんだから間違いないっす!」
「そういうことなのか…いや、しかし…まさか…」(ブツブツ)
「…?高橋さん?どうかしました?」
「えっ⁉︎い、いや、なんでもない…ありがとう、参考になりました」
「…なんか挙動不審じゃないっすか?」
「そ、そんなことないだろ。俺はいつも挙動不審だよ」
「それはそれで問題でしょ…」
みなさまよいお年をお迎えください。