12月30日 地下鉄記念日
高橋 バイトの先輩。記念日に詳しい。好きな地下鉄は銀座線。
田中 バイトの後輩。「〜っす」が口癖。好きな地下鉄は半蔵門線。
ここはとある郊外のコンビニ。
「そういえば気になってたんすけど」
「うん」
「なんでこの時期のことを『年の瀬』っていうんすか?」
「ああ、この前の店内放送でも言ってた奴か。『瀬』っていうのは川の流れが早くなってるとこのことなんだけど、この時期の追い立てられるような慌しさを表すのに年の瀬って言葉を使うそうだ」※12月27日参照
「へぇー」
「ちなみに使われ始めたのは江戸時代のツケ払いの文化かららしい。ツケの支払いが大体盆か暮れだったそうで、この時期はツケを清算するのにみんなバタバタしてたそうだ」
「なるほどー …ふふふ、わかりましたよ!高橋さんがこんなに詳しいってことは、年の瀬の日とかいう記念日があるんでしょ!」
「いや、それは聞いたことないな」
「えっ、じゃあ年の瀬記念日とか…?」
「それもないはず。第一、年の瀬の何を記念するんだよ」
「そんな…高橋さんが記念日に関係ないことに詳しいなんて…はっ、もしや偽物では…?」
「失礼だな、君は…」
「ぼくの眼は欺けないっすよ!あなたは高橋さんじゃなくて、『髙橋』っすね⁉︎」
「それ、文字にしないとわからないだろ…俺もこの前の店内放送聞いて気になったから調べたんだよ」
「そうだったんすか!それなら納得っす!でも珍しいっすね。記念日以外には興味を示さないことで有名な高橋さんが」
「それどこで有名なんだよ…」
「まあまあいいじゃないっすか!ほら、今日の記念日うんちく聞いてあげますから機嫌なおしてくださいよ!」
「…まあいいや。えーと、今日は地下鉄記念日だな」
「地下鉄記念日っすか。地下鉄ができた日とかっすか?」
「おっ、正解。1927年のこの日に日本で初めての地下鉄が開通したんだ。上野から浅草の間で現在の東京地下鉄銀座線にあたるとこだそうだ」
「へー、そんな前からあったんすねぇ」
「ああ。ちなみに開通初日は物珍しさもあって、10万人近い人が乗車したらしい」
「10万人っすか⁉︎はー、ミーハーっすねぇ」
「気持ちはわかるけどな。いまだに地下鉄乗るのドキドキするし」
「いや、現代人でそれはおかしいでしょ…」
「というより間違った路線に乗ってないかいつも心配になるな。あれちょっと複雑過ぎないか?」
「まあわからなくはないっすけどね。でも今は乗り換えアプリとかあるから迷わなくなりましたね」
「便利になったよな。高校生のときはあまりに迷うから店長のおすすめコーナーで、『これで安心!店長特製地下鉄ガイド』って商品を買ってしまったわ」
「店長特製って時点でお察しなんですが…まともな中身だったんすか?」
「ああ、どこどこに行きたいならこれに乗れ!みたいのが詳しく書いてあったよ」
「よかったじゃないっすか!店長特製でもまともなものもあるんすねぇ」
「まあな。ロンドンの地下鉄ガイドだったって点を除けば…」
「やっぱりまともじゃなかった!なんでたまにそういう罠みたいなもの売るんですかね…?」